第82回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題3) |
16. 頚椎後方手術時の頚椎アライメント:術直前レントゲン側面像でのO-C2角を用いての検討
古月 拓巳(ふるつき たくみ)、田所 伸朗、喜安 克仁、公文 雅士、加藤 友也、武政 龍一、池内 昌彦
【背景】頚椎後方手術において術中頚椎アライメントには注意を要するが、手術体位での頚椎側面レントゲン撮影で中下位頚椎の確認は困難であることが多い。一方O-C2角は容易に確認可能である。O-C2角が手術体位による神経合併症予防に有効かどうかを検討した。 【対象および方法】術直前に頚椎単純レントゲン側面像を撮影した89例(頸椎症性脊髄症54例、OPLL15例、その他20例)を対象とし、術前C2-(6)7角(C7確認困難例はC6で計測を行った。)、頚椎ROMと術前と術直前のO-C2角について計測した。 【結果】術前C2-(6)7角は平均17.1±13.9度で0度以下の後弯例は9例に認めた。頚椎ROMはO-C2:平均21.1±9.6度、C2-(6)7:平均33.7±11.2度であった。術直前O-C2角は平均28.3±10.1度で、術前中間位27.1±8.8度と同様であった。 術直後神経症状悪化例は2例認め、肩挙上障害例は術前に比べ12度伸展位で、四肢しびれ増悪例は6度前屈位で手術がなされていた。症状は一過性で改善を認めた。 【考察】2例(2.2%)に一過性の神経症状悪化を認めたが、永続する麻痺例はなく中間位のO-C2角を目標に手術体位をとる方法は簡便で有用と考えられる。 |
17.後頭頚椎固定術におけるOC2角
兵庫医科大学 整形外科
橘 俊哉(たちばな としや)、圓尾 圭史、井上 眞一、有住 文博、楠山 一樹、吉矢 晋一
後頭頚椎固定術において術前のOC2角を減少しないようにメイフィールド固定器を使用し体位を固定している。当科で後頭頚椎固定術を施行した9例でOC2角と呼吸・嚥下障害につき検討した。平均年齢71.1才、男性3例女性6例、疾患は歯突起骨折8例(うち関節リウマチ2例)、ダウン症による環軸椎不安定症1例であった。全例に後頭骨プレートを用いた後頭骨頚椎固定術を行なった。メイフィールド固定時に透視画像をプリントアウトしOC2角を計測、術前中間位のOC2角から10°以上減じないように固定し、そのままのアライメントで内固定した。検討項目は術前、術後のOC2角とCTでの喉頭蓋直上の咽頭腔の面積(S)、術後の呼吸・嚥下障害である。術前OC2角−術後OC2角=ΔOC2角は平均1.3+/-5°(-7〜8°)であった。術前S−術後S=ΔSは-10.2+/-248.0mm2であった。9例全例で呼吸障害、嚥下障害を認めなかった。1例で嚥下性肺炎を認めたが、抗生物質投与で軽快した。後頭頚椎固定術においてはOC2角を術前のアライメントに固定することが、術後の嚥下障害や呼吸障害の予防に有用であると思われた。 |
18. 上位頚椎疾患に対し後頭骨‐頚椎後方固定術を施行した症例の検討
熊本大学医学部附属病院整形外科学教室*1荒瀬病院*2、宮崎県立延岡病院整形外科*3
【目的】上位頚椎疾患に対し後頭骨‐頚椎後方固定を施行した症例の成績をretrospectiveに検討した。 【対象と方法】後頭骨‐頚椎固定術を行い、術前、術後のX線画像が得られた9症例に対し、手術時間、術中出血量、X線側面像におけるO-C2角、JOA Score、術後合併症について調査した。 【結果】男性4例、女性5例、手術時年齢は63歳、経過観察期間は平均24ヶ月であった。疾患は脊椎腫瘍3例、Klippel-Feil奇形2例、ダウン症に伴う環軸椎亜脱臼1例、os odontoideum1例、歯突起骨折後偽関節1例、歯突起後方偽腫瘍1例であった。手術時間は平均253分、術中出血量は平均294ml、O-C2角は術前12.7±15.5度が術後19±10.4度に矯正され、JOA Scoreは術前12.7±5.2点が術後13.6±4.4点に改善していた。軽度の嚥下困難1例、後頭骨スクリューの脱転1例、椎弓根スクリューの折損1例、5度以上の矯正損失を2例に認めたが再手術症例は無かった。多発性骨髄腫の1例は原疾患の悪化により術後8ヶ月で死亡した。 【考察】術後に嚥下困難を認めた症例は骨破壊が強く、術後O-C2角は0度で矯正困難例であった。スクリュー脱転や折損例もあるので骨癒合が得られるまで注意深く観察する必要がある。 |
19. Non-RA患者における環軸関節亜脱臼の 頸椎X線学的検討
愛媛大学医学部附属病院脊椎センター*1愛媛大学大学院医学系研究科整形外科学*2
堀内 秀樹(ほりうち ひでき)*1、尾形 直則*1、森野 忠夫*1、山岡 慎大朗*1、三浦 裕正*2
【目的】関節リウマチ(RA)以外の環軸関節亜脱臼の発症原因と病態生理を検討するため、当院で手術を施行した環軸椎関節亜脱臼症例のうちNon-RA患者とRA患者の術前頸椎X線の比較検討を行った。 【方法】対象は2004年から2013年の間に手術施行した25例(RA群12例、Non RA群13例)とした。X線評価項目は環軸椎の形態としてADI値、SAC値、Ranawat値を、中下位頸椎アライメントとしてはC2-7前弯角(C2椎体下縁とC7椎体下縁の角度)を用いて評価した。 【結果と考察】ADI値、SAC値、Ranawat値はRA群とNon-RA群では有意な差は認められなかった。頚椎全体のアライメント(C2-7前弯角)はRA群では11/12例で前弯を呈しており、おおむね中下位頚椎アライメントは正常であった。一方、Non RA群では4/13例で後弯を呈し、その他中下位頸椎高度変形2例、中下位頸椎骨癒合1例、os odontoideum1例であった。Non-RA群で頸椎前弯を呈したのはodontoideum1例を含む6/13例であった。Non-RA患者では頚椎アライメント異常や中下位頚椎の可動域制限を呈する症例が多く、RA患者とは環軸関節亜脱臼の発生機序が異なる可能性が考えられた。 |
20.後頭骨スクリュー刺入における術中CT-navigation systemの有用性の検討
長崎大学病院整形外科*1長崎労災病院整形外科*2
横田 和明(よこた かずあき)*1 、津田 圭一*1、田上 敦士*1安達 信二*1、野口 智恵子*1、尾崎 誠*1、馬場 秀夫*2、日浦 健*2
【背景】後頭骨頚椎間固定術(以下OC固定)の際後頭骨スクリューが繁用されるが、当院では術中CTナビゲーション(以下navi)を用いている。本研究の目的はその有用性について検討することである。 【対象と方法】OC固定を行った36例、後頭骨スクリュー74本を対象とした。2009年以降のnaviを用いた21例44本(以下N群)、それ以前の用いていなかった15例30本(以下非N群)を術後CTで比較検討した。検討項目は内後頭稜-スクリュー間距離、スクリュー長、スクリューが内板から突出した長さとした。 【結果】内後頭稜-スクリュー間距離はN群:1.1±0.7、非N群2.2±1.4、スクリュー長はN群:10.3±2.5、非N群:8.6±1.5、スクリューが内板から突出した長さはN群:0.4±0.8、非N群:0.8±1.0であり(単位はmm)、有意差を認めた。 【考察】我々は過去に内後頭稜と外後頭隆起の位置関係について検討し、それぞれが正中からずれていることを報告した。指標である外後頭骨隆起からのみでは正確な位置に適切な長さのスクリューを刺入するのは困難で、naviを用いることで正確に刺入できることがわかった。 |
21.Klippel-Feil症候群に対する手術加療の小経験
高知医療センター
田村 竜(たむら りゅう)、時岡 孝光、阿部 光伸、林 隆宏、井上 智雄
【はじめに】Klippel-Feil症候群による上位頸椎奇形4例に対し手術加療を行った。 【方法】2005年3月〜2013年6月までを対象期間とした。全例女性で平均年齢56歳であった。奇形形態・症状高位・JOAスコア・手術方法・合併症などに関して検討を行った。 【結果】Type1:3例、Type2:1例で、3例に歯突起骨を認めた。その他2分椎体・椎弓欠損・椎弓根低形成など多彩な奇形を認めた。症状高位は3例がC1/2で環軸関節亜脱臼を認め、1例がC4/5の不安定性であった。手術は2例に一期的に、2例にハローベスト固定の後に二期的に、CTナビゲーションを用いて椎弓根screwでの後方固定を行った。術前JOAスコアは平均12.5点、術後平均13.4点と改善を認めた。術後合併症として、1例に術後気道閉塞、2例に嚥下障害を認めた。 【考察】頸椎奇形に伴う頚髄症の治療に関する症例報告は散見されるがまとまった報告は少ない。本症例においては、奇形に伴う不安定性から障害を起こし、固定により症状改善を得られた。奇形のためにCTナビゲーション下手術が有用であると考えられた。 |