第82回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題4) |
22.小児環軸椎回旋位固定の保存的治療のアルゴリズム
戸次 将史(とつぎ まさし)、山田 圭、佐藤 公昭、吉松 弘喜、井上 英豪、井手 洋平、永田 見生、志波 直人
【はじめに】小児環軸椎回旋位固定(AARF)は原因が多様で、初期治療は確立されていない。今回保存的治療のアルゴリズムについて検討した。 【対象と方法】対象は4医療施設で加療したAARF143例(男75例、女68例)であった。年齢は平均6.3歳で発症から初診までの期間は平均1.4日であった。これらの発症原因、保存的治療とその成績を診療録で後ろ向きに調査した。 【結果】発症原因は明らかな外傷のないNo traumaが87例、交通事故やスポーツによるMajor traumaが25例、日常生活動作によるMinor traumaが18例、耳鼻科領域の炎症によるものが13例であった。94例が初診時頚椎カラーで加療されたが24例で改善せずGlisson牽引を施行し改善した。36例が初診時Glissonn牽引で加療され、35例で改善した。1例は改善せず全身麻酔下で徒手整復しハロベスト固定され改善した。 【考察】AARFが原因によらず頚椎カラーで治療が可能であるが、頚椎カラー1週で改善ない場合Glisson牽引を開始すべきである。 |
23.環軸椎回旋位固定難渋例に対する徒手整復法
長崎労災病院整形外科*1長崎大学病院整形外科*2
馬場 秀夫(ばば ひでお)*1、小西 宏昭*1、田上 敦士*2、津田 圭一*2
【はじめに】環軸椎回旋位固定(以下 AARF)は治療により改善しない例や診断の遅れた例は治療に難渋する。難渋例に対し我々は全身麻酔下の徒手整復術を行ってきたので報告する。 【対象と方法】症例は5例で男児1例、女児4例であった。年齢は4〜10歳(平均7.2歳)で、発症から徒手整復術までの期間は1〜3か月であった。Fielding 分類typeT:4例、typeU:1例で、全例 cock-robin position であった。経過観察期間は11か月から8年であった。 【結果】全例全身麻酔下に徒手整復術を行った。整復方法は頭側へ牽引しながら術前の可動域制限がある方向(右回旋、左屈、後屈制限であれば右回旋、左屈、後屈方向)で行った。整復の確認は術中の透視画像では困難な例もあり術中CTで行った。再発例の2例では術中整復後に装着したハローリングで直達牽引を行いその後ハローベスト固定を行った。全例術前認めた可動域制限と運動時痛は改善した。CT上環軸椎間の回旋は改善し、軸椎椎間関節変形のリモデリングも良好であった。 |
24. 治療に難渋した小児環軸関節回旋位固定 (AARF)の検討
宮崎大学医学部附属病院
【目的】当院において入院加療を要し、治療に難渋したAARFの5症例について検討する。 【方法】1995年から2014年までに入院加療したAARFについて発症から当院初診までの期間、牽引期間、環椎歯突起間距離(ADI)、C1 lateral inclination、C2 facet deformityの有無について検討した。 【結果】年齢は5-10歳(平均8歳、男児1例・女児4例)であった。当院初診までの期間は31日-150日で、Fielding分類typeT2例、typeU2例、typeV1例であった。4例は介達牽引にて平均22.8日で整復位を得ることができた。TypeVの症例では直達牽引で整復位を得るも、ハローベスト除去後1ヶ月で再発し、Magerl+Mcgraw法にて手術を行った。 【考察】亜急性例では、整復位を得るまで長期間を要した。再発例は整復後1か月でハローベストを除去しており、facet deformityのリモデリングが改善するまでに除去することが再発リスクとなる可能性がある。 |
25.当科における斜頸治療についての検討
広島赤十字・原爆病院 整形外科
柳澤 義和(やなぎさわ よしかず)
【はじめに】斜頸には筋性斜頸、環軸関節回旋位固定、炎症斜頸などがある。今回、斜頸で当科を受診した患者の治療経過についてまとめたので報告する。 【対象と方法】2010年1月から2014年6月まで斜頸にて当科を受診した患者16例(男:女=10:6、平均年齢: 10.9才)を対象とした。対象疾患として環軸関節回旋位固定: 6例、炎症性斜頸: 6例、筋性斜頸: 3例、その他であった。平均経過観察期間は9.8週であった。 【結果】環軸関節回旋位固定では全例にカラー固定を行ったが再発は1例のみであった。炎症性斜頸では罹患期間が7日以上の症例には牽引を用いた後、カラー固定にて治癒したが、投薬のみでも2例で治癒可能であった。一方、筋性斜頸では2例に手術を施行し治癒した。 【考察】環軸関節回旋位固定では発症後数日であればカラー固定のみで良好な結果であったが、長期罹患期間では牽引の必要と考えられた。炎症斜頸では7日以上の罹患期間であれば抗菌剤と牽引が必要と考えられた。筋性斜頸では3ヶ月後に改善を認めなければ手術適応と考えられた。 |
26.Chiari奇形に対する硬膜外層切開を併用した後頭下減圧術の治療成績
広島大学大学院整形外科学
田中 信弘(たなか のぶひろ)、中西 一義、亀井 直輔、平松 武、宇治郷 聡、住吉 範彦、力田 高徳、越智 光夫
【目的】我々は神経症状を有するChiari奇形に対し手術用顕微鏡下に硬膜形成術を併用した後頭下減圧術を行っている。硬膜形成の際には硬膜内層を温存することにより人工硬膜の併用は原則として行っていない。今回我々はChiari奇形に対する硬膜外層切開を併用した後頭下減圧術の治療成績について報告する。 【方法】Chiari奇形に対して手術を施行した17例(男性8例、女性9例、手術時平均年齢21歳)を対象とした。14例に空洞症、7例に側弯症の合併を認めた。術後経過観察期間は平均2年であった。 【結果】手術時間は平均2時間15分、出血量は平均76mlであった。全例で十分な除圧が得られたが、1例で人工硬膜移植を必要とした。髄液漏、神経症状増悪など重篤な合併症を認めた症例はなく、脊髄空洞は全例で縮小した。 【結論】Chiari奇形に対する手術では大孔部における髄液の流れを正常化する必要がある。慎重な切開操作を行えば硬膜内層を温存しつつ十分な除圧が可能であった。髄液漏などの合併症もなく簡便な術式で十分な効果が得られ有用な術式と思われた。 |