第82回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題5)

27.上位頚椎領域に発生した原発性悪性脊椎脊髄腫瘍の治療成績


九州大学医学研究院整形外科科

 

松本 嘉寛(まつもと よしひろ)、播广谷 勝三、林田 光正、岡田 誠司、岩本 幸英

 

背景:上位頚椎に原発する悪性脊椎脊髄腫瘍は、発生頻度が稀であり、解剖学的特徴のため根治的切除が困難である症例が多く、診断?治療には難渋する。今回、上位頚椎領域に発生した原発性悪性脊椎脊髄腫瘍5症例の治療成績について検討した。

症例: 平均年齢54.8才、男性4例女性1例、組織型は脊椎腫瘍が脊索腫2例、脱分化型軟骨肉腫、脊髄腫瘍は悪性末梢神経鞘腫瘍2例であった。初発症状は頸部痛が3例、上肢しびれ感が2例であり、1例に嚥下困難、2例に上肢麻痺を認めた。4例は生検にて術前に確定診断可能であった。全例に腫瘍内切除での手術、3例に放射線治療(重粒子線1例、IMRT1例)を施行した。最終観察時、腫瘍あり生存1例、腫瘍死3例、他因死1例であった。

考察:今回、外科的に広範切除縁が得られた症例はなく治療成績は不良であった。一方、脊椎近傍発生の悪性腫瘍、特に脊索腫や軟骨肉腫に対する重粒子線の有効性も報告されており、手術、化学療法と組み合わせた集学的治療による治療成績の向上が期待される。

*28.環軸椎破壊病変に対する後頭頸椎固定術2例の経験

 

南部徳洲会病院 整形外科  

 

金城 幸雄(きんじょう ゆきお)、金城 綾美、宮平 誉丸、松田 英敏、砂川 秀之、新垣 宜貞

 

【はじめに】環軸椎病変に対して後頭頸椎インスツルメントは有用であるが、下位頚椎アンカーには固定性のみでなく安全性も求められる。今回、私たちは片側にはPSをメインに用い、対側にはLMS、facet screwを使用して、良好な固定性が得られたので報告する。

【症例1】57歳女性、多発性骨転移(原発胃癌)。主訴は軸椎破壊による頚部痛で、坐位も困難であった。麻痺はなかった。ADL改善と麻痺防止目的でOcc~C5固定術を施行した。下位頚椎アンカーに右C4.5はPS。左C3/4.4/5 facet screwを用いた。術後、頚部痛軽減し、頚椎装具なしで室内での杖歩行が可能になった。

【症例2】90歳男性、環軸椎嚢腫。主訴は頚部痛で、坐位が困難であった。麻痺はなかった。頚部痛改善と麻痺防止目的でOcc~C5固定術を施行した。下位頚椎アンカーに右C4.5はPS。両側C3と左C4.5 はLMSを用いた。術後、頚部痛軽減し、歩行が可能で、骨癒合も得られた。

【考察】VERTEX Screw Connector Reconstruction Systemは、操作性が良く、固定制性も良好で有用なシステムであった。

*29.硬膜管内に陥入した環軸関節不安定性に伴う椎間関節嚢腫の1例

 

さぬき市民病院整形外科*1香川大学整形外科*2


有馬 信男(ありま のぶお)*1、小松原 悟史*2、藤原 龍史*2、野村 優美*1、横山 明人*1、山本 哲司*2

 

【症例】76歳、男。右側の後頭頚部痛があり坐位保持が困難となっていた。関節リウマチはなく、単純X線像では環軸椎亜脱臼(ADI5mm)を認めた。MRIでは歯突起後方の脊柱管内右側に嚢包を認め、脊髄造影後CT像では環軸関節右側近傍の硬膜外に位置し硬膜管に陥入する腫瘤陰影であった。環軸関節の変性は軽度で、破壊像もなかったため鎮痛剤投与と頚椎カラー固定を行ったが、症状の改善がないため環軸関節造影・ブロックを行った。環軸関節造影では環軸関節右側の嚢包内に造影剤が流入し滑膜嚢腫が疑われ、造影後CTの動態撮像では屈曲伸展で嚢包の大きさに変化がなかった。ブロック後に一時症状の軽快を認めたが、その後も持続するためC1-C2後方固定術を行い、C1/2間後方より硬膜を一部切開し、腹側に膨隆した嚢包部分より液体の穿刺吸引を行った。

【考察】環軸関節近傍の嚢腫は環軸椎不安定性との関連が示唆され固定術による消失が報告されている。しかし、今回の症例のように嚢腫が硬膜管内に陥入する場合も有り、固定のみでは消失しない可能性も考えられた。

30.C1/2高位脊髄腫瘍の9例

 

琉球大学整形外科

 

勢理客 久(せりきゃく ひさし)、六角 高祥、大城 義竹、島袋 孝尚、大城 裕理、金谷 文則

 

【はじめに】 今回、手術を行ったC1/2高位脊髄腫瘍に関して検討を行ったので報告する。

【対象および方法】 対象は2000年1月〜2013年12月の間に手術が施行されたC1/2高位の脊髄腫瘍9例とした。男性2例、女性7例で、年齢は34〜78歳、平均58.3歳、経過観察期間は6〜150カ月、平均67.7カ月であった。形態分類、病理組織、手術(手術時間、出血量、進入方法、摘出方法、人工硬膜使用の有無)、術後経過について検討を行った。

【結果】 ダンベル腫瘍7例、硬膜内髄外腫瘍1例、硬膜外腫瘍1例で、病理組織は全例神経鞘腫であった。手術時間は90〜390分、平均257分、出血量は20〜693ml、平均236mlであった。進入法は後方のみ8例、後方および後外側1例で、摘出方法は被膜ごと全摘出3例、被膜下に実質摘出3例、一部残存3例であった。人工硬膜は2例に用いた。術後経過は被膜ごと全摘出を行った3例および被膜下に実質部摘出を行った3例の全てで再発は認めなかったが、脊柱管外に腫瘍が残存した3例は、腫瘍増大なし1例、増大を認めるが症状なし1例、増大に伴う有症状により術後99カ月後に再手術を行った1例であった。

*31.頭蓋頚椎移行部髄膜腫に対する手術治療

 

山口大学 大学院 整形外科

 

今城 靖明(いまじょう やすあき)、寒竹 司、鈴木 秀典、吉田 佑一郎、西田 周泰、藤本 和弘、田口 敏彦

 

【目的】髄膜腫は、全硬膜内髄外腫瘍の25-45%と頻度の高い腫瘍である。しかし、大後頭から軸椎までに発生する脊柱管内腫瘍は、全脳、全脊髄腫瘍の0.75-1.3%と非常に稀である。今回、同高位の髄膜腫に対し手術治療を行ったので報告する。

【症例】47歳、女性。主訴:歩行障害、両手巧緻運動障害、左上肢挙上困難。現病歴:1年2ヵ月前より左足底部しびれ出現、その後歩行障害出現した。既往歴:DM(HbA1c:11.7)。MRIでは、C1、C2高位の脊髄腹側にT1iso、T2iso-highで均一に造影される23×14×19mm大の硬膜内髄外腫瘍を認め髄膜腫と診断した。

【手術治療】後頭骨の一部、C1、2椎弓を切除した。硬膜は頭蓋頚椎移行部からC2まで正中切開した。腫瘍はCUSAを用いvolume reductionした後、硬膜と一塊として摘出(Simpson grade1)した。硬膜は人工硬膜で形成した。術後7日目でスパイナルドレナージ抜去し離床したが、術後10日目、髄液漏と感染のため再手術施行した。感染は沈静化し転院した。

【考察】Nakamuraらは病理所見で腫瘍細胞が内硬膜と外硬膜の間にも存在することやgrade2の切除で約30%に再発することを報告した。当科では2012年以降grade1の切除を行っている。しかし、腹側の硬膜処置は困難であり髄液漏予防が重要と思われる。