第83回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題2)

5.仙骨脆弱性骨折において、単純レントゲンの次に撮るべき画像は何か?


福岡東医療センター 整形外科

 

井上三四郎(いのうえさんしろう)、吉田裕俊、富永冬樹

 

【目的】仙骨脆弱性骨折で単純X線の次に行うべき画像診断について検討すること。

【対象と方法】当院で加療した6例、平均78.5(60〜90)歳、男性1人女性5人である。診断過程と各画像診断の診断率について検討した。単純レントゲンは整形外科主治医が読影し、それ以外は放射線科医の読影レポートに従った。

【結果】精査として、まず4例にMRI、1例にCT、1例に骨シンチが選択され、その時点で4例が診断された。最終的に、CTとMRIは全例に、骨シンチは5例に撮影された。最終診断率は、単純X線 0%(0/5)、CT 50%(3/6)、MRI 66.6%(4/6)、骨シンチ100%(5/5)であった。しかし、レトロスペクティブにみれば、MRIは全例で骨折を診断できた。

【考察】CTは早期病変を捉えきれず、MRIは読影にスキルを要する。骨シンチは鑑別に挙がる圧迫骨折や大腿骨近位部骨折を疑う際には通常選択されない。画像診断の第二選択として、早期にはMRIを、それ以外はCTを選択し、その上で症例を選んで、骨シンチを追加すれば効率的である。

6.腰椎MRIでの第2仙椎輝度変化は骨脆弱性仙骨翼不全骨折を示唆する

 

三豊総合病院 整形外科

 

玉置康晃(たまきやすあき)、長町顕弘、阿達啓介、井上和正、竹内 誠、大道泰之

 

骨脆弱性仙骨翼不全骨折患者の中には、明らかな外傷歴を持たず腰痛や臀部下肢痛を主訴として受診する者がある。骨脆弱性仙骨翼不全骨折を受傷し、腰椎MRIを撮影していた患者について、第2仙椎の輝度変化に注目して検討した。

【対象および方法】骨脆弱性仙骨翼不全骨折を受傷し、初診時に腰椎MRIを撮影していた患者4名を対象とした。男性2例、女性2例、平均年齢は79歳であった。初診時の主訴、診断名、外傷歴、診断までの期間、腰椎MRIでの第2仙椎輝度変化の有無について検討した 。

【結果】全症例で初診時両側あるいは片側の臀部痛を訴えていた。3例は片側の下肢痛を有していた。初診時の診断は全例腰部脊柱管狭窄症であった。全例明らかな外傷歴はなかった。診断までの平均期間は34日であった。腰椎MRIでの第2仙椎輝度変化をみると全例でT1 low、STIR highあるいはT2 highの輝度変化が認められた。全例に恥骨骨折も認められた。

【結語】腰椎MRIでの第2仙椎輝度変化は骨脆弱性仙骨翼不全骨折の早期診断に役立つ所見である。

7.診断に苦慮した脆弱性骨盤輪骨折の検討

 

広島赤十字・原爆病院 整形外科


柳澤義和(やなぎさわよしかず)、野村 裕、有馬準一

 

高齢者の脆弱性骨盤輪骨折では腰痛下肢痛を訴え、脊椎疾患との鑑別が困難である。診断に苦慮 した脆弱性骨盤輪骨折について検討した。  

対象は2012年から2015年3月まで経験した脆弱性骨盤輪骨折のうち初診や前医で見逃された6症例(全て女性、平均74.8歳)。診断には平均78.3日間要した。既往歴はパーキンソン病: 2例、脊椎椎体骨折: 3例、DM: 2例、RA: 2例などであった。骨折系(Fragility fractures of the pelvis: FFP分類)、骨代謝マーカー値、骨密度とYAM値(腰椎と股関節)、治療法について検討した。

骨折系はIIa: 1例、IIIa: 2例、IVc: 3例であった。骨代謝マーカーは骨吸収マーカーで高値(TRACP-5b: 524.5mU/dL)であった。骨密度は腰椎: 股関節=0.810 : 0.649 g/cm2で、YAM値は股関節で低い傾向(69.7%)だった。治療はIIa型にはPTH 投与を、IIIa型とIVc型1例には骨盤後方固定術+PTH 投与を、手術希望のなかったIVc型:2症例にはPTH投与のみ行い、それぞれ骨癒合を認めた。

安定型骨盤輪骨折は見逃されると不安定型へ進展することがわかった。腰痛下肢痛の高齢患者に対しては骨密度は正常でも、骨盤輪骨折を念頭に置く必要があると考えられた。

8.仙骨脆弱性骨折に対する手術療法の治療経験

 

国立病院機構 岩国医療センター 整形外科 

 

土居克三(どいかつみ)、馬崎哲朗、内藤健太、生田陽彦、安光正治

 

【はじめに】骨脆弱性骨折の一つに仙骨骨折が挙げられる。軽微な外傷で生じ徐々に悪化し歩行障害の原因となる。我々は保存療法に抵抗し手術療法を行った3例について報告する。

【対象】2014/1月〜2015/1月の間で手術加療を行った3例(男1例、女2例)。年齢は70~84歳で平均74.6歳。

【方法】全例MISt手技を用いて下位腰椎に経皮的椎弓根スクリュー(PPS)を挿入し、S2背側から仙腸関節を貫いて腸骨まで挿入するスクリュー(SAIscrew)を使用し、腰椎と腸骨を連結し、左右も連結した。その3例の手術時間、出血、離床までの期間、合併症について検討した。

【結果】手術時間は平均165分、出血量は平均35mlだった。3例とも術後翌日より離床を開始し歩行可能となった。合併症はなかった。

【考察】仙骨骨折の手術適応、方法について明確なコンセンサスはなく、保存療法の限界もはっきりしない。open法での腰椎骨盤固定術は侵襲が大きく合併症も多い。しかしMISt手技を用いることでその手術適応も拡大すると考える。