第83回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題4)

14.パーキンソン病患者の腰椎手術


久留米大学医学部 整形外科 

 

井上英豪(いのうえひでたけ)、山田 圭、佐藤公昭、横須賀公章、溝上健次、井手洋平、松原庸勝、永田見生、志波直人

 

【はじめに】当科のパーキンソン病(PD) 患者の腰椎手術について検討した。

【対象と方法】対象は当科で腰椎手術を施行したPD患者9例(男4例、女5例)で年齢は平均73.9歳(64〜81歳)であった。Yahr 分類は2度が2例、3度が4例、5度が1例、不明が1例であった。この9 例の手術時診断名、初回手術と追加手術を調査した。

【結果】6例に腰部脊柱管狭窄症の診断で椎弓切除術を施行し、変性側弯や腰椎椎体骨折を合併した2例で後方固定術(Th4−腸骨)、後弯が進行した1例は他院で後方・前方・後方三段階矯正固定術を追加施行された。3例が腰椎椎体骨折の診断で、1例は他科で経皮的椎体形成術(PVP)、2例は後方固定術(short fusion) を施行し、short fusionの2例は最終的に後方固定術(Th4−腸骨)を追加施行した。

【考察】PD患者では骨脆弱性、椎体骨折、自然経過による脊柱変形の進行を考慮し、症例に応じて、Th4から腸骨までのlong fusion を含めた治療方針を検討する必要があると思われた。

15.臼蓋再建に使用したハイドロキシアパタイトが仙骨孔を通り膀胱直腸障害をきたした1例

 

宮崎大学 整形外科2

 

比嘉 聖(ひがきよし)、濱中秀昭、猪俣尚規、永井琢哉、李徳哲、平川雄介、横江琢示、帖佐悦男

 

高度臼蓋骨欠損を伴う人工股関節臼蓋側再置換術に対しハイドロキシアパタイト(以下HA)などの人工骨を使用することは一般的な手技として行われている。人工骨による合併症の報告は少ない。臼蓋再建のため挿入された顆粒状HA が仙骨孔を通り脊柱管狭窄をきたした1例を経験したので報告する。

【症例】75歳男性、他院にて平成13年左変形性股関節症に対しセメントカップを用いた人工股関節置換術施行され、その後臼蓋側カップの無菌性の弛みを認めたため平成20年に顆粒状HAを用いた臼蓋再置換術が行われた。平成22年にも臼蓋カップの弛みが出現し感染なども疑われ抗生剤含有ブロック状HA使用しセメントカップ固定を施行している。平成25年8月より特に誘因なく膀胱直腸障害が出現しMRI にてS2、S3の脊柱管内、硬膜の前方にT2 lowの脊柱管占拠性病変を認めた。平成25 年8月仙椎椎弓切除を施行し圧迫病変を確認したところ灰白色のチーズ様の物質であった。病理学的には石灰化、結晶沈着を認めHAであった。股関節手術で使用した人工骨が前仙骨孔を通り脊柱管内に迷入したことで膀胱直腸障害が出現したと考えられた。

16.当科で経験したSpinal dysraphism の9例

 

広島大学 大学院 医歯薬保健学研究科整形外科学 


高澤篤之(たかざわあつし)、田中信弘、中西一義、亀井直輔、住吉範彦、力田高徳、古高慎司、越智光夫

 

【目的】当科で経験したSpinal dysraphism に合併した腰仙椎部脂肪腫により脊髄係留を来した9症例に対して、脊髄解離手術を行ったので報告する。

【対象・方法】対象は男性7例、女性2例、年齢は6歳から52歳、平均22歳であった。経過観察期間は1年から6年、平均4年であった。排尿障害を8例(88%)、腰下肢痛を8例(88%)、足変形を5例(63%)に認めた。手術は外肛門括約筋と前脛骨筋、腓腹筋からのモニタリング下に、手術用顕微鏡を用いて脊髄解離術を施行した。術前後の腰下肢痛、排尿障害、足部変形の改善の有無、再手術を要した症例について検討した。

【結果】腰下肢痛の改善を7例(88%)、排尿障害の改善を4例(50%)、足変形の改善は0例(0%)だった。1例で術後癒着による脊髄再係留を認め、再手術を要した。

【考察・結論】排尿障害と足変形は脊髄解離手術を施行したとしても改善が乏しく、特に神経因性膀胱に対しては早期治療が必要と思われた。脊髄解離手術時には、術中モニタリングが有用であった。

17.仙骨部くも膜嚢腫の臨床的特徴と手術治療の検討

 

広島大学大学院 整形外科学

 

住吉範彦(すみよしのりひこ)、田中信弘、中西一義、亀井直輔、力田高徳、高澤篤之、古高慎司、越智光夫

 

【目的】仙骨部に発生したくも膜嚢腫の臨床症状の特徴および手術成績を検討したので報告する。

【対象および方法】保存的治療に抵抗性の症状を有する仙骨部くも膜嚢腫に対し手術を行った7例を対象とした。男性1例、女性6例、手術時平均年齢は43.1歳、術後平均経過観察期間は12カ月であった。手術では、病変部椎弓切除を行い、嚢腫を切開開放し、嚢腫内の弁機構を切除した後、嚢腫を縫縮した。 臨床症状および手術成績について、術前の主な症状と術後の経過、合併症について検討した。

【 結果】術前の主な症状として、下肢痛を4例、腰痛を4例に認めた。7例中6例で術後症状の改善を認め、術後も保存的治療を要した症例が1例存在した。合併症として術後に膀胱直腸障害を生じた症例が1例存在したが、術後2カ月から改善傾向となり、6カ月でほぼ改善した。

【考察および結論】症状を有する本症は中年女性に多く、腰痛や下肢痛が主な症状であった。術後大部分の症例で症状改善を認め、保存的治療に抵抗性の本症に対し、手術的治療は有用と考えられた。