第83回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題5)

18.仙骨スクリュー固定におけるナビゲーションシステムの使用経験


徳島市民病院 整形外科

 

土岐俊一(ときしゅんいち)、千川隆志、鹿島正弘、吉岡伸治、中川偉文、中村 勝、中野俊次

 

【目的】当院では脊椎固定手術の安全性向上のため、2014年1月にCT-based navigation system であるStealthStation S7 (Medtronic) を導入した。今回S1 椎弓根スクリューにおけるナビゲーションシステムの使用経験を報告する。

【対象および方法】2014年1月から12月までに腰仙椎固定術を施行した4例(男2例、女2例、平均年齢67.8歳)を対象とした。S1椎弓根スクリューは仙骨岬角にむかうtricortical screw を目指すためナビゲーションシステムを使用した。検討項目は臨床成績としてJOA score と改善率、画像評価としてCT(MPR 像)を用いてS1椎弓根スクリュー先端位置、術中・術後の設置角度誤差、clear zone、骨癒合の有無とした。

【結果】平均固定椎間数は1.3椎間、術後平均経過観察期間は5.3カ月であった。JOA scoreは、術前10.8点が術後18.3点に改善し、平林法による改善率は43.5%であった。S1椎弓根スクリューはtricortical screw3本、bicortical screw3本、monocortical screw2本、設置誤差はaxial viewで2.6°、sagittal viewで3.9°であった。S1椎弓根スクリューが左右ともbicortical screw となっていた1例にloosening を認めた。

19.L5/S1 後方椎体間固定術後偽関節に対しS2screw を追加した症例

 

鹿児島赤十字病院*1、鹿児島大学病院 整形外科*2  

 

俵積田裕紀(たわらつみだひろき)*1、武冨栄二*1、河村一郎*2、山元拓哉*2、小宮節郎*2

 

66 歳、男性、第5腰椎分離辷り症の診断で近医で保存加療行うも改善せず腰痛両下肢痛増悪し、平成25年7月11日L5/S1後方侵入腰椎椎体間固定術施行。平成26年1月より左下肢痛増悪し当院紹介受診。S1 screw のloosening、椎体間cage のL5 椎体内への陥入認め、骨癒合が得られていないと判断し平成26年8月27日当院にて再手術を行った。手術はL5/S1 の椎体間固定、S1 screw を入れなおし、さらにS2 にscrew を追加して良好な固定が得られた。術後腰痛下肢痛は消失し経過良好である。

L5/S1 の後方侵入椎体間固定の際は偽関節となった場合そのサルベージ手術に難渋する。今回S2screw を追加することで短期ではあるが良好な成績を残せたので報告する。

20.S1を含めたshort fusion をCBT(cortical bonetrajectory) 法を用い施行した2例の経験

 

徳島県立中央病院 整形外科*1、高松赤十字病院 整形外科*2


小坂浩史(こさかひろふみ)*1、三代卓哉*2、眞鍋裕昭*2

 

【はじめに】L5/Sの不安定性を認める場合、同部位の固定必要とする場合がある。しかし今までのS1のpedicle screw 刺入は、外側の展開が必要でありどうしても軟部組織に対する侵襲が大きかった。近年、背椎手術も低侵襲化が進んでおり、我々もCBT(cortical bone trajectory) 法を用いて背椎固定術を行っている。今回このCBT法をS1にも応用した2症例を経験したので報告する。

【症例1】67歳男性。L3/4/5椎弓切除、L5/S外側MELの2度の手術歴あり。L5,S1根症状残存のためCBT法を用いてのL5/S PLFを施行した。術前JOA score 5点が術後3ヶ月は23点でJOA改善率75であった。腰痛VASも100から23に改善。画像上も問題ない。

【症例2】61歳男性。L5/S MEDの手術歴あり。下肢痛残存のためL5/SにたいしCBT法を用いてのPLIFを施行した。術前JOA score 8点、術後2ヶ月のJOA score は28点で改善率95.2であった。腰痛VASも100が0に改善。画像上も問題ない。

【まとめ】CBT法は外側展開が少ないため、軟部組織に対し低侵襲である。またscrew刺入の際、軟部組織の抵抗も受けなくRod装着も容易であった。術後創部痛も少なく、患者の満足度も高かった。短期成績であるが経過良好である。

21.骨盤から胸腰椎移行部までの再建術後にProximal Junctional Fracture を生じた症例

 

高松赤十字病院 整形外科

 

眞鍋裕昭(まなべひろあき)、三代卓哉

 

【はじめに】近年、社会の高齢化に伴い骨質の悪い脊柱変形に悩まされる症例が増えている。

【対象と方法】2012年から2014年の間に脊柱後側弯、側弯症に対して骨盤からT9~11まで再建術を施行した症例中、術後1カ月以内にUIVの圧潰を認めた症例の術後臨床・レントゲン経過などを検討した。

【結果】平均手術時年齢70.6歳、男性1例女性4例。平均手術時間360分、術中出血量860ml、術前JOAスコア15.3、女性4例の術前平均骨密度0.72mg/cm2であった。術後重篤な合併症はなかった。SVAは術前平均107mm から術後2週で30mm と改善したが、最終調査時には61mmと悪化していた。TK(T5-12) は術前14.2°から術後34°と後弯獲得も、最終調査時平均53°と更に増大傾向を認めた。1例は術後半年で固定上位端の偽関節を認め、固定延長術を要した。

【まとめ】高齢者や骨粗鬆症患者の脊柱再建術にはある程度広範な固定術が必要になる。更に上位胸椎までの固定も選択肢の一つになるが、患者の体力的を考えても手術侵襲を減らしたい。一方、PJFを生じても急性に強い痛みや神経症状を呈した例はなかった。

22.腰椎固定術後の仙腸関節性疼痛について

 

鹿児島共済会南風病院 整形外科

 

廣田仁志(ひろたひとし)、川内義久、富村奈津子

 

日常診療において仙腸関節性疼痛をしばしば経験する。今回われわれは腰椎固定術後に仙腸関節性疼痛を訴えた症例について調査、検討したので報告する。平成25年4月から平成27年3月までに当院で腰椎固定術を施行した147例中34例に術後仙腸関節性疼痛の訴えがみられた。男性18名、女性16名で手術時平均年齢は68.6歳であった。固定椎間は1椎間が23例、2椎間が10例、4椎間が1例で、PLIFが14例でPLFが20例であった。仙骨まで固定したのは4例であった。術後1ヶ月以内に疼痛が出現したのが20例、術後1ヶ月以上たってから出現したのが7例、術前からみられていたのが7例であった。全例に仙腸関節ブロックを施行し、効果がみられた。同時期に仙腸関節ブロックを施行した129例中腰椎術後が70例で、24例が画像上腰椎に異常がみられ腰椎疾患として治療されていた。腰椎変性疾患の治療を行う際には、仙腸関節性疼痛も念頭においておく必要がある。腰椎術後症状が残存した場合あるいは再燃した場合にも、同様である。