第83回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題6)

23.腰椎変性側弯症に対するlong fusion の腰仙椎に与える影響


大分整形外科病院 整形外科

 

大田秀樹(おおたひでき)、松本佳之、中山美数、井口洋平、巽 政人、木田浩隆、竹光義治

 

【目的】腰椎変性側弯症に対して立位全脊柱の不良例にはlong fusionを原則としている。Long fusion に於いては腰仙椎の処置が問題となる。3年以上経過したlong fusion手術成績を調査しその問題点について検討した。

【方法】対象は術後3年以上経過した18 例。16 例は神経症状を伴い、2例は腰痛のみであった。男性8例、女性10例。手術時年齢は53歳から77歳、平均67.9歳。術後経過観察期間は36カ月から103カ月、平均55.1カ月であった。

【結果】Cobb角は術前22.2°が術後最終8.5°となり、LLは術前24.6 °が術後27.1 °となった。JOAscore は術前11.0が最終経過観察時22.9となった。腰仙椎の問題で再手術に至った症例は6例(33.3%)であった。

【考察】今回の調査ではlong fusion でもL5/S1を温存した症例が多かった。3年以上経過すると温存した腰仙部が破綻していた。最近では3椎間以上の固定では腸骨まで固定するようにしている。

【結語】側弯症の術式選択においては立位全脊柱の冠状面、矢状面バランスの判定が重要である。バランスが不良であればlong fusion必要となるが、腸骨まで固定しないと腰仙部が破綻する。

24.腰椎変性側弯症に対する多椎間PLIF におけるS1Sacral screw

 

徳島市民病院 整形外科 

 

千川隆志(ちかわたかし)、土岐俊一、鹿島正弘、吉岡伸治、中川偉文、中村 勝、中野俊次

 

【目的】当院において腰椎変性側弯症(degenerative lumbar scoliosis, 以下DLS)に対する多椎間後方矯正固定術において、固定下端が仙椎になった症例の治療成績をretrospectiveに調査した。

【対象および方法】2007年から2014年までに、Cobb角20°以上のDSLに対して3椎間以上の後方椎体間固定(以下PLIF)を施行した52例(男18例、女34例)例中、固定下端が仙椎症例8例(男1例、女7例)を対象とした。固定椎間数は平均3.6椎間(3〜6椎間)であった。手術時年齢は平均69.0歳で、術後調査期間は平均25.1カ月であった。検討項目は、手術時間、術中出血量、輸血の有無、術後深部感染、術前後のJOA score、平林法による改善率、X線評価として、cobb角の推移、 Screw周囲のclear zone、骨癒合とした。

【結果】手術時間は平均413.3分、術中出血量は平均941.3ml、全例術前貯血・セルセーバー回収血による自己血輸血を行ったが、輸血を要した症例は2例であった。

JOA scoreは、術前7.5点が術後18.8点に改善し、平林法による改善率は53.1%であった。cobb角の推移は、術前16.2°、術直後8.8°、最終観察時10.2°だった。Screw周囲のclear zoneは3例に術後3〜6カ月で出現し、そのうちS1 screwlooseningは1例みられたが最終観察時までclearzoneの進行はなく、全例骨癒合が得られた。

25.腰仙椎固定における腸骨スクリュー併用の有用性についての検討

 

大分大学 整形外科


野谷尚樹(のたになおき)、宮崎正志、吉岩豊三、金崎彰三、石原俊信、津村 弘

 

【目的】腰仙椎間固定に腸骨スクリューを併用した14例について検討し、その有用性について考察した。

【方法】2010年1月から2014年12月までに腸骨スクリューを使用した腰仙椎固定術を行った症例14 例( 男性8例、女性6例) を検討した。年齢は40-76歳( 平均63歳)、経過観察期間は7-32か月( 平均17 か月) であった。検討項目は、術前診断、固定範囲、腰仙椎間の骨癒合率、術後合併症とした。

【結果】術前診断は変性疾患が5例、骨折が6例、その他が3例であった。固定範囲は3椎間が6例、4 椎間以上が8例、その中でL5/S1椎体間固定は2例であった。骨癒合率は88.9% (9例中8例)、術後合併症としては、創治癒遅延、インプラントの折損などを認めた。

【考察】腰仙椎固定は比較的偽関節率が高いとされる。本研究では腸骨スクリューのゆるみを認めたものの高い骨癒合率が得られており、腰仙椎固定の補強としては有用であったと考えられた。

【結論】腸骨スクリューは腰仙椎固定の固定力を高める方法として有用と考えられた。

26.L5/S 後方固定の際の腸骨スクリューの必要性、有用性について

 

大分整形外科病院

 

井口洋平(いぐちようへい)、大田秀樹、松本佳之、中山美数、巽 政人、木田浩隆、竹光義治

 

当院で後方固定に腸骨screwを併用した症例数は、2010年1例、2011年3例、2012年4例、2013年13例、2014年20例と近年増えてきている。  

初期の腸骨screwは再手術例がほとんどであった。L5/S固定後の偽関節、上位固定後のL5/S隣接障害に対し尾側のアンカーとして腸骨スクリューを併用していた。

近年それが増加している要因として、隣接障害の再手術例が経過観察期間の延長とともに増えてきていることに加え、後弯症におけるL5/S固定の考え方の変化がある。初期の後弯症手術ではL5/S に変性がなければ温存をしていたが、長期経過でL5/S隣接障害が多く発生した。そのため、現在では後弯症手術では当初からL5/Sを固定する方針としている。多椎間固定の場合L5/Sは偽関節率が高いため、現在ではL5/Sを含む3椎間以上の固定となる際には腸骨スクリューを併用する方針としている。

スクリュー刺入方法として、初期は腸骨稜から刺入していたが、現在はS2 高位から仙腸関節付近の腸骨に刺入する方法をとっている。連結が不要、S2AI よりも、スクリューの並びがよい等のメリットがある。

当院の腸骨スクリュー併用症例をまとめ、その結果を考察する。

27.SAI(S2-Ala-Iliac)スクリューを使用した脊椎骨盤固定術

 

岡山医療センター 整形外科 

 

三澤治夫(みさわはるお)、竹内一裕、廣瀬友彦、中原進之介

 

S2-Ala-Iliac (SAI) スクリューは、強力な固定力と扱いやすさを併せもったアンカーである。SAIスクリューを用いた脊椎骨盤固定術を検討した。対象はSAI スクリューを使用した脊椎骨盤固定術の9例である。男性2例、女性7例、平均年齢は74歳であった。脊柱変形3例、腰仙椎偽関節3例、透析脊椎症2例、腰椎固定術後隣接椎間障害が1例であった。固定上端はT10が3例、L2が2例、L3が3 例、L4が1例であった。術後平均経過観察期間は4.5ヵ月である。SAIスクリューの挿入点、内外側への逸脱、合併症を検討した。挿入点は仙骨が14本、仙腸関節が3本、腸骨が1本であった。内側への逸脱はなく、先端が外側骨皮質にかかったものが4本あった。固定上端のスクリューの緩みを1例、固定上位端の骨折を2例、創部治癒遅延を1例認めた。SAIスクリューは安全に挿入されており、固定上端に問題が発生する症例はあるが、固定下端の破綻を来した症例はなく、骨盤へのアンカーとして十分な固定力をもつスクリューと考えられる。

28.成人脊柱変形におけるSacral alar-iliac screw の刺入点の検討

 

岡山大学病院 整形外科  

 

渡邉典行(わたなべのりゆき)、杉本佳久、瀧川朋亨、荒瀧慎也、田中雅人、尾崎敏文

 

【はじめに】Sacral alar-iliac(SAI)screwは良好な固定力により、成人脊柱変形の手術において有効な手段である。今回、成人脊柱変形の患者におけるSAIscrewの至適刺入点について検討した。

【方法】成人脊柱変形の患者15例(男性5例、女性10例)のCT画像データを画像解析ソフトMimics17.0を用いて解析を行った。解析には3D円柱ツールを疑似スクリューとして用いた。スクリューは全例仙腸関節を貫通して設置した。検討項目は挿入可能な最大スクリュー長と、その横断面(Tsv)と矢状面(Sag)での挿入角度、刺入点の第1仙骨孔からの距離とした。

【結果】φ 10mm/9mm/8mmそれぞれにおいて、平均最大スクリュー長(mm)は男性119.5/120.2/121.8、女性96.35/101.2/108.3、挿入角度(°)は男性でTsv47.7/47.5/48.0、Sag29.1/28.4/30.3、女性でTrv44.5/45.3/45.1、Sag24.1/25.7/25.4であった。刺入点の第1仙骨孔正中下縁からの平均距離(mm)は内側方向に男性で3.7/6.4/9.1、女性で3.3/3.8/3.1、尾側方向に男性で1.8/1.8/2.2、女性で2.4/2.2/2.4であった。

【考察】最新の画像解析ソフトを利用し、スクリュー径を考慮に入れた検討を行うことが可能であった。本検討では、より長いSAI screw挿入のための至適刺入点はこれまでの報告と比較してより内側にあることが示された。