第84回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題2)

7.軸椎の部位別CTハンスフィールド値の検討


佐賀大学整形外科

 

森本忠嗣(もりもと ただつぐ)、塚本正紹、吉原智仁、園畑素樹、馬渡正明

 

【目的】関心領域の海綿骨の骨強度を評価できるCTハンスフィールド値(CT値)を利用して軸椎の部位別のCT値を調査すること。

【方法】頚椎手術例104例を対象に70才以上(男:女= 34:21)と70才未満(男:女= 35:14)に分け、軸椎冠状面の歯突起基部、椎体中央部、椎体下部(遠位1/3 部)、外側塊のCT値を計測した。

【結果】平均CT値は男女とも各部位で200を超えていた。男性では部位別に有意差はなく、女性では両年代とも椎体中央部が有意に低かった(P<0.05)。YAM80% 未満に相当するCT値80未満は3例あり、全例70才以上の女性の椎体中央部であった。

【考察】腰椎平均CT値は40才台で約150、加齢とともに低くなり80才以上で100未満と報告されている。本研究では軸椎CT値は、年代別で有意差はなく、高齢者でも維持されやすいことが示された。一方で女性の椎体中央部は他部位と比べ両年代とも有意に低く、CT値80未満は全例70歳以上でもあり、高齢女性で軸椎骨折が増加する一因の説明となりうる。

8.前縦靱帯骨化は骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折後に偽関節や遅発性麻痺を生じる危険因子となっているか

 

那覇市立病院 整形外科*1、琉球大学 整形外科*2 

 

比嘉勝一郎*1(ひが しょういちろう)、屋良哲也*1、仲宗根朝洋*1、伊藝尚弘*1、金谷文則*2、勢理客久*2、六角高祥*2

 

強直性脊椎骨増殖症に伴う脊椎骨折は、長いレバーアームのため保存的治療では偽関節になりやすいといわれている。脊椎圧迫骨折の診断は単純X線像やMRIで行われることが多いが、強直性脊椎骨増殖症の主因である前縦靱帯骨化はCTで明らかになることも多い。今回、骨粗鬆症に伴う脊椎圧迫骨折例の前縦靱帯骨化の有無を検討した。

【対象と方法】過去3年間に骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折で入院した178例を対象とした。保存的治療を行った167例(保存群)では、単純X線撮影が165例、MRIが161例、CTが9例に、偽関節及び遅発性麻痺のため手術を行った11例(手術群)では、単純X線撮影・MRI・CTが全例に施行されていた。各群で骨折椎体の1椎体上位における前縦靱帯骨化の有無を調べた。

【結果】前縦靱帯骨化は、保存群の単純X線像で14例(8.5%)、CTで2例(22.2%)、手術群の単純X線像で3例(27.3%)、CTで7例(63.6%)に認めた。

【考察】前縦靱帯骨化は手術群で多い傾向にあり、骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折で偽関節や遅発性麻痺を起こし手術に至る要因の1つである可能性が考えられた。また、単純X線像で明らかでないことが多く、診断にはCTが有用と思われた。

9.椎体内クレフトを伴う骨粗鬆症性椎体骨折の画像所見と臨床症状の関連性 Relationship between clinical symptoms of osteoporotic vertebral fracture with intravertebral cleft and radiographic findings

 

JA 広島総合病院 整形外科 脊椎・脊髄センター


中前稔生(なかまえ としお)、藤本吉範、山田清貴、平松 武、鈴木修身、橋本貴士、土川雄司

 

【目的】骨粗鬆症性椎体骨折後に椎体内クレフトを生じると、疼痛の遷延化や遅発性神経障害(delayed neurological defi cit: DND) などが起きることがある。本研究の目的は椎体内クレフトを伴う骨粗鬆症性椎体骨折における臨床症状と画像所見の関連性を明らかにすることである。

【方法】椎体内クレフトを伴う骨粗鬆症性椎体骨折217例(平均年齢77歳)を対象とした。疼痛の程度をvisual analogue scale (VAS)、ADL障害をOswestry Disability Index (ODI)を用いて評価し、DNDの有無も調査した。画像所見は椎体楔状角、椎体不安定性を評価した。

【結果】椎体楔状角は平均19.4度、椎体不安定性は平均7.3度であった。VAS、ODIと椎体楔状角には相関が認めなかったが、VAS、ODIと椎体不安定性に正の相関を認めた。DND群は非DND群と比較し椎体楔状角は有意差を認めなかったが、椎体不安定性はDND群で有意に大きかった。

【考察】椎体内クレフトを伴う骨粗鬆症性椎体骨折では椎体不安定性が臨床症状に影響を与える。

10.骨粗鬆症性椎体骨折の後壁損傷形態による脊椎不安定性の解析独立行政法人労働者健康福祉機構

 

総合せき損センター 整形外科

 

林 哲生(はやし てつお)、前田 健、森 英治、植田尊善、弓削 至、河野 修、高尾恒彰、坂井宏旭、益田宗彰、森下雄一郎、松下昌史、芝 啓一郎

 

【目的】骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)の遅発性麻痺の発生機序を解明する目的で、後壁骨折の形態による損傷椎体の不安定性を検討することである。

【対象と方法】胸腰椎移行部のOVFによる遅発性麻痺で手術した症例のうち、椎体後壁の骨癒合不全を認めた36例を対象とした。動態撮影は脊髄造影した後、仰臥位と半座位の体位でCT撮影した。各々の体位で、骨片占拠率・硬膜管狭窄率・後壁圧潰率について計測し、体位間での変化を調査した。また後壁損傷の様式によって、単純型・粉砕型に分類し比較検討した。

【結果】骨片占拠率の体位間の変化・後壁圧潰率の変化・硬膜管狭窄率の変化は、いずれの項目も粉砕型で有意に大きかった。このことは粉砕型の方が、有意に後壁が圧潰しやすく骨片が突出しやすいと示唆していた。

【結論】椎体後壁の形態は、動的不安定性を評価するうえで重要な要素であった。すなわち椎体後壁の骨癒合が得られていない症例では、粉砕している方が、不安定性が強く、荷重位による神経障害が出現しやすいことを強く示唆していた。

11.新たに開発したCTカラーマッピング処理画像での骨粗鬆症性脊椎椎体骨折における骨癒合過程の検討

 

国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 整形外科1 中央放射線センター2

 

濱崎貴彦*1(はまさき たかひこ)、定岡大祐*2、下瀬省二*1、蜂須賀裕己*1、泉田泰典*1、森 亮*1、大川新吾*1、井上 忠*1、濱田宜和*1*2

 

【はじめに】骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の骨癒合過程はCTによる詳細な報告もあるが、当然グレー画像であるため海綿骨や皮質骨のどの部分でどの程度骨量が増加したかは判別しづらいところもある。そこで今回われわれは受傷時とその後経時的に撮影したCT画像をカラーマッピング処理する新たな方法を開発し、骨癒合過程をより詳細に描出できたので、その有用性を報告する。

【方法】対象は骨粗鬆症性脊椎椎体骨折症例に対し受傷時あるいは来院時とその後4週、12週にCT を撮影し得た11例(全例女性、平均77歳)である。受傷時に撮影したCTをワークステーション上で海面骨と皮質骨の平均CT値を計測したものから各症例のカラーマップを作成し、これを経時的に撮影したCT画像にフュージョンして作製した。

【結果・まとめ】カラーマッピング処理したCT画像は従来のグレー画像と比較して骨量増加の程度や範囲の拡大が明瞭であった(図1)。本法は特殊な機械を必要とせず、比較的簡便に描出できるため、椎体骨折の骨癒合過程を評価する有用な手法の一つとなり得るものと思われた。

12.DISH と骨粗鬆症椎体骨折後骨癒合遅延の関係

 

高知大学 整形外科

 

喜安克仁(きやす かつひと)、武政龍一、公文雅士、田所伸朗、葛西雄介、池内昌彦

 

【目的】近年高齢者の骨粗鬆症性椎体骨折を治療しているとびまん性特発性骨増殖症(DISH)を伴った症例を散見する。今回当院で手術治療を行った骨粗鬆症性椎体骨折後骨癒合遅延症例の中で、DISHを伴った症例の頻度と病態について調査した。

【対象】当院で骨粗鬆症性椎体骨折骨癒合遅延(単椎体症例に限る)に対して手術を施行した32 例(手術時平均年齢79.0歳、男9例、女23例)を調査対象とした。X線、CTでDISHの有無を診断し、椎体骨折症例とDISHとの関係を調べた。また画像(椎体不安定性、後壁脊柱管占拠率)を調べ、DISH の有無で比較した。

【結果】DISHを伴った症例は半数の16例(男6例、女10例)に認めた。骨化内骨折2例、骨化隣接部骨折10例、骨化部から離れた骨折4例であった。椎体不安定性に有意差はなかったが、DISHあり症例で不安定性が大きい傾向にあった。

【考察】当院での骨粗鬆症性椎体骨折後偽関節症例の中でDISHによる骨化隣接部での椎体骨折が31.3%に認められた。特に男性に多い傾向であった。DISHの骨化隣接部の椎体骨折は偽関節の原因となる可能性が示唆された。