第84回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題3) |
13.当院におけるテリパラチド連日製剤使用の検討
愛媛大学大学院医学系研究科整形外科学 三浦裕正
【目的】テリパラチドは現在唯一骨形成作用を有す製剤であり、24か月間投与により骨密度の上昇効果が期待できる製剤である。今回我々はテリパラチド連日製剤を使用し、その効果を検討したので報告する 【方法】対象は2010年10月からテリパラチド連日製剤20μg/日を投与した63例のうち骨密度を測定し得た症例34例とした。骨密度は腰椎で測定し、投与前、投与後1年、投与後2年の比較を行った。 【結果】テリパラチド連日製剤投与前の平均腰椎骨密度は0.645±0.083g/cm2であった。投与後1年では平均腰椎骨密度は0.752±0.160g/cm2と増加し、投与後2年では平均腰椎骨密度は0.822±0.132g/cm2 とさらに増加していた。増加率としては投与後一年では16.1±9.3%、投与後一年では20.8±8.7%であった。 【考察】テリパラチド投与により腰椎骨密度の明らかな上昇が認められた。今後は投与終了後の骨密度変化を検討していく必要があると考えられる。 |
14.脊椎椎体骨折の初期治療にテリパラチドを使用した場合の骨癒合促進効果
岸川整形外科
岸川陽一(きしかわ よういち)、城戸良輔
脊椎椎体骨折の治療初期における非荷重安静治療の椎体整復効果を示して来た。安静度を考慮した上で、テリパラチドを脊椎椎体骨折の初期治療に使用した場合の骨癒合促進効果について発表する。 1)2010.12〜2013.2に臨床脊椎圧迫骨折を来し、入院して安静を管理した128例について、骨癒合率を日整会のパイロットスタディーと比較し、16週の時点で骨癒合している症例108例、未癒合の症例20例の比較により、骨癒合阻害要因を調べた。 2)16週で骨癒合した108例について、骨癒合に要する時間と骨癒合阻害要因との関連を調べ、椎体骨折の圧潰の指標のカットオフ値を調べた。 【結果】1)日整会のパイロットスタディーの48週での骨癒合率は63%であるのに対し、当研究で は16週で84%であった。骨癒合阻害要因は、椎体前壁の圧潰率、荷重変化量であった。 2)椎体前壁の圧潰率は75%、荷重変化量は5mmをカットオフ値とするのが適当であると思われた。(Mann-Whiteny U testで有意差あり) |
15.骨粗鬆症性椎体骨折患者に対するテリパラチドの初期効果について
久留米大学整形外科、小野病院
【はじめに】骨粗鬆症性椎体骨折患者に対するテリパラチドの初期効果についての報告は無い。今回その初期効果について検討する。 【目的】投与後1,2,4か月の時点でのI型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTx)、T型プロコラーゲン−N−プロペプチド(P1NP)、Caの動態について検討する。 【対象および方法】症例は女性10例(平均年齢79歳)、Th12-L5までの椎体骨折患者に対して、テリパラチド(フォルテオ)を投与し、コルセットを3ヶ月着用させ、NTx、P1NP、Ca値を測定した。 【考察】P1NPの平均値は受傷時54.9μg/L、投与後1ヶ月160.9μg/L、2ヶ月113.48μg/L と1ヶ月の時点で最高値を示した。P1NP上昇とCa濃度に相関は無かった。 【考察】P1NP は投与後1ヶ月の時点で最高値を示したが、高反応を示す患者と無反応の患者がおりその個体差が何なのかは不明である。早期に骨形成を促進させることより受傷後速やかな投与開始が必要であること、また、脊椎固定術における術前投与の指標、さらには、鎮痛効果としての指標になる可能性があると思われた。 |
16.骨粗鬆性椎体骨折遷延癒合に対するテリパラチドの治療効果
山口大学整形外科
吉田佑一郎(よしだ ゆういちろう)、寒竹 司、今城靖明、鈴木秀典、西田周泰、田口敏彦
【目的】骨粗鬆性椎体骨折遷延癒合例に対してテリパラチドを投与し、骨癒合や腰背痛に対する治療効果を検討する。 【対象】3ヵ月以上持続する腰背部痛を有する骨粗鬆患者25例(男性3例、女性22例)。全例1椎体以上の陳旧性椎体骨折を有し、13例で遷延癒合を伴っていた。 【方法】テリパラチド連日製剤を12ヵ月間投与し、遷延癒合例13例とその他12例を比較検討した。評価項目は、腰背部痛VAS、JOABPEQ、血清P1NP、尿中NTXで、遷延癒合例では、Xp仰臥位・座位側面像での椎体高の変化を評価した。 【結果】VAS変化量は、3ヵ月以降は遷延癒合群で有意に低下していた。JOABPEQの疼痛関連障害においても、遷延癒合群で有意な改善を認めた。骨代謝マーカーの変化は、両群間で有意差はなかった。椎体不安定性は、12ヵ月の時点で有意に改善していたが、cleftが完全に消失したのは3例(23.1%)であった。 【結論】椎体不安定性の改善には12ヵ月かかるが、腰背部痛は3ヵ月程度で軽減させる効果がある。 |
17.仰臥位で体幹ギプスを巻くために考案した簡易器具を使った骨粗鬆症性椎体骨折の治療経験
タケシマ整形外科医院
後藤健志(ごとう けんじ)
【背景および目的】骨粗鬆症性椎体骨折に対する治療に関しては、発症後7日以内に入院治療を開始し、初期安静と骨折型に応じた適切な外固定装具により、良好な結果を報告した(臨床整形外科48:5~11,2013)。今回、無床診療所にて仰臥位で体幹ギプスを巻くための簡易器具を考案し、コルセットでは成績不良が予想された症例に適応したので、短期的な治療成績を報告する。 【対象および方法】2015年3月から6月までに、外来で簡易器具を用いギプスを巻いた7例(男性3 例、女性4例)を対象とし、初診までの期間、巻き込み後の治療施設、ギプス装着期間、骨癒合の有無とその期間などを調査した。 【結果】初診までの期間は1~60日(30日と60日の2例は入院歴あり、残りの5例は7日以内)、巻き込み後は自宅3例、老健2例、病院・医院2例で治療し、ギプス装着期間は6〜12週、骨癒合は5例に10 週から5ヵ月で認め、2例は3ヵ月と5ヵ月の時点で骨癒合していなかったが、疼痛は全例ほぼ改善していた。 【結論】本症に対する簡易器具を使った体幹ギプス治療は有用と考えられた。 |
18.経口ビスホスホネート剤投与中の非定型腰椎椎弓根骨折と思われた2症例
大分整形外科病院
巽 政人(たつみ まさと)、大田秀樹、 松本佳之、星野秀士、中山美数、井口洋平、瀧井 穣、木田浩隆、竹光義治
【目的】骨粗鬆症に対し経口ビスホスホネート剤(以下BP剤)投与中に非定型腰椎椎弓根骨折を呈したと思われる2例を経験したので報告する。 【対象】症例1:74歳女性、骨粗鬆症性L1圧迫骨折の既往あり、H22年2月よりBP剤服用していた。H23年3月、下肢痛を伴うL4変性すべり症に対しL4/5TLIFを施行した。経過は良好であったが術後約4 年して軽微な負荷後に腰痛・下肢痛が出現した。L3両側の非定型的な椎弓根骨折を認め、L2は後方にすべっていた。L2/3、3/4のXLIF、L2-4PSFを行い症状は軽快した。椎弓根の骨癒合も得られている。 症例2:85歳女性、5年前よりBP剤服用していた。H27年7月、明らかな外傷なく腰痛. 左大腿部痛出現した。L2両側の非定型的椎弓根骨折を認め、L3は破裂骨折を呈していた。L2/3左椎間孔狭窄もあったためL2/3TLIF及びL2-4後方固定を行い症状は改善した。 【考察】長期BP剤投与中の非定型骨折は大腿骨に特徴的と言われるが、近年、腰椎椎弓根骨折の報告も散見される。BP剤治療中に於いては椎体だけでなく椎弓根も評価する必要がある。椎弓根骨折を呈すると神経症状を呈することがあるので注意を要する。 |