第84回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題4)

19.当科における骨粗鬆症性脊椎骨折に対するBKPの適応と術後成績


地域医療機構(JCHO)九州病院

 

土屋邦喜(つちや くによし)、宮崎幸政

 

【目的】BKP(Baloon Kyphoplasty)の適応、術後成績、合併症を検討した。

【対象および方法】骨粗鬆性脊椎骨折にてBKPを施行し術後3ヶ月以上の経過観察を施行した症例は8例であった。年齢は70〜86歳、骨折レベルはTh12からL2、受傷から手術までは平均5.2ヶ月、フォローアップ期間は平均11ヶ月であった。

【結果】7例で術直後より背部痛は著明に改善した。手術時間は平均44分(39〜55分)、出血量は全例少量であった。周術期合併症は認めなかった。3例(37%)に隣接椎体骨折を認めたがいずれも外固定を併用し保存的加療を継続した。形成椎体のセメント周辺のclear zoneは2例に認めた。

【考察】BKPによる疼痛軽減効果は著しいが、隣接骨折が一番の課題である。即時疼痛が軽減することにより、活動度が上がり、過剰な運動負荷がかかっていることも想定され、厳密な適応に加えある程度の活動制限や外固定の併用、併行して骨粗鬆症治療等を行いながらトータルで管理していくことが重要である。

20.Balloon Kyphoplasty(BKP)の適応および治療成績の変遷

 

岡山医療センター 整形外科 

 

三澤治夫(みさわはるお)、廣瀬友彦、竹内一裕、中原進之介

 

 2011年の導入以降、積極的にBKPを行ってきたが、術後に隣接椎体骨折を来たす症例が多く、適応の見直しを行った。検討前後での同一術者の骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)に対する治療を検討した。対象は2年間にOVFに対して同一術者が手術を施行した31例である。男性7例、女性24例、平均年齢は76歳であった。手術術式はBKPが15例、BKP+後方固定が5例、後方固定が4例、前方後方固定術が7 例であった。これらの症例を、検討前後の2期に分け、術式選択と術後骨折について検討した。前後期のOVFの手術件数はそれぞれ、14例、17例であった。BKP単独で治療を行った症例は、9例(64%)、6例(35%)であった。BKP単独術後の隣接椎体骨折は、4例(44%)、0例(0%)に認めた。検討後、リスクの高い症例への適応の除外や早期の後方固定の追加を行うようになった。検討後、症例数は減ったが、術後骨折の発生はなく、厳密に適応を判断することで術後骨折を減らすことが可能であると考える。

21.骨粗鬆症性椎体骨折後偽関節に対するBalloon Kyphoplastyの治療経験

 

三朝温泉病院


吉田匡希(よしだ まさき)、加藤芳弘、深田 悟、石井博之、森尾泰夫

 

【目的】骨粗鬆症性椎体骨折後偽関節に対してBalloon Kyphoplasty(以下BKP)を行った症例を検討したので報告する。

【対象と方法】2011年1月1日から2015年3月31日までに当院でBKPを施行し、術後6カ月以上経過観察可能であった25例27椎体を対象とした。男性4例、女性21例、平均年齢は79.3歳(59〜93歳)であった。平均経過観察期間は22.9か月であった。検討項目はDenis Score(術前、最終観察時)、椎体後彎角(術前、術直後、最終観察時)、周術期合併症とした。

【結果】Denis Scoreは術前4.4、最終観察時2.3であり有意に改善していた。(P<0.01)椎体後彎角は術前8.3°、術直後2.9°、最終観察時7.4°であり、術前と最終観察時には変化がなかった。合併症は、隣接椎体骨折11椎体、骨セメントの漏出は3例に認めた。

【考察】BKPは低侵襲な手術であり、疼痛に関して即時的な効果が期待できる。ただ合併症として、隣接椎体骨折があり、BKPのみではなく、継続的な骨粗鬆症の治療も必要である。

22.当院におけるBalloon Kyphoplastyの術後1年成績

 

長崎労災病院 整形外科

 

平田寛人(ひらた ひろひと)、馬場秀夫、山田晋司、横田和明、山口貴之、小西宏昭

 

【はじめに】脊椎圧迫骨折に対する経皮的椎体形成術(以下BKP)が普及しつつあるが、高齢者に多く施行されており1年以上フォローされた報告は少ない。今回当院で施行し、1年以上経過観察可能であった症例を対象とし臨床経過を検討した。  

2012年12月から2014年7月においてBKPを施行し1年以上経過観察可能であった20症例(男性7例、女性13例、平均年齢76歳)を対象としNumerical Rating Scale(NRS)、局所後弯角、続発椎体骨折につき術前、術直後、術後1年で評価を行った。

【結果】NRSは術前平均7.4±1.3であり術直後2.5±1.5、術後1年3.5±2.9であった。 術前と比較し術直後、術後1年で有意に疼痛は改善していたが(P<0.01)、術直後と比較し術後1年では有意に疼痛が増強していた(P<0.05)。

局所後弯角は術前平均12.0±9.6度、術直後6.3±5.7 度、術後1年9.2±6.0度であった続発椎体骨折を5例に認め、1例では後方脊柱再建術を要した。

【考察】BKPは術後1年経過しても症状は改善しており、有効な治療法である。 しかし続発椎体骨折が術後1年での疼痛増強の要素として考えられ、9.9〜37.2%と報告されており当院でも25%と高頻度に認めた。

23.Balloon kyphoplasty 施行後の椎体安定性の検討

 

九州大学病院別府病院 整形外科

 

東野 修(とうの おさむ)、樽角清志、大野瑛明、土井俊郎

 

【目的】骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)に対するBalloon kyphoplasty (BKP)については良好な治療成績が報告されているが、BKP後の椎体に動揺性が残存する症例も存在する。今回BKP施行後2年以上経過例の椎体安定性について調査した。

【対象と方法】OVFに対してBKPを施行し、2年以上の経過観察が可能であった36例を対象とした。BKP施行時の平均年齢は80才、平均経過観察期間は31ヶ月であった。椎体安定性の評価はX線側面の座位・仰臥位像およびCTで行い、治療椎体自体の不安定性がない状態、もしくは隣接椎体との骨性架橋により不安定性がない状態を骨癒合ありと判定した。疼痛はVASにて評価し、骨癒合群と非骨癒合群において比較検討した。

【結果】最終経過観察時に27椎体(75%)において骨癒合が確認された。疼痛の改善においては骨癒合群と非骨癒合群において有意差はなかった。

【結語】OVFに対するBKPは疼痛改善について有効であるが、1/4の症例で椎体の完全な安定化は得られていなかった。 今回の調査ではlong fusionでもL5/S1を温存した症例が多かった。3年以上経過すると温存した腰仙部が破綻していた。最近では3椎間以上の固定では腸骨まで固定するようにしている。 【結語】側弯症の術式選択においては立位全脊柱の冠状面、矢状面バランスの判定が重要である。バランスが不良であればlong fusion必要となるが、腸骨まで固定しないと腰仙部が破綻する。