第84回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題5) |
24.骨粗鬆性椎体骨折に対する経皮的後弯矯正術の治療成績
山田清貴(やまだ きよたか)、藤本吉範、中前稔生、平松 武、橋本貴士、鈴木修身、土川雄司
【目的】当科では2011年1月より原発性骨粗鬆性椎体骨折に対し経皮的後弯矯正術(BKP)を施行しており、その治療成績を報告する。 【対象と方法】2011年1月から2012年9月までに当科にてBKPを施行した158例(男性37例、女性121例、平均年齢77歳)を対象とした。術前後の腰背部痛の程度をVAS、活動性をODIにて評価し、Xp座位側面像にて術前後の局所後弯角の変化を評価した。また、周術期合併症、術後隣接椎体骨折の有無について調査した。 【結果】腰背部痛のVASは術前平均79mmが術直後26mm、術後1年42mm、ODIは術前平均66%が 術直後41%、術後1年32%に有意に改善した。局所後弯角は術前平均13.6度が術後1年1.1度に改善した。周術期に全身性合併症を来した症例はなかった.術後隣接椎体骨折は30例19%に認め、12例にBKPを再施行した。 【考察】BKPは術後早期から良好な除痛効果があり活動性が改善した。低侵襲手術であり高齢者に特に有用であると考える。 |
25.Balloon kyphoplasty(BKP) 術後2年以上の治療成績
大分整形外科病院
中山美数(なかやま よしかず)、大田秀樹、松本佳之、井口洋平、巽 政人、瀧井 穣、木田浩隆、竹光義治
【目的】当院では2012年4月より骨粗鬆症性椎体骨折偽関節例に対してBKPを開始し、術後短期成績や術後合併症について報告してきた。今回は術後2年以上経過した30症例のうち直接検診可能であった12症例の治療成績について報告する。] 【対象】対象は12症例13椎体で男性3例、女性9例であった。手術時平均年齢は78.0歳で手術高位はT12が5椎体、L1が5椎体、L2が3椎体であった。受傷以前に骨粗鬆症の診断で内服加療されていたのは7例であった。 【結果】術前疼痛スコア(VAS10点満点)は平均6.9点、術後は平均1.9点、最終観察時は平均2.6点であった。隣接椎体骨折発症例は4例(33.3%)で全て上位椎体であった。術後テリパラチド併用例は8例(66.7%)であった。局所後弯矯正角は術直後平均6.7°で、最終観察時平均3.1°の損失を認めた。1例は著明な後弯進行のため矯正手術を予定している。 【考察】BKPによる除痛効果や後弯矯正率は術後経過とともに悪化する傾向を認めた。原因として高齢が故の退行性変化、新規椎体骨折が考えられた。 |
26.遅発性麻痺を呈する骨粗鬆症性脊椎椎体骨折後の偽関節に対するBalloon kyphoplasty の治療成績
大分整形外科病院
【目的】低侵襲を目的に、遅発性麻痺を呈する骨粗鬆症性脊椎椎体骨折(OVF)後の偽関節に対しても、先ずは BKPを行い、改善がない場合のみ二期的後方除圧固定を施行している。当院での治療成績を報告する。 【方法】2012年4月〜 2015年4月の間に行った12例。男性6例、女性6例、年齢は平均81.5歳。術後経過観察期間は平均9.2か月であった。 【結果】BKP後Frankel分類で1段階以上の改善を示したものは8例(66.7%)、不変例が4例(33.3%)、悪化例はなかった。不変の4例には1例に後方除圧術、2例に後方除圧固定術を施行し、2例が改善、1例が不変であった。2期的手術を含めて不変例はいずれもASHを伴った症例であった。 【考察】遅発性麻痺を呈するOVFに対するこれまでの術式は侵襲の高さなど様々な問題点があった。一方、除圧なしの後方固定だけでも麻痺は改善するという報告もある。従って、われわれは骨セメントを詰め込み安定化させるだけで麻痺が改善するのではないかと考え本法を行っている。約3割の患者には効果がなかったが、合併症を有する高齢者に対しては有益な方法と考える。 |
27.当科における脊椎偽関節観血的治療の検討
日本赤十字社 広島赤十字・原爆病院 整形外科
柳澤義和(やなぎさわ よしかず)、野村 裕、田中孝幸、有馬準一
【はじめに】骨粗鬆性椎体偽関節治療で経皮的椎体形成術(以下、BKP)の術後成績は良好である。当科でも2014年8月よりBKPを開始した。HAによる椎体形成に後方固定術を併用した従来法(I群)とBKP(B群)を比較検討した。 【方法】2011年1月から2015年8月まで本疾患の手術例、I群:8例とB群:6例のアライメント変化、骨密度、旧JOA score、合併症などを検討した。 【結果】局所後弯角では座位にて両群ともに成績良好であったが、臥位では特にI群で最終観察時に有意な増悪を呈した。全体後弯角では座位にてI群の有意な増悪を認めた。骨密度は腰椎に両群に差はなかった。旧JOA scoreの改善率はI群:67.0%、B群:70.6%であった(有意差なし)。合併症はI群でインプラント緩み・感染により5例で抜釘し、4例で他椎体骨折を認めた。B群では脊柱管へのセメント漏出や他椎体骨折を認めなかった。 【考察】I群はインプラント関連の合併症と他椎体骨折により術後アライメントの増悪を来したと考えられたが、腰痛に関しては改善例も多数認めた。後壁の不安定性が体動時腰痛の一因と考察された。 |
28.大腿神経痛を伴う第3 腰椎骨粗鬆症性椎体骨折に対してballoon kyphoplasty と内視鏡視下椎弓切除術・椎間孔拡大術を施行した1例
島根大学 整形外科
松崎雅彦(まつさき まさひこ)、河野通快、国村大樹、内尾祐司
【目的】第3腰椎骨粗鬆症性椎体骨折を機に大腿神経痛を生じ、保存的治療無効例に対してballoon kyphoplasty(BKP)と脊椎内視鏡視下椎弓切除術(MEL)・椎間孔拡大術(MELF)を施行した経験を報告する。 【症例】78歳女性。6週間前、転倒を機に腰痛をきたし、某病院を受診。L3圧迫骨折と診断され、入院の上、保存的治療を施行されたが、強い右大腿前部痛としびれ、右下肢近位筋の脱力を生じ、ベッド上で体動困難な状態が続いた。単純エックス線像上L3椎体圧潰を認め、CT上L3椎体尾側終板下骨折による後壁と両側側壁の骨片の突出、MRI上L3/4での脊柱管内狭窄、L3/4右側椎間孔内狭窄 を認めた。受傷後6週間目に当科でL3 BKP、MEL(L3/4)、MELF(L3/4右側)を施行した。術後ただちに腰痛は消失、右下肢痛は軽減し術後数日で立位歩行可能となった。術後2か月で右下肢脱力は回復した。 【考察】高齢者には無症候性脊柱管狭窄状態が多く、骨粗鬆症性椎体骨折をきっかけに神経根性疼痛を発症することがある。本病態に対するBKPと内視鏡視下除圧術を組み合わせた低侵襲手術は術後早期離床を促し、ADLを早期に回復することが可能な有用な治療方法である。 |
29.びまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis, DISH)を伴う椎体骨折後の遷延治癒症例に対して、Balloon Kyphoplasty(BKP)を用いた場合の治療成績
浜脇整形外科病院
立岩大輔(たていわ だいすけ)、真野洋佑、谷本純一、原 道治、池田昌樹、池田祐一、山中一誠、島岡康則、大石陽介、村瀬正昭、浜脇純一
DISHを伴う椎体骨折は予後不良のことが多く、インストゥルメントによる脊椎固定の併用や、遅発性麻痺のために侵襲の大きい手術が必要とされている。今回我々は、DISHを伴う椎体骨折後の遷延治癒症例に対しBKPを施行し、より低侵襲な治療が可能であるかを検討した。 【対象と方法】平成24年1月から平成26年10月までの間に、当院にてBKPを施行した症例のうちDISH を伴うDISH群13例(男性5例、女性8例、平均年齢77.2歳)、DISHを伴わない非DISH群19例(男性5 例、女性14例、平均年齢79.9歳)において、楔状率( 術直前、術直後、術後1年)、bone bridge の有無、続発性骨折の有無等について比較検討した。 【結果】楔状率(平均)は、DISH 群で0.52(術直前)→ 0.87(術直後)→ 0.76(術後1年)、非DISH群で0.46(術直前)→ 0.71(術直後)→ 0.63(術後1年)であり、いずれにおいても術直前に比べ有意に改善されていた。また、両群間において術直前の楔状率に有意差は認めなかったが、術直後および術後1年の楔状率についてはDISH群で有意に改善を認めた。その他項目では有意差は認めなかった。 |