第84回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題7)

36.X-coreRを用いて加療した高齢者における腰椎破裂骨折の小経験


香川労災病院 整形外科 

 

生熊久敬(いくま ひさのり)、高畑智宏

 

【はじめに】当科では、本年より高齢者の腰椎破裂骨折に対して、前方支柱にNuVasive 社製X-coreR、後方にPPSを用いた低侵襲前後合併手術を導入し3例を経験したので、その小経験について報告する。

【対象】腰椎破裂骨折を生じた男性3例(平均79.3歳、L1:2例、L2:1例)。アプローチ方法、手術時間、出血量、合併症、平均離床期間、PPS刺入体位について検討した。開創器は同社MaXcess4R を使用した。

【結果】全例胸膜外アプローチを用い上記開創器で視野を確保した。平均手術時間258.3分、平均出血量265ml、平均離床期間は2.5日、合併症は認めなかった。PPS腹臥位刺入と側臥位刺入の平均手術時間は、それぞれ275分、225分であった。

【考察】本術式は、MaXcess4R によりmini-openで病巣へアプローチ可能である。従来法と比較して出血量を低減でき、高齢者においても前後合併手術を積極的に適応できる可能性がある。

37.骨粗鬆症性椎体骨折に対する前方・後方固定術の治療成績

 

JA 広島総合病院 整形外科 

 

平松 武(ひらまつ たけし)、藤本吉範、山田清貴、中前稔生、鈴木修身、橋本貴士、土川雄司

 

【目的】前方支柱再建が必要な、骨粗鬆症性椎体骨折に対し後方固定術後、小皮切( mini-open approach)で前方固定術を施行した手術成績を検討すること。

【対象・方法】症例は6例(男性2例、女性4例)、手術時平均年齢78±5歳、罹患椎体はL1:1例、L2:4例、L3:1例、平均術後経過観察期間は18±7か月であった。術前後のVAS、ODI、周術期合併症、椎体不安定性、術前後の局所後弯角、隣接椎体骨折の有無を検討した。

【結果】VAS、ODIは術前78±12mm、74±12% が、最終調査時34±15mm、41±14%、改善率は60%、43%であった。術前椎体不安定性は24±6度、局所後弯角は術前41±7度、術直後13±7度、術後3か月21 ±4度、術後1年23±4度で、全身性合併症、隣接椎体骨折は認めなかった。

【考察】前方固定術は低侵襲ではないが、mini-open approachは従来法と比較し合併症を軽減する報告がある。本法も重篤な合併症はなく、臨床成績も良好で前方支柱再建が必要な高齢者に適応可能である。

38.胸腰椎骨粗鬆性椎体骨折に対する前方支柱再建術:前方法と側方法(XLIF)の比較

 

下関市立市民病院 整形外科


渡邊哲也、(わたなべ てつや)白澤建蔵、山下彰久

 

 骨粗鬆性椎体骨折の手術に関して当科では現在、側方法(XLIF)による椎体置換と経皮的椎弓根スクリュー(PPS)を併用した前方後方同時固定(以下XLIF+PPS)を症例に応じて施行している。これまで施行した前方法の症例の手術成績と比較検討した。

【症例】症例は12例。年齢は平均71歳。全例遅発性麻痺または神経根障害を呈した。損傷高位はTh126例、L1 3例、L2 3例、他 1例。

【方法及び結果】前方法単独6例。前方固定に後方PS併用3例、XLIF+ PPS 3例である。前方法は全例前方にimplantを使用した。椎体置換材料はAWGC椎体スペーサー4例、自家骨1例、titan-mesh cage 4例。XLIFにはX-CORE expandable cageを3例に使用した。手術時間は平均5時間4分、出血量は110gから1270g(平均538g)であった。XLIFの3例では出血量は平均127gと少なかった。固定椎角は経過観察時にXLIF以外の症例で矯正損失を認めた。合併症として深部感染と前方手術創の腹壁ヘルニアを1例に認めた。

【まとめ】XLIF+ PPSは手術侵襲が少なく、矯正位を保持できる可能性がある。

39.骨粗鬆性椎体骨折後遅発性神経障害に対する脊椎後方短縮固定術〜 Modifi ed PSO and Modifi ed PLIF 〜

 

徳島市民病院 整形外科

 

千川隆志(ちかわ たかし)、土岐俊一、鹿島正弘、吉岡伸治、中川偉文、中村 勝、中野俊次、西良浩一

 

【目的】骨粗鬆性椎体骨折後の遅発性麻痺に対して、骨折椎体レベルでPedicle subtraction osteotomy(PSO)を応用した後方短縮と同時に頭側椎間にModified PLIFによる前方再建を行ったので術後成績を後ろ向きに調査した。

【対象】2008年1月から2014年8月まで当科で手術を行った33例を対象とした。平均年齢は72.6歳、平均経過観察期間は26.2カ月であった。

【方法】手術は、罹患椎体の椎弓切除、Modified PSOによる後方短縮、不安定な頭側椎体終板と頭側椎間板を郭清しPLIF cageと充分な骨移植による前方再建を行った。術前後の局所後彎角、術後合併症、骨癒合についてClaw hook使用群、テリパラチド使用群で比較検討した。

【結果】術後合併症は、Screw周囲のLooseningが4例、隣接椎体骨折が4例、術後後弯変形進行例4例、術後表層感染1例、深部感染1例をそれぞれ認めた。Claw hook使用群15例のうち術後後弯変形が進行したのは1例、術後フォルテオ投与群16例で術後隣接椎体骨折が生じたのは1例でそれぞれ有意に少なかった。

40.多発性腰椎圧迫骨折後の後弯変形に対する後弯矯正手術

 

徳島市民病院 整形外科

 

鹿島正弘(かしま まさひろ)、千川隆志、土岐俊一、吉岡伸治、中川偉文、中村 勝、中野俊次、西良浩一

 

【目的】骨粗鬆性椎体骨折後の後弯に対して、骨折椎体レベルでPedicle subtraction osteotomy(PSO) による後方短縮と椎体間 PLIF による矯正固定を経験したので報告する。

【症例】76歳女性、第2,4,5腰椎圧迫骨折陳旧例で、後弯変形による背部痛、胃食道逆流症(GARD)、歩行障害を有した。

【方法】手術は、第2腰椎PSO で25度、L3/4,L4/5 PLIF にL-Varlock cage を使用しそれぞれ10度の前弯を計画し、術前17度の後弯を約20度腰椎前弯を獲得した。固定範囲は第10 胸椎〜第5腰椎として、Th10,11,12,L1〜L3,L4,L5 Pedicle screw挿入時HA stick、L3/4,L4/5 Varlock PLIF cage, 固定上下端はネスプロンケーブルにてSubLaminar tapingで補強し、自家局所骨とAllograftを使用し、充分な骨移植による後方矯正固定術を行った。

【結果】術後フォルテオ投与した。術後2日目に吊り上げギプス固定後、座位、立位訓練開始し、術後3カ月硬性コルセットを装着した。術後深部感染、Screw looseningなど合併症なく、骨癒合が得られた。

41.骨粗鬆症性椎体骨折に対する椎体骨切り術の検討

 

広島大学大学院 整形外科学

 

住吉範彦(すみよし のりひこ)、田中信弘、中西一義、亀井直輔、力田高徳、高澤篤之、古高慎司、越智光夫

 

【背景】骨粗鬆症に伴う椎体骨折は、疼痛の遷延や、遅発性神経障害を生じる可能性もある。我々は、保存的治療に抵抗性の腰痛や神経症状に対しPedicle subtraction osteotomy(PSO)、Posterior vertebral column resection(PVCR)などの椎体骨切り術を行ってきた。

【目的】骨粗鬆症性椎体骨折に対し、当科で行った椎体骨切り術の結果を検討すること。

【方法】PSOを行った6例、PVCRを行った7例を対象とした。手術用顕微鏡を使用し、骨切り時にはナビゲーション、術中脊髄機能モニタリングを併用した。手術時間、出血量、画像所見(矯正角度)、術後成績(JOAスコア、フランケル分類)を検討した。

【結果】平均手術時間261分、平均出血量543mlであった。平均矯正角は27度であった。JOAスコアは術前平均7.8点、術後平均15.7点、平均改善率は37.2%であった。下肢運動障害を認めた8例中3例でフランケル分類1段階以上の改善を認め悪化例はなかった。

【結論】骨粗鬆症性椎体骨折に対し、椎体骨切り術を施行し、アライメントの矯正と固定が可能であった。手術用顕微鏡、ナビゲーション、術中脊髄機能モニタリングの使用により安全に手術可能であった。