第84回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題8)

42.当科における手術治療の変遷から見た骨粗鬆症性椎体骨折に対する治療戦略の比較


久留米大学医学部 整形外科 

 

山田 圭(やまだ けい)、佐藤公昭、井上英豪、横須賀公章、溝上健次、後藤雅史、井手洋平、松原庸勝、永田見生、志波直人

 

【はじめに】骨粗鬆症性椎体骨折は高齢者特有の骨脆弱性と合併症のため治療に難渋することも多い。今回、当科の手術術式の変遷から治療方針を検討した。

【対象と方法】対象は2005年8月から2015年8月まで当科で骨粗鬆症性椎体骨折に対し手術を行った55例(男24例、女31例)で年齢は平均74歳(60〜84歳)であった。調査項目は、手術術式、手術選択した理由、術後合併症であった。

【結果】主に麻痺の為、除圧固定術が38例、除痛目的で観血的椎体形成術が1例、2014年以降、痛みによるADL障害でPPS(percutaneous pedicle screw)固定が4例、Balloon kyphoplasty(BKP)が10例、矯正固定術が2例施行された。除圧固定術の5例で術後感染、矯正固定術の1例に髄液漏を認めた。

【考察】従来は保存的治療抵抗例、麻痺合併例に限り手術を施行してきたが、2014年以降BKPやPPSを早期に施行し、短期的には合併症なく有効である。今後、QOL評価を行い長期的に評価する必要性がある。

43.骨粗鬆症を有する脊柱後側弯症術後に上位椎体骨折を生じた一例

 

岡山大学病院 整形外科 

 

宇川 諒(うがわ りょう)、杉本佳久、荒瀧慎也、瀧川朋亨、田中雅人、尾崎敏文

 

【はじめに】今回、骨粗鬆を有する患者に生じた、後方固定術後の上位隣接椎体病変(以下PJK)に対し、複数回手術を要した一例を経験したので報告する。

【症例】66歳女性。17年前に関節リウマチを発症、ステロイド内服投与継続されていた。6年前に当科でL5/S1 PLIF、L4/5開窓術を施行した。術後、テリパラチド投与した。その後、L4辷りによるL4/5の再狭窄、多発椎体骨折、脊柱後側弯を生じ、1年前にL4/5 TLIF、Th4-S2後方固定術を施行した。術後、症状改善傾向みられたが、他院転院後に転倒、両下肢痺れ・脱力症状あり、画像精査にてTh4新鮮椎体骨折及び椎弓根スクリューの逸脱を認めた。このため、2回目術後4ヵ月の時点で再手術を施行した。Th4スクリューを抜去し、固定をTh1まで延長した。現在経過観察中だが、新たな合併症はみられていない。

【考察】成人におけるPJKのリスクの一つに、骨粗鬆症が挙げられる。今回の症例においてもPJKに対し複数回の手術を要したが、最終的には良好な治療成績を得ることができた。

44.骨粗鬆症性椎体骨折後遅発性麻痺に対する脊椎固定術後のADLに影響を与える因子の検討

 

産業医科大学整形外科


山根宏敏(やまね ひろとし)、中村英一郎、邑本哲平、竹内慶法、濱田大志、江副賢生、酒井昭典

 

【目的】本研究の目的は、骨粗鬆症性遅発性麻痺に対する脊椎固定術後のADLに影響を与える因子について検討し、今後の治療戦略に役立てることである。

【対象】2008年〜2013年に胸腰椎移行部骨粗鬆症性遅発性麻痺に対して、後方固定術・椎体形成術を行った21例である。

【方法】ADLは日常生活自立度判定基準(J1〜C2)を用い、自立群:J1以上、非自立群:A1以下と設定し、評価した。評価項目は、骨密度、血液検査、麻痺の程度(改良Frankel分類)、圧潰率・局所後彎角、椎弓根骨折・後壁損傷、手術時間、出血、JOA改善率とした。

【結果】術前・後の後彎角、術前・後圧潰率に2群間で有意な差を認めた。また、術前の麻痺が改良Frankel 分類C2以上(仰臥位で膝立て可)は、良好因子であった。その他の因子では有意な差は認めなかった。

【まとめ】骨粗鬆症性椎体骨折後遅発性麻痺に対する脊椎固定術後のADLに影響を与える因子は、術前・後の後彎角、術前・後の圧潰率と術前の改良Frankel分類 C2以上であった。

45.骨粗鬆症性椎体骨折に対する後方固定術後の骨折部癒合不全に関連する因子

 

戸畑共立病院 整形外科 清水建詞(しみず けんじ)、大友 一、大茂壽久、濱田賢治、長島加代子、柴田 遼、江島健一郎、永尾 保、佐保 明、田原尚直

 

産業医科大学 整形外科 中村英一郎

 

 骨粗鬆症性椎体骨折に対する後方固定術後の骨折部癒合不全に関連する因子について調べた。症例は平成21年以降に骨粗鬆症性椎体骨折に対し後方固定術を施行した11例(男5例、女6例)である。年齢は平均76歳、骨折椎体はTh11からL2におよび、明らかな外傷歴を有するものが9例、発症から手術まで平均114日であった。固定術を適用した病態は神経障害7例、椎弓根骨折10例、脊椎強直1 例(重複を含む)であった。手術は全例後方のみの展開で、頭側は高分子ポリエチレンテープで椎弓根スクリューを補強し、最尾側に椎弓フックを使用した。固定範囲は2above-1belowが8例を占めた。損傷椎体内には経椎弓根的に自家骨もしくは人工骨を充填した。4例は椎弓切除を加えたが、7 例は除圧なしに固定し椎弓上にも骨移植を行った。単純X 線で固定最上位および最下位の椎体終板のなす角を計測し、座位と仰臥位の差が5°以上を癒合不全と定義した。術後6ヶ月もしくは1年時に癒合不全となる要因について調べた。