第85回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題2)

7.慢性椎間板性腰痛に対する診断とmonoportal PLIFによる手術成績


福岡東医療センター 整形外科

 

吉田 裕俊(よしだ ひろとし)、幸 博和、井上 三四郎、中家 一寿

 

【目的】慢性椎間板性腰痛に対する、診断および手術成績について検討した。

【対象】症例は21例、対象椎間23椎間、男性13例、女性8例。年齢は29から70歳、平均45歳。 1椎間固定術19例、2椎間固定術2例であった。

【方法】腰椎X線写真、MRI上の変性を検討し、椎間板造影の疼痛再現およびブロック効果をもとに責任椎間の同定を行った。手術は全例にmonoportal PLIFを施行し、術前、経過観察時の臨床成績はJOA scoreで評価した。

【結果】腰椎変形性変化のうち、椎間板腔狭小化は23椎間中22椎間、MRI上椎間板変性は全椎間、終板輝度変化は23椎間中14椎間、椎間板膨隆は23椎間中10椎間に認められた。椎間板造影は14椎間に施行され、再現性やブロックによる疼痛軽減効果を確認した。JOA scoreは術前16.1点が、術後25.2点に改善した。

【考察】X線写真の変性性変化およびMRI上の変性所見が1椎間病変に対する手術的治療の有効性は高いが、2椎間病変以上の症例では、責任椎間の特定に慎重である必要がある。

8.野球選手における腰椎終末期分離と椎間板変性 −頻度と腰痛による競技離脱に関する検討−

 

福島県立医科大学医学部 整形外科

 

加藤 欽志(かとう きんし)、大歳 憲一、矢吹 省司、大谷 晃司、二階堂 琢也、渡邉 和之、小林 洋、菊地 臣一、紺野 愼一

 

【目的】プロ野球選手を対象に、終末期分離と椎間板変性の有無と腰痛による競技離脱の関連について比較検討すること。

【方法】対象は、プロ野球選手33名(投手15名、野手18名、平均年齢 25.0歳)である。全例で腰椎CTとMRIを撮像した。終末期分離、椎間板変性(Pfirrmann分類 grade 3以上)の有無を評価した。腰痛による1週間以上の競技離脱の有無を目的変数とし、終末期分離と椎間板変性の有無を説明変数として、ロジスティック回帰分析を行った。

【結果】終末期分離は33名中7名(21.2%)、椎間板変性は16名(48.4%)に認められた。腰痛による競技離脱に関わる危険因子としては、終末期分離はオッズ比 1.4倍(95%信頼区間 0.22-9.33, p=0.73)、椎間板変性はオッズ比 5.2倍(95%信頼区間 1.24-25.2, p=0.024)であった。

【考察】本研究の結果から、プロ野球選手では、終末期分離よりも椎間板変性の存在が、腰痛による競技離脱の有意なリスク因子である可能性が示唆された。

9.腰椎単椎間TLIF術後の傍脊柱筋変性と腰痛の関係について−同一術者に於けるMIS-TLIFとOpen TLIFの比較−

 

大分整形外科病院


中山 美数(なかやま よしかず)、大田 秀樹、松本 佳之、井口 洋平、巽 政人、瀧井 穣、木田 浩隆、竹光 義治

 

【目的】Instrumentationを用いた腰椎後方手術後に腰部不快感(腰痛と称する)を呈する患者がいる。MIS-TLIFでは腰痛が減少するという報告もある。同一術者におけるMIS-TLIFとOpen TLIFの比較を行い傍脊柱筋変性と腰痛の関係について検討した。

【対象および方法】腰椎単椎間のTLIFで術後6か月以上経過した症例でMIS-TLIF(M群)13例、Open TLIF(O群)11例であった。腰痛の評価法としてはJOABPEQ、ODI、VAS、傍脊柱筋の評価法としては藤田の評価法を、萎縮度は多裂筋面積を測定して行い評価した。

【結果】術前傍脊柱筋変性を有する症例はなかった。術後はM群にて傍脊柱筋の委縮領域と変性は少ない傾向にあったが腰痛はO群と差はなかった。

【考察】M群に傍脊柱筋の委縮領域と変性が少ない理由に傍脊柱筋の圧排が軽度でpedicle screw時のdenervationが少ないことが挙げられる。

【結語】MIS-TLIFにて傍脊柱筋の委縮と変性は少ない傾向があった。

10.Modic changeが腰痛に与える影響−腰椎単椎間TLIF例での検討−

 

大分整形外科病院

 

瀧井 穣(たきい ゆたか)、大田 秀樹、松本 佳之、中山 美数、井口 洋平、巽 政人、木田 浩隆、竹光 義治

 

【目的】MRIでのModic change(MC)と腰痛は相関すると言われている。腰椎単椎間TLIFを調査しMCの腰痛に対する関与につき検討した。

【対象】腰椎変性疾患に対してL4/5 TLIFを行った症例を術前MC有り群(MC+群)と無し群(MC-群)に分け、術前の腰痛、術後の改善度、骨癒合を検討した。症例は46例(MC+群19例、MC-群27例)。腰痛の判定はJOA、VASにて判定した。

【結果】術前腰痛はMC+群がJOA 1.26点、VAS 5.88点。MC-群でJOA 1.17点、VAS 5.67点。術後はMC+群がJOA 2.58点、VAS 1.00点。MC-群でJOA 2.26点、VAS 1.30点。骨癒合率はMC+群89.5%骨癒合、MC-群で80.9%であり何れも有意差は無かった。

【考察】腰痛の原因は多岐にわたるためMCのみでは語れない。今後その他の因子、MCのタイプによる関与等を検討したい。

【結語】MC単独の画像所見が腰痛を起こす指標とは言い切れなかった。

11.高齢者腰椎変性側弯症に伴う腰痛と骨髄浮腫の関連性

 

JA広島総合病院 整形外科 脊椎・脊髄センター

 

中前 稔生(なかまえ としお)、藤本 吉範、山田 清貴、平松 武、橋本 貴士、鈴木 修身、土川 雄司

 

【目的】高齢者の腰椎変性側弯症 (DLS)における腰痛と椎体終板周囲の骨髄浮腫(BME)の関連について検討することである。

【方法】65歳以上でCobb角10°以上のde novo DLSを対象とした。腰痛のある群とない群を比較し腰痛とMRIにおけるBMEとの関連性、および腰痛関連因子について検討した。

【結果】腰痛群は64例、対照群は56例であり両群間で年齢、性別、BMI、Cobb角、椎間腔内バキューム、側弯カーブの左右差、終板骨硬化の頻度に有意差を認めなかった。椎間腔内バキューム、椎体終板骨硬化、BMEは側弯凹側部に有意に出現した。BME陽性率は腰痛群で96.9%、対照群で37.5%であり、腰痛群でBME陽性率が有意に高かった。圧痛の陽性率は腰痛群81.3%、対照群7.1%であり、腰痛群で高かった。ロジスティック回帰分析では腰痛に関与する因子はBMEのオッズ比が最も高かった。

【結論】高齢者DLSにおける側弯凹側部のBMEと腰痛は関連がある。

12.高齢者腰椎変性側弯症の腰痛に対するターゲット療法

 

JA広島総合病院 整形外科 脊椎・脊髄センター

 

山田 清貴(やまだ きよたか)、藤本 吉範、中前 稔生,平松 武、橋本 貴士、鈴木 修身、土川 雄司 

 

【目的】高齢者腰椎変性側弯症(DLS)に伴う慢性腰痛に対し、MRIにて骨髄浮腫を認める椎間に経皮・経椎弓根的に骨セメントを椎間バキューム内に注入する手術(percutaneous intervertebral-vacuum PMMA injection、PIPI)を施行している。本法と保存療法の治療成績を比較検討した。

【対象・方法】2004年から2011年に当科で加療した65歳以上、Cobb角10度以上のde novo DLSを対象とした。PIPI群109例(平均77歳)と保存療法群53例(平均77歳)に対し、治療開始から2年間のVAS、ODI、MRI上の骨髄浮腫の変化を比較した。

【結果】VAS、ODIともPIPI群では術後2年間有意に改善したが、保存療法群では改善しなかった。骨髄浮腫はPIPI群では経時的に縮小しVAS、ODIと相関していたが、保存療法群では縮小しなかった。

【結論】骨髄浮腫は慢性腰痛の要因の一つであり、骨髄浮腫をターゲットとしたPIPIは、高齢者DLS腰痛例に有用な低侵襲手術である。

13.椎体終板障害高位に限定した腰椎後方椎体間固定術の治療成績

 

JA広島総合病院 整形外科

 

平松 武(ひらまつ たけし)、藤本 吉範、山田 清貴、中前 稔生、鈴木 修身、橋本 貴士、土川 雄二

 

【目的】腰痛を主訴とする腰椎変性側弯症(degenerative lumbar scoliosis: DLS)に対し、椎体終板障害高位に限定した後方椎体間固定術の治療成績を報告し、腰痛の病態を検討すること。

【対象と方法】DLSでMRI T1脂肪抑制造影像、T2脂肪抑制像にて側弯凹側の終板周囲に骨髄浮腫性変化を認め、同部位に再現性のある圧痛を認める症例に、椎体終板障害高位に限定した椎体間固定術を施行した。臨床評価として、腰痛の強度をVAS、機能評価をODIを用いて評価した。

【結果】DLS 11例(男性7例、女性4例、平均年齢61才)に手術を施行した。罹病期間は平均51か月、固定椎間は平均2椎間、術後平均経過観察期間は10か月であった。VAS、ODIは術前平均75mm、46%が術後22mm、26%と改善した。

【考察】DLSの椎体終板障害高位に限定した椎体間固定術を施行し、腰痛および活動性が改善したことは、椎体終板周囲の骨髄浮腫性変化がDLSの腰痛の病態に関連していることが示唆された。