第85回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題3) |
14.勤労者の腰痛における職種別特徴
中村 英一郎(なかむら えいいちろう)、山根 宏敏、邑本 哲平、竹内 慶法、 酒井 昭典
勤労者において非特異的腰痛は特異的腰痛より多くみられる。本研究では、職種別で腰痛発症に生活習慣要因関与の相違があるか否か検討した。 【対象と方法】某企業の定期健康診断データを用いて横断調査を行った。対象は16歳〜65歳までの勤労者4,950人。調査項目は、職種の他、性別、年齢、作業姿勢、喫煙、飲酒、BMI、運動習慣、残業時間、睡眠時間である。腰痛の定義は、健診前一ヶ月間での腰痛の有無とした。 【結果】設計職11,303名では、腰痛に有意に関連する因子は、年齢、女性、長い残業時間、喫煙、運動不足であった。一方、管理・事務職5,703名では、年齢、BMI(肥満)と喫煙が関与する因子であった。また、製造職11,369名中、立位作業者、動く作業者の6,236名では、年齢以外関連はなかった。 【考察】設計職において生活習慣要因の関与が大きかった。特に長い残業時間がOdds 1.57と高く、座位での長時間勤務とともに慢性的な運動不足すなわちDisuseが背景にあると考えられた。 |
15.整形外科医による非特異性腰痛の診断
山口大学大学院 医学系研究科 整形外科学
鈴木 秀典(すずき ひでのり)、寒竹 司、今城 靖明、西田 周泰、舩場 真裕、田口 敏彦
【はじめに】腰痛症のうち85%は「非特異性腰痛」と報告されているが、整形外科医が主に腰痛症の診断・治療行う、我が国における診療体制はずいぶん異なる状況にある。山口県臨床外科医会のご協力のもと、山口県内の整形外科クリニックを受診する腰痛症患者の実態調査を行ったので、その結果を示す。 【対象と方法】2015年4月〜5月に、山口県の整形外科医院を初診された腰痛症患者323例を対象とした。対象患者は男性160例、女性163例で、平均年齢は55.7才(20-80)、であった。腰痛の定義は、腰部の疼痛、不快感、硬さ、違和感などを有するものとした。腰痛の診断を詳細な診察、身体所見により行うとともに、確定診断を局麻によるブロックで施行した。 【結果と考察】重大な脊椎疾患である腰痛は21%であり、従来の報告と同様の割合であった。また腰痛症患者のうち78%は正確な診断が可能であり、従来の海外からの報告とは異なる結果であった。 |
*16.急性腰痛で発症した胸椎硬膜外くも膜嚢腫の治療経験
徳島市民病院 整形外科
【目的】突然強い腰痛を訴え、画像検査にて胸椎Th11-12後方に嚢腫を認めたため、嚢腫摘出術と椎弓切除術による除圧術を経験したので報告する。 【症例】34歳女性、腰痛の既往があったが、朝食を摂っているときに急に腰痛を訴え前医に救急搬送された。運動麻痺や知覚障害は認めず、画像検査にてTh11,12に嚢腫を認めた。 【方法】手術は、Th11,12椎弓を切除。嚢胞は硬膜外後方Th11からL1にかけて存在し、これを被膜辺縁で愛護的に剥離したが癒着は見られなかった。Th12,L1椎間孔入口部付近に径1mmほどで硬膜管と交通する茎を認めたため3-0絹糸で結紮して切離し嚢胞を摘出した。病理診断では結合組織が主体でarachnoid cellsとしても矛盾はしない、との結果であった。 【結果】術後1日目に軟性コルセット装着、術後2日目より立位・歩行訓練開始した。 術後深部感染、硬膜外血腫など術後合併症なく、術後1カ月で自宅退院となった。 |
*17.手術治療を行ったBertolotti症候群の一例
JCHO宇和島病院 整形外科
河野 宗平(こうの そうへい)、藤田 勝、日野 雅之、友澤 翔、渡辺 昌平、富永 康浩、藤井 充、松田 芳郎
Bertolotti症候群とは最尾側腰椎の横突起幅が拡大し仙骨あるいは腸骨と関節を形成している移行椎がある症例に腰背部痛に生じる症候群であるが、手術治療を行ったBertolotti症候群を経験したので文献的考察を加え報告する。 症例は17歳女性で座位、立位時の腰痛を認め短距離走の陸上競技も困難となり受診した。 腰椎伸展時に増強する腰痛をみとめ、明らかな神経所見は認めなかった。単純X線像、CTにてCastellvi分類TypeUAの移行椎を認めた。軟性コルセットによる保存的加療は効果なく、関節形成部に透視下にブロックを行うと腰痛の改善が得られるが一時的であった為、関節形成部を手術的に切除した。切除後、腰痛の改善が得られ再発は認めていない。 若年者の腰痛患者を診察するにあたり、この病態も鑑別診断の一つに入れる必要がある。 |
*18.腰痛を主訴として来院した腰椎後方要素の骨癒合を伴う骨化性クモ膜炎の一例
大分整形外科病院
巽 政人(たつみ まさと)、大田 秀樹、松本 佳之、中山 美数、井口 洋平、瀧井 穣、木田 浩隆、竹光 義治
【目的】極めてまれな腰椎後方要素の骨癒合を合併した骨化性クモ膜炎の一例を経験したので報告する。 【症例】76歳、女性。10年前に誘因なく腰痛、下肢痛出現したが、自然軽快した。平成27年12月、腰痛、両臀部痛出現し、夜間痛が強かった。発熱等なかったが、CRPが2.77と炎症を疑わせた。レントゲン、CT、MRIにてL3-5の後方要素は骨癒合し、L4/5以下のクモ膜は骨化していた。特に治療することなく、疼痛は改善し、CRPも0.05以下となった。 【考察】骨化性クモ膜炎は外傷、手術、脊髄造影などが誘因となり、癒着性クモ膜炎の終末像とも言われる。本症例はそのような既往がなく、特発性と考えられる。特異であったことは腰椎後方要素が骨癒合していることである。また、CRPの変化と臨床症状が同期しており、クモ膜炎の寛解増悪が生じている可能性もある。文献的考察を含めて報告する。 【結語】極めて稀な腰椎骨化性クモ膜炎の一例を経験した。クモ膜の炎症も腰痛の原因になり得ると思われた。 |
*19.SAPHO症候群を疑われた類骨骨種の1例
岡山大学大学院 医師薬学総合研究科 生体機能再生・再建学講座
小田 孔明(おだ よしあき )、杉本 佳久、荒瀧 慎也、瀧川 朋亨、田中 雅人、尾ア 敏文
【はじめに】類骨骨種は腰痛を来す疾患として鑑別疾患に挙がるが、診断に至るまで長時間を要す例もみられる。当科でも別疾患による腰痛と紹介され、類骨骨種の診断に至った例を経験した。 【症例】症例は26歳男性、当科受診の2年前から腰痛を自覚し、当科受診の5カ月前に他院でCTとMRI所見からSAPHO症候群を疑われた。しかし腰痛改善が乏しく当科紹介となった。検査結果を見直したところSAPHO症候群に伴う皮膚疾患の既往、CRP上昇を認めず、第3腰椎椎体にMRIでT2強調像では骨髄浮腫と思われるHigh intensity内に low intensityの信号変化を認め、CTでL3椎体にnidusを認め類骨骨種の診断に至った。加療は放射線科にコンサルトしラジオ波焼灼術を依頼し、治療後腰痛は速やかに消失した。術後2年9カ月経過したが再発はみられない。 【結語】類骨骨種は比較的若年者に多く夜間痛が特徴とされる。若年者に発生し安静時腰痛を来す疾患には本症例のように脊椎炎も含まれる。両者は注意深く鑑別する必要があると考えられた。 。 |
20.腰椎疾患として治療されていた脊髄腫瘍の4例
公益社団法人鹿児島共済会南風病院
山下 芳隆(やました よしたか)、川内 義久、富村 奈津子
【はじめに】腰椎疾患と診断されていた脊髄腫瘍を4例報告する。 【症例】@72歳女性:9ヶ月前両足のしびれ感出現し近医受診、腰部脊柱管狭窄症(以下LCS)と診断され手術を受けたが、症状改善せず当院受診した。初診時臍部以下のしびれ感あり、MRIでTh10高位に硬膜内髄外腫瘍を認めた。A58歳男性:3年前左下肢のしびれ感出現し近医受診、第5腰椎分離症と診断され治療受けたが、徐々に症状悪化し当院初診した。初診時四肢のしびれ感、筋力低下あり、歩行困難であった。MRIでC6高位に硬膜内髄外腫瘍を認めた。B71歳女性:1年半前両下肢痛、しびれ感、間欠性跛行出現、近医でLCSと診断され、治療受けたが、徐々に症状悪化し紹介され当院放射線科で腰椎MRI撮影したが特に異常なく、神経内科で精査受け、Th9/10高位の硬膜内髄外腫瘍を指摘された。C87歳女性: 3ヶ月前左下肢のしびれ感、筋力低下出現、近医でLCSと診断され、治療受けたが、徐々に症状悪化、歩行困難になり紹介され当院放射線科で腰椎MRI撮影し、Th12高位に硬膜内髄外腫瘍を認めた。 。 |