第85回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題6) |
35.骨粗鬆性椎体骨折に対する保存的治療のピットホール
後藤 雅史(ごとう まさふみ)、山田 圭、佐藤 公昭、井上 英豪、横須賀 公章、佐々木 威治、井手 洋平、溝上 健次、松原 庸勝、永田 見生、志波 直人
【目的】骨粗鬆症性椎体骨折は神経症状がなければ保存的治療の適応であるが、経過中に遅発性神経麻痺を生じ治療方針の変更が必要になることもある。今回、遅発性麻痺を来した症例の画像所見について検討したので報告する。 【対象と方法】2009年1月から2016年2月までの間に骨粗鬆症椎体骨折の診断で手術を施行した45例(男14例、女31例)について後ろ向きに調査を行った。 【結果】45例中遅発性麻痺で手術(除圧固定術)となった症例は19例(男4例、女15例)であった。そのうち、17例は罹患椎体の圧潰そのものが麻痺の主な原因と考えられたが、残りの2例はそれ以外の原因(後弯変形や罹患椎体より上位の骨化黄色靭帯)が強く疑われた。 【考察および結語】通常、罹患椎体の形態変化やそれに伴う脊椎の配列異常が遅発性麻痺の原因と判断されるが、他の病変が原因となることもあるので画像所見を経時的に判断する必要がある。 |
36.後壁損傷を伴った椎体骨折に対するBKPの限界
広島赤十字・原爆病院 整形外科
柳澤 義和(やなぎさわ よしかず)、野村 裕、高野 祐護、田中 孝幸、有馬 準一
経皮的椎体形成術(以下、BKP)は後壁損傷のある椎体骨折に対して原則禁忌であるが、当科では合併症治療で早期の除痛と通院が必要となる場合に限ってBKPを行っている。これらの治療短期成績について検討した。 対象は2014年8月以降、後壁損傷例に対してBKPやMD+BKP(除圧術後にBKPを追加)を施行した7症例(男: 3例、女: 4例)で、平均年齢は74.1歳、骨粗鬆性破裂骨折: 5例、転移性脊椎腫瘍: 2例であった。主訴は腰痛のみ: 2例、腰痛+臀部・下肢痛: 4例、腰痛+両下肢麻痺: 1例であった。手術は術中神経モニタリング下にBKP:4例、MD+BKP: 3例を施行。術前後壁骨片の脊柱管内占拠率、椎体外セメント漏出、術中神経モニタリング所見、術後経過などを評価した。 後壁骨片占拠率は平均31.2%であった。椎体外セメント漏出を4例に認め、転移性脊椎腫瘍症例の2例は脊柱管内漏出であった。そのうち1例でモニタリング上、異常波形を認めた。術後経過は全例、体動時腰痛は改善するも、麻痺症例は改善しなかった。 BKPは低侵襲であるが、特に転移性脊椎腫瘍に対しては限界があると考えられた。 |
37.MEP単独モニター下の脊柱変形矯正手術におけるfalse negative症例
恒心会おぐら病院 整形外科、 鹿児島大学 整形外科、 鹿児島大学 保健学科
経頭蓋刺激筋誘発電位(BrE-MSEP、以下MEP)は、脊椎脊髄手術において脊髄モニタリングの第一選択として推奨されている。今回MEP単独モニター下に施行した脊柱変形矯正手術におけるfalse negative例について検討した。 2006年から2014年3月まで、MEPモニタリング下に脊柱変形矯正手術を施行し、術後1年以上経過観察した140件中、術中MEPの電位変化を認めないにもかかわらず、術後に神経麻痺を生じたのは4件であった。脊髄性の知覚障害(アロディニア)が1件、神経根性の運動および知覚障害が3件であった。全例で完全に改善したが、4例中3例で術後入院期間が遷延し、投薬や理学療法を要した。 MEPは脊髄運動路のモニタリングとして感度特異度ともに高いが、単根性の障害や脊髄性知覚障害は同定できない可能性もあり、術式や手術高位に応じ脊髄知覚路や筋電図モニターの併用を考慮すべきである。 |
38.脊柱後弯症に対する後弯矯正術の術後腰痛およびADL改善の中期成績
大分整形外科病院
井口 洋平(いぐち ようへい)、大田 秀樹、松本 佳之、中山 美数、巽 政人、瀧井 穣、木田 浩隆、竹光 義治
【はじめに】後弯矯正の術後に腰痛およびADLで満足度が得られているか調査し、問題点を検討した。 【対象】2013年2月から2015年3月までに脊柱後弯症に対し骨盤を含む矯正固定を行い、1年以上経過観察可能であった14例(フォローアップ率93%)を対象とした。全例女性、手術時平均年齢は69.1歳、術後経過観察期間は平均20.9ヶ月であった。 【方法】固定範囲、PI-LL値、固定上端の問題としてscrew looseningとPJKの有無、固定下端の問題としてS1 screw looseningと腸骨スクリューのゆるみ、術前と最終経過観察時のOswestry disability index (ODI) 、腰痛VASを調査した。 【結果】固定上位端はTh3が2例、頂椎を超えない中下位胸椎が12例であった。 最終PI-LLは平均9.4度±6.6で概ね矯正良好であった。固定上端の問題は、screw looseningを4例、固定上位端の骨折を3例にみとめた。固定下端の問題は、S1 screw looseningを4例にみとめた。 全体ではODIは術前平均 45%から術後平均32 % 、腰痛VASは術前平均6.6から術後平均3.1 へと有意差をもって改善した。 成績不良因子として、PI-LL値<9、上位固定端障害の有無、下位固定端障害の有無でそれぞれを2群間に分け、ODI、腰痛VASに有意差が出るか検討したがいずれも統計学的な有意差は見られなかった。 |
39.胸腰椎骨折に対する側方進入による椎体置換
高知医療センター 整形外科
林 隆宏(はやし たかひろ)
当科では2015年8月から前方支柱再建が必要な腰椎破裂骨折と偽関節に対してX coreを用いた椎体置換を行っている。 対象は39歳から71歳までの5症例(男3 女2)であった。疾患は破裂骨折が3例、圧迫骨折後の偽関節が2例であった。X coreによる椎体置換と椎弓根スクリューによる後側方固定を行った。手術症例の、手術時間、出血量、合併症、離床までの期間、腰痛が自制内となるまでの期間、術前術後の置換椎体の高さ、腰椎前弯について検討した。 手術時間は平均359分、出血量は平均396ml、術後感染や大血管、腸管損傷など重篤な合併症は認めなかった。離床までの期間は平均4.4日、腰痛自制内までの期間は平均5.8日であった。術後、置換椎体の高さは増加していたが、一部の症例でケージがシンキングしていた。術後の腰椎前弯も増加していた。 今回の検討では、出血量は1000ml以下であり、重篤な合併症も生じておらず、離床までの期間も平均4.4日と短期間で離床できていた。X coreによる椎体置換は低侵襲と思われた。 |
40.当院におけるLLIFの術後合併症の検討
長崎労災病院 整形外科
平田 寛人(ひらた ひろひと)、奥平 毅、山田 晋司、横田 和明、山口 貴之、馬場 秀夫、小西 宏昭
【はじめに】近年LLIFが普及しつつある。側方アプローチによる固有の合併症の報告も散見されており、今回我々は当院でのOLIF症例の合併症について検討を行った。 【対象と方法】2014年3月から2015年9月においてOLIFを施行し半年以上経過観察可能であった38例(男性24例、女性14例、平均年齢62歳、平均経過観察期間11か月)を対象とし周術期合併症につき評価を行った。 【結果】胸膜・腹膜損傷2例、血管損傷2例(腸腰静脈1例、分節動脈1例)、左大腿一過性筋力低下1例、左会陰部のしびれ・疼痛2例に認めた。後方の浅層感染を1例に認めた。腹部臓器損傷はなかった。手術後レントゲン像で終板損傷を15例(44%)に認め、最終フォロー時CageのSinkingを8例(21%)に認めた。 【考察】側方アプローチに伴う重篤な合併症は認めなかったが、Cage挿入時の終板損傷などの合併症を多く認めており、適応高位や適切なCage高の選択が肝要と考えられた。今後は長期での隣接椎間障害や骨癒合率など検討すべきと考えられた。 |