第86回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題4) |
21.後壁損傷を伴う胸腰椎移行部OVFに対するBKPの経験
村田英明(むらた ひであき)、池尻好聰、蒲池祐紀、小林知弘
【目的】胸腰椎移行部の骨粗鬆性脊椎椎体骨折(OVF)は重度骨粗鬆症と内科合併症を抱える高齢者が多いため、保存的治療しか選択肢がなく、治療に難渋してきた。特に後壁損傷を伴うOVFは椎体不安定性が著明で、偽関節発生や局所後弯変形を来す症例が多い。我々はこれらのOVFに対して発症早期にBKPを行ってきた。その術後成績と治療の妥当性について検討する。 【方法・対象】2014年6月から2016年5月までの胸腰椎移行部に発症したOVFにBKPをおこなった症例の中から、術前CTで明らかに後壁損傷を認めた症例を対象とした。本症例のうち3ヶ月以上追跡調査出来た100例を対象とした。平均年齢82歳(61〜93歳)で女性89例、男性11例であった。術後3ヶ月でCT検査およびX−P撮影は立位側面像と仰臥位側面像で椎体不安定性およびセメント安定性評価を行った。 【結果】手術時間は平均20分(15〜46分)で、挿入セメント量は平均7.0ccだった。ほぼ全例で疼痛および椎体不安定性は消失していた。 |
22.胸腰椎移行部における骨粗鬆症性椎体骨折に伴う遅発性神経障害に対する経皮的椎体形成術
JA広島総合病院 整形外科 脊椎・脊髄センター
中前稔生(なかまえ としお)、藤本吉範、山田清貴、平松 武、橋本貴士、鈴木修身、土川雄司
【目的】胸腰椎移行部の骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)に伴う遅発性神経障害(DND)に対する経皮的椎体形成術(PVP)の治療成績を検討することである。 【方法】2004年から2010年までに椎体内クレフトを伴うOVFに対しPVPを施行した291例中、胸腰椎移行部でDNDを認めた24例を検討した。VAS、ODI、椎体不安定性、椎体後壁の脊柱管占拠率を検討した。 【結果】平均年齢78.1歳、術後経過観察期間は21.2か月であった。術前に運動障害を11例、姿勢性の下肢痛やしびれを13例認めた。運動障害を認めた11例中9例はT12の骨折であり、6例で下垂足を認めた。VAS、ODIは術前8.0、71.8%が最終経過観察時に2.2、37.1% へと有意に改善した。麻痺は術後1か月から改善を認めた。椎体不安定性は術前10.5°から術後1か月2.7°と有意に改善したが、脊柱管占拠率は術前44.5%から術後1か月44.1%と変化を認めなかった。 【考察】胸腰椎移行部のOVFに伴うDNDに対してPVPは有用であった。 |
23.骨粗鬆症性椎体骨折に対しLIF corpectomyを行った手術症例の検討
重工記念長崎病院*1、長崎大学病院*2
【はじめに】骨粗鬆症性椎体骨折は、しばしば椎体圧壊や偽関節を生じ麻痺や強い疼痛を来す。我々は後腎傍腔アプローチ椎体置換術(LIF corpectomy)を併用した前後方固定術を行っている。 【対象と方法】2014年4月から2016年3月に当院および関連施設でLIF corpectomyを併用し前後方固定術を行った12例(男性3例、女性9例、平均年齢は80.0歳)について調査を行った。2015年4月までの4例は自家腸骨、それ以降の8例ではX-coreRを使用した。 【結果】罹患椎体はTh12が6例と最多であった。術前は疼痛や麻痺のため全例で歩行困難であったが、11例で歩行が可能となった。VAS平均値は術前8.8であったが術後2.2と有意な改善をみとめた。(p<0.05)平均手術時間は314.3分、平均出血量は293.2mlであった。 【考察】LLIFの普及に伴い侵襲の小さな前方固定術が可能となった。高齢者に対して従来法よりも安全な前後方固定術ができ良好な治療成績が得られる可能性が示唆された。 |
24.胸腰椎移行部の骨粗鬆症性椎体骨折に対する各種脊柱再建術の比較
下関市立市民病院 整形外科
有隅晋吉(ありすみ しんきち)、山下彰久、渡邊也、白澤建藏
【目的】胸腰椎移行部の骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)に対する各種脊柱再建術の手術侵襲や成績を比較検討し、各術式の適応や問題点を明らかにする。 【方法】対象は2013年1月から2016年7月まで当院で施行したTh11〜L2までのOVFに対する脊柱再建術35例(男性16例、女性19例)。手術時平均年齢は78.9歳(71〜90)。経過観察期間は平均12.9ヶ月(1〜36)。術式は低侵襲側方椎体切除(X-coreR2cage使用)+経皮的椎弓根スクリュウ(LIF群):7例、後方椎体切除(VCR群):5例、椎体形成+後方固定(VP群):23例(オープン8例、PPS15例)であった。手術時間、出血量、麻痺の改善、局所後弯角、固定隣接椎間障害、合併症、再手術等を評価した。 【結果】LIF群は平均出血量が131gと最も少なかった。全例で腰痛の改善と、麻痺あり(12例)では麻痺の改善が得られた。局所後弯の矯正損失はLIF群で1.9度と有意に少なかった。VP群では矯正損失とPSの緩みが多かった。固定隣接椎の骨折はVCR群とVP群で散見された。 【結論】脊柱再建術の中でLIFが最も低侵襲で安定性を付与しうる術式である可能性が示唆された。本骨折に対する術式選択の一助となるよう、各術式の適応や問題点に関して議論する。 |
25.骨粗鬆症性椎体骨折の保存治療において近接する椎体癒合の存在が骨折部癒合に与える影響
戸畑共立病院 整形外科*1、産業医科大学 整形外科*2、
清水建詞(しみず けんじ)*1、大友 一*1、大茂壽久*1、濱田賢治*1、長島加代子*1、新城安原*1、佐保 明*1、田原尚直*1、中村英一郎*2
【緒言】骨粗鬆症性椎体骨折において骨折椎体の近傍に存在する部分的椎体癒合が骨折部の癒合を阻害するか否かについて調べたので報告する。 【方法】対象は2008年〜2015年3月までに当院に入院した胸椎・胸腰椎移行部の骨粗鬆症性椎体骨折のうち保存治療を行い、6ヶ月以上フォローできた83例(男12例、女71例)である。年齢は平均81歳(60〜101歳)、観察期間は平均12.8ヶ月である。保存治療は原則として半硬性コルセットを3ヶ月以上装着した。癒合判定は6ヶ月以降の単純X線座位および仰臥位側面像にて骨折部の不安定性を認めるものを癒合不全、認めないものを骨癒合と判定した。隣接椎体の椎間癒合を認めるU群と認めないN群とに分け、骨折部癒合不全の割合について2群間でカイ二乗検定を行った。 【結果】U群14例、N群69例であり、U群の内訳は既存椎体骨折後の架橋形成7例、ASH4例、骨棘の癒合3例であった。骨折部癒合不全の割合はU群14例中5例(36%)、N群69例中12例(17%)であり有意差を認めなかった。 |