第86回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題5)

26.高齢者(65歳以上)の胸腰椎移行部破裂骨折に対する後方固定術


聖マリア病院  

 

神保幸太郎(じんぼ こうたろう)

 

【背景】高齢者は骨粗鬆症を伴うためPedicle screw(以下PS)の固定性が不十分で術後矯正損失しやすいという問題点がある。

【目的】高齢者(65歳以上)の胸腰椎移行部破裂骨折に対する後方固定術の治療成績を評価し、損傷の程度に応じた術式を検討。

【術式】PSのみで後方2椎間固定したPS群、上記に加え損傷椎にもscrewを挿入した損傷椎S群、Hookを併用したHook群の3種類の術式を使い分けた。

【対象】2009〜2015年に1椎体の胸腰椎移行部破裂骨折に対し手術し、6か月以上経過観察した34例(PS群14例、損傷椎S群9例、Hook群11例)。性別はPS群:男性7例、女性7例、損傷椎S群:男性6例、女性3例、Hook群:男性2例、女性9例、平均年齢はPS群69.8歳、損傷椎S群71.7歳、Hook群72歳。

【結果】平均矯正損失はPS群が7.5°、損傷椎S群が8.7°、Hook群が4.5°。Hook群はLSC:7、8点の高度損傷に対しても矯正損失が少なかった。

27.胸腰椎移行部疾患に対して胸腔鏡下前方固定術(VATS)と最小侵襲固定術(MISt)を併用した脊柱再建の有用性

 

川崎医科大学附属病院 脊椎災害整形外科 

 

内野和也(うちの かずや)、中西一夫、加納健司、射場英明、長谷川 徹

 

【はじめに】近年、高齢者の骨粗鬆症やDISHに伴う圧迫骨折後偽関節の治療に難渋する事がある。前方再建が必要な場合があり、高齢者に開胸手術は様々な合併症や早期離床が困難な事がある。今回、前方再建はVATSで、後方固定はMIStを併用し手術を行ったのでその有用性について報告する。

【対象】2012年9月から2016年6月までに手術を行った8例で、平均年齢は77歳、男性3例女性5例。疾患の内訳は、全例圧迫骨折後偽関節で、そのうち3例は椎体形成後のセメント脱転による矯正損失例で、5例はDISHを伴う偽関節例であった。一期的に行った症例は5例、二期的に行った症例は3例であった。

【結果】平均手術時間は前方165分、後方112分、出血量は前方140g、後方87gであった。術後胸腔ドレーンは2日で抜去し、その後離床を許可した。平均離床期間は4.6日で、周術期合併症は3例に認めた。合併症の内訳は、誤嚥性肺炎(VATS侵入側反対側)が2例、直腸潰瘍が2例あったが、術後成績には影響なかった。

【考察】従来の開胸法と異なり、胸腔鏡下手術は肋骨切除を必要とせず、早期離床が可能で、低侵襲な手術である。今後慎重な経過観察が必要であるが、片肺換気が可能な高齢者に有用な方法の1つである。

29.胸腰椎破裂骨折に対する経皮的後方固定術の検討

 

宮崎大学医学部整形外科


比嘉 聖(ひが きよし)、濱中秀昭、永井琢哉、川野啓介、李 徳哲、帖佐悦男

 

【目的】胸腰椎破裂骨折に対し経皮的後方固定を行った18例についてOPENで後方固定を行った群と比較し報告する。

【方法】2012年8月から2015年8月の間に当院に搬送された胸腰椎破裂骨折に対し経皮的椎弓根スクリュー(PPS)を使用し後方固定を施行した18例において手術時間・出血量・局所後弯の矯正損失・椎間関節の骨癒合の有無・合併症に関してOPEN群と比較した。

【結果】PPS群は平均年齢46.3歳で男性12例女性6例である。PPS群の手術時間は有意に短く出血量も少なかった。術後の局所後弯角は改善していたが最終観察時には平均3.2度の矯正損失を認め有意差は見られなかった。17例で椎間関節の癒合はなくmotion segmentは温存されていた。

【考察】PPS使用の後方固定は手術時間短縮や出血量を減らすことができ、椎間関節を温存することができる。長期的には椎間関節の変性が進行し後弯変形が進行するとの報告もあるため注意深く経過観察する必要がある。

【結論】PPS使用の後方固定は低侵襲で有用な選択肢の一つであるが矯正損失防止のため椎体形成の併用や局所後弯を修復するデバイスの使用などさらなる工夫も必要である。

30.脊髄損傷患者に対する歩行補助ロボットWPALRによる歩行訓練

 

総合せき損センター  整形外科*1、リハビリテーション部*2

 

林 哲生(はやし てつお)*1、須堯 敦*2、古賀隆一郎*2、本田佑也*2、河野 修*1、坂井宏旭*1、前田 健*1、植田尊善*1、芝 啓一郎*1

 

ロボット技術の分野は、我が国の新たな成長戦略であり、医療・福祉分野における発展は目覚ましいものがある。WPAL(Wearable Power-Assist Locomotor)Rは、脊髄損傷の完全麻痺者に対する歩行支援の為の歩行補助ロボットであり、今回、脊髄損傷患者の2例に対して、WPALを用いた歩行訓練を行ったので報告する。

症例1:32歳、男性。

第9胸椎脱臼骨折による脊髄損傷でASIA impairment scale A。受傷後8か月よりWPAL開始した。6分間歩行時のPhysiological Cost Index(PCI)は長下肢装具18.0に対してWPALは0.3であった。

症例2:26歳、男性。

第11胸椎脱臼骨折による脊髄損傷でASIA impairment scale A。受傷後6か月よりWPAL開始した。6分間歩行時のPCIは装具歩行で8.4に対してWPALでは0.7であった。 WPALは長下肢装具と比べ、単位歩行距離当たりのエネルギー消費が低く、歩行効率が良好であった。