第86回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題6)

31.当院における胸椎症性胸髄症の除圧術の治療成績


JCHO宇和島病院 整形外科

 

河野宗平(こうの そうへい)、藤田 勝、渡部昌平、冨永康浩、藤井 充、松田芳郎、友澤 翔

 

【目的】当院で経験した胸椎症性胸髄症における除圧術の治療成績について検討したので報告する。

【方法】2003年から2015年までに当院で除圧手術を行なった胸椎症性脊髄症28例 平均年齢:73.6歳(男性19例、女性9例)術後平均経過観察期間:25ヶ月 罹患高位:Th8/9:3例、Th9/10:1例、Th10/11:19例、Th11/12:9例、Th12/L1:1例 以上を対象に術後成績(頚髄症JOA、上肢を除く11点満点とその改善率)、除圧部の局所後弯角を調査し年齢、性別、最狭窄部位、椎弓切除数の因子で比較検討した。

【結果】全症例における平均JOAは術前4.6点、術後7.5点と改善をみとめたが、若年群15例(≦75 歳)と高齢群13例(>75歳)を比較すると術後JOA(若年群8.1±1.4点、高齢群6.9±1.6点)、JOA 改善率(若年群50±29%、高齢群34±25%)に有意差(P<0.05)を認めた。 術後局所後弯は平均2.3°増加(0〜4.2°)していたが術後JOAとの関連はなかった。

32.胸腰椎疾患に対する手術方法の変遷

 

今給黎総合病院 整形外科

 

宮口文宏(みやぐち ふみひろ)、川畑直也、松永俊二

 

【目的】胸腰椎疾患に関して手術を施行した症例で、手術方法の変遷、改良点に関してここに報告する。

【対象】H19年以降、当院にて胸腰椎疾患に対して手術を施行した303例(男性203例、女性100例)を対象とした。

その手術時年齢は平均60.6歳で、平均手術時間:3時間9分、平均術中出血量:466gであった。

これらの症例に対して疾患の内訳・責任高位・手術時年齢・手術方法・手術時間・術中出血量・術後感染から比較検討した。

【結果】疾患の内訳は、外傷が93%を占め、化膿性脊椎炎が5%、転移性脊椎腫瘍が2%を占めていた。手術時間は4〜3時間が2時間前半台と短縮している。術中出血量も500から600gが100g前半台と減少している。

【考察】H27年以降術中出血量が平均200g以下となったのは固定術にPPSを用い始めた恩恵である。破裂骨折に対しては、Schanzを経皮的に挿入し、前方固定術は内視鏡視下固定術へ変更し、可能な限り1椎間固定とした。

化膿性脊椎炎やDISH typeの骨折に対してPPSを用いるようになったが、特に化膿性脊椎炎に対してはPPSにて罹患椎体の骨新生を促し前方固定術を回避している。

33.CBT法を用いて内固定材を抜去せずに固定延長し得た腰椎後方固定術後上位腰椎隣接椎間障害2症例の経験

 

徳島県立中央病院 整形外科


小坂浩史(こさか ひろふみ)、阿部光伸、高橋芳徳、高橋光彦、江川洋史

 

【はじめに】従来のpedicle screwを用いた腰椎後方固定術後で、screw looseningを伴わない術後上位腰椎隣接椎間障害に対し、CBT法を用いて内固定材を抜去せず固定延長し得た2症例を経験したので報告する。

【症例】85才男性。4年前に腰椎変性辷り症に対しL3-5 PLIFを施行している。L2/3に不安定性伴う隣接椎間障害およびL1/2/3狭窄を認めた。前回固定手術でのpedicle screwにはlooseningが無く固定延長に内固定材抜去の必要は無いと判断した。除圧に加えL2にCBT screwを刺入しoffset connectorで連結した。

66才女性。4年前にL4/5椎弓切除、2年前にL3-5PLFを施行されている。術前より軽度L2/3の辷りがある状態で、隣接椎間障害が徐々に進行。L2/3不安定性に伴う根障害および馬尾障害が出現。内固定材にlooseningは無かった。除圧に加えL2にCBT screw刺入しoffset connector用い内固定材を抜去せずに固定延長した。

【考察とまとめ】CBT screwは従来のpedicle screwと比較し低侵襲、引き抜き強度でも勝っていると報告されている。さらに最近ではサルベージ手術の1方法としても有用であると報告されている。今回の2症例もlooseningの無い内固定材を温存し固定延長が可能であった。

34.成人脊柱変形矯正固定術後に発生したPJKにより脊髄症を発症した胸椎OPLLの一例

 

下関市立市民病院 整形外科

 

白澤建蔵(しらさわ けんぞう)、山下彰久、渡邊哲也、千住隆博

 

【はじめに】当科では成人脊柱変形(ASD)に対しては側方椎体間固定術(LIF)併用前後合併手術を行っている。ASDの手術では固定近位端にPJKが比較的高率に発生し成績不良因子となる。今回、PJKによる後弯増強によりOPLLによる脊髄症を発症した症例を経験したので報告する。

【症例】77歳女性。主訴は腰痛と腰曲がり。10m以上の歩行困難。支持なしでの立位ほぼ不能。脊柱alignmentはSVA 23.5cm, LL 21°、TK 38°、PI37°、PT 37°。ASDの診断でL1/2-4/5に側方椎体間固定(LIF)、2期的に後方再建術(Th5-SAI)を施行した。術後2ヶ月頃より両下肢痺れと痙性歩行が出現。Th3-7に連続型OPLLがあり、Th5の椎体骨折による後弯増強により脊髄症が発症した。術後5ヶ月にTh1-6の固定延長手術を追加した。後弯の矯正は良好であったが、sublaminar wire刺入操作によると思われる麻痺が出現した。現在歩行可能な程度に回復した。

【考察】胸椎にOPLLを合併したASDの手術における固定範囲の決定に関して考察を述べるとともに、これまで経験した胸椎OPLLの周術期合併症についても考察する。

35.成人脊柱後弯変形に対し二期的前方・後方矯正固定術を施行した1例

 

JA広島総合病院 整形外科 脊椎・脊髄センター

山田清貴(やまだ きよたか)、藤本吉範、中前稔生、平松 武、橋本貴士、鈴木修身、土川雄司

 

メディカルスキャニング東京

鈴木信正

 

【目的】胸腰椎高位の成人脊柱後弯症例に対し、二期的前方・後方矯正固定術を施行したので報告する。

【症例】28歳女性。1年前から背部痛があり、立位保持や中腰で背部痛が増悪し、仰臥位で後弯頂椎部の痛みが出現。T12-L3椎体楔状化による64度の構築性後弯変形を認めた。

【方法】初回手術は、後方進入でT11-L2 Ponte骨切りを行った後、左前外側進入でT11-L3前方椎体間固定を施行。各椎体間にケージを設置し後弯の矯正を行った。初回手術1か月後にT11-L3後方固定術を行い、後弯矯正を追加した。

【結果】椎体間ケージによる後弯矯正でT11-L3後弯角は64度から23度に矯正され、二期的後弯矯正により前弯3度に矯正された。術後18か月の現在、背部痛は術前VAS70mmから20mmに改善した。

【結論】二期的前方・後方矯正固定術では椎体間ケージによる後弯矯正を行うことで、椎体骨切りを行わなくとも後弯矯正が可能である。