第88回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題7)

39.頚椎後方固定術・多椎間固定におけるアライメントの検討

 

琉球大学 整形外科

 

比嘉 勝一郎(ひが しょういちろう)、金城 英雄、島袋 孝尚、金谷 文則

 

【はじめに】頚椎後方固定術は、不良なアライメントで固定されてしまうと術後呼吸器合併症を生じやすいといわれ、OC2角を術前よりも減少させないことが重要といわれている。一方、多椎間固定においてOC2角が減少していない症例やOC2の固定を行っていない症例でも術後呼吸器合併症を経験したので、C2-7角の増減と呼吸器合併症について検討してみることにした。

【対象】5椎間以上の頚椎後方固定術を行った12例。

【方法】術前後の単純X-pまたはCTでC2-7角を計測し、術後減少した5例(C2-7減少群)と増加した7例(C2-7増加群)に分けた。術前後のCTで喉頭蓋直上の咽頭腔面積の変化量(Δ CSA)を計測し、比較検討した。また、術後呼吸器合併症の有無を調べた。

【結果】平均Δ CSAはC2-7減少群118mm2・C2-7増加群−147mm2で、C2-7増加群では有意に低かった。呼吸器合併症はC2-7減少群ではなかったのに対し、C2-7増加群では3例に認めた。

【考察】頚椎後方固定術で多椎間の固定を行う場合、C2-7角が増加すると椎体は前方に凸になり、咽頭腔の面積は減少するため術後呼吸器合併症を起こす可能性がある。

40.スクリュー付きcageを用いた頚椎前方固定術の画像評価

 

明野中央病院 こつ・かんせつ・リウマチセンター

 

吉岩 豊三(よしいわ とよみ)、中村 英次郎、原 克利、藤川 陽祐

 

【はじめに】頚椎前方固定術には、近年、スクリュー付きのcageが使用されるようになっている。今回、それを用いた術後の画像評価を行ったので報告する。

【対象と方法】2016年10月からの1年間でスクリュー付きcageを用いて頚椎前方固定術を行い、術後3か月以上経過観察可能であった7例を対象とした。方法は、CTにて固定椎間の局所Cobb角、固定椎体高を計測し、術前との変化量を求めた。

【結果】局所Cobb角は術前と比較して、術直後平均2.9°に対し、術後3か月平均0.3°であり、術後減少していた。固定椎体高の変化は、術直後平均1.4mm、術後3か月平均-0.2mmであり、術前と同じ高さとなった。術前局所後弯例や2椎間固定例では、局所Cobb角と椎体高の減少が大きい傾向にあった。

【考察】近年、スクリュー付きcageを用いた頚椎前方固定術の力学的および臨床成績について、欧文での報告が多数散見され、本邦でもその術式が施行されている。2椎間固定や術前局所後弯を呈している症例では、術後の固定角度が維持されない症例があった。その他の症例では、装具装着期間の短縮や合併症の低減などの長所が多く、有用な方法であると考えられた。

41.頚髄症に対する頚椎後方手術後の矢状面バランスと臨床成績

 

益田赤十字病院 整形外科*1、鳥取大学 整形外科*2

 

土海 敏幸*1(どかい としゆき)、米井 徹*1、大塚 哲也*1、河野 龍之助*1、永島 英樹*2

 

【目的】頚髄症に対する頚椎後方手術において頚椎矢状面バランスとJOACMEQ の関係について調査した。

【方法】2015年4月〜 2016年3月の間に頚髄症に対して後方手術を行い、1年以上の経過観察が可能であった21 例を対象とした。男性16例、女性5例で、手術時平均年齢は77.6歳だった。OPLL合併例は5例で、症例に応じて後方固定術を併用した。C2-C7 角、C2-C7 ROM、T1 slope、頭蓋骨中心線とC7椎体中心との距離(OC)を計測し、OC の変化により増加群と減少群の2 群に分類し、比較検討を行った。

【結果】増加群は18例、減少群は3例だった。固定症例はすべて増加群だった。増加群に比べて、減少群は術前のT1 slope が大きく、OCが長かったが、術後はC2-C7角が大きく、OCが短かった。JOACMEQ について、術前は2群間に有意差はなく、術後は膀胱機能とQOLを除く全ドメインで減少群が有意に高かった。

【結語】頚椎後方手術後に頚椎矢状面バランスが改善した方が術後成績は良好であった。

42.椎弓根スクリュー固定術を併用した頚椎後縦靭帯骨化症における術後骨化巣のHounsfi eld unitの変化

 

高知医療センター 整形外科

 

時岡 孝光(ときおか たかみつ)、林 隆宏

 

頚椎後縦靱帯骨化症(OPLL)に椎弓根スクリュー(PS)併用の骨化巣の形態変化を椎弓形成術単独群と比較した。 2008年から2011年にPSを併用したOPLLの手術は32例に行い、CTで3年以上追跡可能であった23例を対象とし、平均60.9歳、追跡期間は53.7ヶ月であった。対照群は2005年から2008年に椎弓形成術単独施行の11例であった。CTで骨化巣途絶部の癒合、骨髄化を検討し、術前後のCT 矢状面で骨化巣のHUの平均値を測定した。骨化巣のHUはPS群では術前平均1020HU、1年後994HU、2年後909HU、3年後851HUであり、3年間で術前の平均79%に低下した。椎体のHUは術前503HUから3年後は375HUとなり74%に低下した。5年以上追跡できた12例は術前1200HU以上で全く変化しない3例と、経時的に低下した9例の2群に分けられた。L群では骨化巣は術前平均921HUから5年後1013(109%)へ増加し、椎体は術前473HUから5年後485HU(102%)と横ばいであった。

43.頚椎黄色靭帯骨化症の1症例

 

大分三愛メディカルセンター 整形外科*1、内田病院 整形外科*2、豊後大野市民病院 整形外科*3

 

松本 博文*1(まつもと ひろふみ)、内田 研2、二宮 直俊*1、赤瀬 広弥*3、久保田 悠太*1

 

 黄色靭帯骨化症は胸椎に好発するが、頚椎発症例は稀である。今回、我々は頚椎発生で手術を要した1症例を経験したので文献的考察を加え報告する。

【症例】63歳、女性。主訴:両上下肢のしびれと右上肢の運動障害。

 平成28年9月より両上肢のしびれを自覚し、近医脳神経外科を受診し、頚椎疾患を指摘され某病院整形外科を紹介されたが、糖尿病コントロール不良のため手術治療を断られた。症状は悪化し、右手での作業はほぼ不可能となり、平成28年12月当科を受診した。日整会頚髄症スコア(以下JOAスコア)6/17であり、右手は伸展不能で握力4kg、右上腕三頭筋力のMMTは2であった。C5/6右に大きな黄色靭帯骨化巣を認め、頚髄は著明に圧迫されていた。手術は骨化巣と硬膜の癒着が強ければ椎弓切除に移行できるよう片開き式椎弓形成術でかつ開大を通常より大きくとるためcenterpiece ODシステムRを用いた。症状は改善、右手での書字、箸使用も可能となり、術後半年の現在、JOAスコアでは16.5点となった。

44.嚥下障害をきたした頚椎前縦靱帯骨化症の1例

 

川崎医科大学附属病院 整形外科

 

渡辺 聖也(わたなべ せいや)、中西 一夫、射場 英明、長谷川 徹

 

【はじめに】頚椎前縦靱帯骨化症は日常診療において無症状であることが多い。しかし、今回われわれは頚椎前縦靱帯骨化症により嚥下困難を呈した1症例に対して外科的治療を行い良好な結果が得られたので報告する。

【症例】79歳女性。主訴は嚥下困難である。レントゲンにて頚椎前縦靱帯骨化症を認めた。単純CTにて第4頚椎から第7頚椎まで連続性のある高度な頚椎前縦靱帯骨化症を認めたため頚椎前方アプローチにて骨棘切除術を行った。術後早期より嚥下困難感は消失し良好な経過をたどっている。

【考察】頚椎前縦靱帯骨化症は高齢者の嚥下障害において鑑別診断の一つとして念頭に置くべきである。頚椎前縦靱帯骨化症が患者のQOLの低下をきたす時は積極的に骨化巣切除術を行うべきであると考える。