第89回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題4)

16.頚椎椎弓形成術後の再手術4例についての検討

 

長崎大学 整形外科

 

津田 圭一(つだ けいいち)、田上 敦士、安達 信二、山田 周太、尾崎 誠

 

【はじめに】頚椎症性脊髄症に対する椎弓形成術の治療成績は良好で再手術例は比較的少ない。しかし、術後一度改善した麻痺が再悪化したり、改善が悪い例を時々経験する。今回椎弓形成術を施行した後に再手術を施行した4例について報告する。

【症例】いずれの症例も圧迫性脊髄症の診断で椎弓形成術を施行された。1例は後弯を伴ったアテトーゼ頚髄症症例で術後麻痺の改善に乏しく、また拡大不良で後方除圧固定術の追加手術を施行。1例は後弯を伴った頚椎後縦期帯骨化症症例で術後の改善はやや不良で数年の経過で再悪化を認め後方除圧固定術の再手術を施行。2例はCSM症例で一度症状の改善を認めるものの術後1年以内の比較的早期に麻痺の再悪化を認め除圧を追加した。

【考察】圧迫性脊髄症に対する椎弓形成術は適応に問題がなければ成績は良好である。しかし一方で除圧範囲不足、脊柱管内瘢痕形成、lamina closure、後弯進行による麻痺悪化、改善不良を経験する。当科では近年治療方針決定に際しdynamic CTMを施行しており、診断や除圧範囲決定に有用である可能性がある。

17.頚椎後縦靭帯骨化症に対する椎弓形成術後の隣接障害についての検討

 

大分整形外科病院

 

塩川 晃章(しおかわ てるあき)、大田 秀樹、松本 佳之、井口 洋平、巽 政人、瀧井穣、木田 浩隆、竹光 義治

 

【はじめに】 頸椎の椎弓形成術は比較的手術成績も安定しておリー般的に普及している。その利点の一つに隣接椎間障害が少ないことが挙げられる。今回、頸椎後縦靭帯骨化症(頸椎OPLL)に対して頸椎椎弓形成術を施行した症例に対して放射線学的に隣接椎間病変との関係を検討したので報告する。

【対象と方法】2012年1月から2017年9月にOPLLに対して椎弓形成術(C2又はC3-7)を施行した症例のうち、術前術後のX線で前後屈の撮影が行われていた118例を対象とした。術前術後の前屈、後屈におけるC1-2角、C3-C7角を測定し隣接椎間障害との関連性を評価した。

【結果】118例中3例(2.5%)のみ隣接椎間障害による再手術を要した。2例は上位椎間、1例は下位椎間の脊髄の圧迫を認めた。C3-C7角はほぼ全例に低下を認めたが、C1―C2角は増大する症例も認められた。特に上位椎間に圧迫を認めた症例は2例とも増大していた。

【結語】椎弓形成術後の可動域減少が隣接椎間へのmechanical stressの増大に繋がり隣接椎間障害が発症したことが示唆された。特にOPLLなど骨化傾向がある症例は特に注意が必要である。

18.椎弓形成術後に後方固定術を行った頚椎後縦靭帯骨化症3例

 

兵庫医科大学 整形外科

 

楠山 一樹(くすやま かずき)、橘 俊哉、圓尾 圭史、有住 文博、木島 和也、吉矢 晋一

 

 頸椎後縦靭帯骨化症に対する椎弓形成術術後に頸椎後弯進行により脊髄症状増悪をきたし、後方固定術を行なつた3例について検討した。

 症例は男性2例、女性1例、平均年齢79.6歳。初回手術はC2-7椎弓形成術後+C1後弓切除が2例、C3-7椎弓形成術が1例であった。

 初回手術術前は全例頸椎中間位においてC2-7 angleは前弯型、K-line+であった。再手術までの期間は4年6ヶ月から12年で、直前のC2-7 angleは全例で後弯化に伴いK-line−となっていた。

 再手術は2例に頸椎後方固定術(C2-7)、1例に頸推後方固定術(C3-5)+C4椎弓切除術が行われた。術後は全例後弯型のままであった。JOA scoreは1例が不変(10 → 10)、2例では改善(10.5 → 11.5、9.5 → 12)していた。

 頸椎後縦靭帯骨化症で椎弓形成術術後K-line−となった症例に対し、後方固定術で良好な成績がえられた。これらは頸椎後方固定でえられた制動による効果と考えられる。

19.頸椎前方固定術後の隣接障害に対する検討

 

大分整外科病院

 

巽 政人(たつみ まさと)、大田 秀樹、松本 佳之、井口 洋平、塩川 晃章、竹光 義治、木田 浩隆

 

【目的】頸椎前方固定術(以下ASF)は良好な成績を得られる一方で固定後の隣接障害が問題となる。今回我々はASF後の隣接障害について調査した。

【対象】2005年より当院で手術施行し1年以上経過観察可能であつた157例を対象とした(男性101例、女性56例)。平均年齢は53.4歳、平均観察期間は3.4年であつた。再手術の有無、頸椎レントゲン写真側面像で上位および下位固定隣接椎間の可動域・脊椎症性変化の有無について調査した。下位隣接椎間が観察不能であつたのは49例認めた。

【結果】再手術は11例(7.0%)で再手術までの期間は5.5年であった。脊椎症性変化は上位隣接椎間38.8%、下位隣接椎間31.4%で認めた。上位もしくは下位に脊椎症性変化を認めた例は46.2%であり、観察期間4年以上の例に限ると57.2%であった。可動域変化は下位では減少する傾向にあつた。

【結語】ASF術後の隣接椎間は時間経過とともに変性が進行し、再手術となる可能性があるため長期にわたる経過観察が必要である。

20.後頭頚椎固定術における0-C2角の変化に関する検討

 

宮崎大学 整形外科

 

李 徳哲(り とくちょる)、永井 拓哉、川野 啓介、比嘉 聖、黒木 修司、濱中 秀昭、帖佐 悦男

 

アラインメント矯正が必要な後頭頚椎固定前に、ハローベスト固定後の呼吸、嚥下障害がなければin-situ固定を行ってきた。結核性脊椎炎に同方法を行い、術後呼吸停止した症例を経験し、術前中間位から固定後の0-C2角変化(0-C2)が-14.4° であった。0-C2< -10° の場合、高率な呼吸、嚥下障害合併が報告されている。当院の2008年から2017年の後頭頚椎固定症例では、ハローベストを用いなかった18例の平均0-C2は -0.3° 、ハローベストを用いた24例では平均 -1.6° であった。術後重篤な呼吸障害を呈した4例全てハローベスト群であり、2例が0-C2< -10° であった。上記結核症例の再手術では手術台頭部固定装置でアラインメント調整し、0-C2 -0.2°であることを術中X線で確認し、術後合併症は生じなかった。ハローベストから後頭頚椎固定後0-C2角変化が±5° 以上の症例が9例存在し、ハローベストを用いても0-C2角変化を念頭に置き、術中X線を必ず確認することが重要と考えられた。