第89回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題5)

21.腰椎圧迫骨折に対する前後方固定術後に再手術を行った1例

 

重工記念長崎病院 整形外科

 

依田 周(よだ いたる)、崎村 俊之、金丸 由美子、三溝 和貴、西 亜紀、矢部 嘉浩

 

【症例】84歳女性。誘因なく腰痛出現し近医内科入院、第2腰椎圧迫骨折の診断。コルセットによる保存加療を行うも徐々に椎体圧潰、下肢痛・筋力低下を認め受傷1か月後に当院紹介、入院となる。腰椎圧迫骨折後遅発性神経麻痺の診断で手術適応と判断。骨密度は64%(YAM値)と低値でDaily PTH製剤を開始し待機的に手術予定。手術は右下側臥位で前方固定術(X―CORE2: NUVASIVE)を行い、その体位のまま後方からPPS固定(T12-L4)を行った。術後下肢痛、筋力改善しADLアップしたが徐々に前方Cageの沈み込み、PPSの脱転を来した。インプラントの皮膚への突出、下肢症状の再燃を認め術後2.5ヵ月で再手術が必要と判断。再手術は後方からの除圧および再固定を行った。上下1椎体ずつ固定範囲を広げスクリュー挿入し、前回スクリュー挿入した部位はサイズアップし再挿入した。またRodによるスクリューヘの負荷を低減するためNavigation下でRod bending (BENDINI : NUVASWE)を行いRod挿入、頭尾側にSublaminawiringを行い固定補強した。再手術後は経過良好で独歩可能となっている。

22.骨粗騒症性椎体圧潰に対する前後方固定術後の再手術例の検討

 

長崎労災病院 整形外科・リハビリテーション科

 

馬場 秀夫(ばば ひでお)、奥平 毅、山口 貴之、野口 智恵子、田丸 満智子、吉田 周平、原 真―郎、小西 宏昭

 

【目的】骨粗慈症性推体圧潰の短椎間前後方固定術の再手術例を検討すること。

【対象と方法】3カ月以上経過観察した前後方固定術57例を対象とした。年齢は51-90歳(平均77.8歳)で、前方は自家腸骨が11例、ケージが46例(X―core2: 44例)で、後方は下肢麻痺を認めた4例以外はPPSを使用した後方固定術を2椎間(6例で3椎間)に行った。再手術例について原因、再手術方法を検討した。

【結果】再手術を7例(再手術率12%)に行った。parkinson病とDISHを各2例、RAを1例に合併していた。その原因はケージやスクリューのゆるみが6例、前方ケージの脱転が1例であつた。ゆるみ例に対してはすべて後方から多椎間固定を行い、脱転例はケージ再設置と後方固定の範囲を延長した。再々手術をゆるみの2例に行った。頭側、尾側のスクリューのゆるみを各1例に認め、それぞれ前方はX-core2、XLIFを使用し後方は固定を延長した前後方固定術を行った。

【考察】再手術例のうち5例でparkinson病、DISH、RAを合併しており、これらの例では後方は多椎間固定が良いものと思われる。

23.脊椎圧迫骨折に対して複数回手術を要した強直性脊椎増殖症の1例

 

愛媛大学医学部 整形外科

 

村上 悠介(むらかみ ゆうすけ)、森野 忠夫、日野 雅之、見崎 浩、三浦 裕正

 

【症例】67歳女性、転倒による腰痛で初診した。L2圧迫骨折と診断し、強直性脊椎増殖症(ASH; anlylosingspinal hyperostosis)による癒合した胸椎尾側の骨折で、L1の陳旧性圧迫骨折もあり後弯変形を伴っていたため前方(T12-L3)、後方侵入の固定術(T9-L5)を行った。PTH製剤も併用した。術後8ヶ月日にL5スクリューのゆるみを認めた。前方の骨癒合を認めていたためL4、5スクリューを抜去した。その1ヶ月後にL4圧迫骨折を起こして偽関節となったため、L4kyphoplastyと腸骨までのドミノ固定を行った。現在、硬性コルセットで経過観察中である。

【考察】ASHによる癒合した椎体の尾側での骨折は、長いレバーアームによる骨折椎体への応力集中があり骨癒合が得られにくいとされている。本症例では骨粗慈症も伴っていたため、最終的に固定力の強いS2-ara― iliac screwをアンカーとした。また、ロッド折損を予防するためにdual rodを採用した。

24.Failed vertebroplastyに対するrevertebroplastyを併用した再建術

 

高知大学 整形外科

 

葛西 雄介(かさい ゆうすけ)、武政 龍一、田所 伸朗、喜安 克仁、川崎 元敬、池内 昌彦

 

 高齢者の骨粗鬆性椎体骨折に対する椎体形成術の中には、その術後経過中に破綻にいたる症例をしばしば認める。このような場合、通常は前方支柱の再建、広範囲の後方固定も必要となり、侵襲はより大きくなる。そこで我々は後方からのアプローチのみで前方支柱の再建が可能な方法を考案し、取り組んでいる。この術式は、経椎弓根的にエアドリルを椎体内に挿入し、椎体内に残存したセメントや瘢痕組織を粉砕すると同時に上位終板を穿破して、隣接する椎間板とともに掻爬して得られた椎体椎間板腔に、CPC(リン酸カルシウムセメント)をできるだけ一塊に注入して前方支持を獲得するものである。さらに後方からinstrumentationを追加した。これまでに本術式を8例施行した。いずれの症例も術後早期に疼痛の改善を得られ、その後の固定椎間の矯正も維持できていた。本術式は椎体形成術術後セメント再骨折のほか、脆弱性椎体骨折による脊柱不安定性を認める症例に対しても適応可能で、より低侵襲に脊柱再建が得られる方法である。