第91回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題2)

5.広島県呉市における高齢者臨床的脊椎椎体骨折の発生率 〜行政との連携によるレセプトデータを利用した大規模データ解析〜

 

中国労災病院1、呉市地域保健対策協議会 骨粗しょう症地域包括医療体制検討小委員会2、沖本クリニック3、呉共済病院4、呉中通病院5、マッターホルンリハビリテーション病院6、済生会呉病院7、呉医療センター・中国がんセンター8

 

濱ア 貴彦(はまさき たかひこ)1,2、沖本 信和2,3、寺元 秀文2,4、中川  豪2,5、白川 泰山2,6、水野 尚之2,7、濱田 宜和2,8、笹重 善朗1,2

 

【目的】広島県呉市は人口23万人を有する地方中核都市であるが、人口15 万人以上の都市で算出した高齢化率では国内最高である。当市における現時点での椎体骨折の発生率を把握するため、国民健康保険・後期高齢者医療制度被保険者の診療報酬情報書からレセプトデータを抽出し解析したので報告する。

【方法】対象は平成27年に呉市で国保・後期高齢者被保険者のレセプトデータから、傷病名に椎体骨折があり、かつ処置(ギプスまたは装具)、手術、入院のいずれかがあるものを抽出した。年齢別に5歳階級別で区分けし、同時期の住民基本台帳から抽出した男女5歳階級別人口から発生率を推測した。

【結果】平成27年における呉市の人口234,613人のうち、65歳以上は77,154人で高齢化率は32.9%であった。65歳以上の国保あるいは後期高齢者の加入者は66,317人で同年齢階級人口の86.0%を占めていた。この国保と後期高齢者のデータから解析した65歳以上の椎体骨折の発生率は100,000人あたり1,558であった。

【考察】椎体骨折の発生率について行政を巻き込んだ大規模なレセプトデータの解析は非常に稀である。

6.胸腹部CTを利用した骨粗鬆症性椎体骨折既往のスクリーニング ―二次骨折の予防に向けて―

 

岡山大学病院1、香川県立中央病院2

 

尾 真一郎(たかお しんいちろう)1,2、三澤 治夫1、瀧川 朋享1、塩崎 泰之1、宇川 諒1、村岡 聡介1、辻 寛謙1

 

【はじめに】骨粗鬆症性椎体骨折(以下OVF)の既往は骨粗鬆症診断となり、新規OVFのリスクともなるため、骨粗鬆症治療が望まれる。我々は胸腹部CTを利用し、既存OVFの有無を調査して骨粗鬆症治療対象者を抽出した。

【対象と方法】対象は2016年2〜4月に胸腹部CTを撮影した50歳以上の入院患者459例(男性286例、女性173例)とした。矢状断像で20%以上の椎体圧潰があるものをOVF既存ありとした。さらに、骨粗鬆症既往歴の有無、骨粗鬆症薬の有無も調査した。

【結果】既存OVFは147例(32.0%)、男性72例(25.2%)、女性75例(43.4%)に認められ、80歳台が65例(44%)と最も多かった。このうち骨粗鬆症既往歴のあるものは147例中40例(27.2%)、骨粗鬆症治療薬のあるものは147例中20例(13.6%)であった。

【考察】入院中の胸腹部CTデータを利用することで、既存OVFを、3か月間で147例抽出することができた。骨粗鬆症治療薬歴があるものは13.6%であり、治療対象症例も多い。本調査により抽出された治療対象者に対する骨粗鬆症治療は骨折の二次予防であり、治療効率も高いものと考えられる。

7.医用画像・有限要素法を用いた胸腰椎移行部圧迫骨折の応力解析

 

山口大学医学部附属病院 整形外科

 

西田 周泰(にしだ のりひろ)、今城 靖明、鈴木 秀典、舩場 真裕、坂井 孝司

 

椎体骨折は胸腰椎移行部に好発するが、CTから全脊椎モデルを作成し解析した報告は少ない。我々は有限要素法全脊椎3次元モデルを作成し、第11胸椎(T11)および第1腰椎(L1)に圧迫骨折を想定した変形を与えたモデルを構築し、胸郭モデルも付加して椎体の応力解析を行った。

成人男性のCTを基に、頚椎から骨盤、肋骨のモデルを構築した。これを正常脊椎モデルし、圧迫骨折モデルとしてT11、L1 の各椎体頭尾側のなす角度をα=10°、20°に変形し、体重60kg を想定した荷重を加えた。結果は、正常脊椎モデルでは胸腰椎移行部・中位胸椎付近のひずみが大きい一方、椎体骨折モデルでは短時間の荷重では骨折部や隣接椎体にひずみが集中した。本研究における、続発性椎体骨折は骨折部周囲で生じやすく、胸椎にも起こる可能性があるという結果は、従来の臨床結果及び研究結果と合致するものであった。

この結果胸腰椎移行部圧迫骨折のフォローでは胸椎及び隣接椎体の観察が必要で、シミュレーションモデルが様々な解析に使用できうることが分かった。

8.骨粗鬆性椎体骨折の遷延癒合のリスクファクター

 

JCHO宇和島病院 整形外科

 

河野 宗平(こうの そうへい)、 藤田 勝、渡辺 昌平、富永 康浩、藤井 充、松田 芳郎、友澤 翔

 

【はじめに】OVFの遷延癒合のリスクファクターを調査した。

【方法】対象はOVFの遷延癒合に対しBKP治療を行った50椎体と保存治療を行い骨癒合まで経過観察を行った96椎体。受傷時MRI、骨折椎を含むもしくは1椎体上位の癒合椎(DISHなど)の有無、続発性椎体骨折の原因となる併存疾患数や内服の有無、椎体骨折の既往歴、骨粗鬆症薬の内服歴を後ろ向きに調査した。

【結果】@骨折椎上位での癒合椎(OR 52.61:95%CI 10.21-90.2) A CT における後壁骨折の有無(OR 12.65:95%CI 8.51-23.6) B 骨折椎MRI T2-WI diffuse low intensity(OR 23.56:95%CI 9.32-125.1)C 骨折椎MRI T2-WI confined high intensity(OR 34.45:95%CI 6.53-76.59)D続発性椎体骨折の原因となる併存疾患が2つ以上(OR 4.94:95%CI 1.92-6.73)は遷延癒合におけるリスクであった。

【結語】上記リスクを考慮した治療が必要である。

9.骨粗鬆症性椎体圧潰に対するロールバック撮影法を用いた術前評価

 

長崎労災病院整形外科 リハビリテーション科

 

馬場 秀夫(ばば ひでお)、奥平 毅、山口 貴之、今井 智恵子、佐保 明、原 真一郎、小西 宏昭

 

【はじめに】骨粗鬆症性椎体圧潰に対し術前に圧潰椎体部に枕をおいて後弯矯正の評価を行っている。今回その有用性について検討した。

【対象と方法】術前圧潰椎体の背部に径20cm の硬めの枕をおき、5分間経過後側面X線撮影を行った(以下ロールバック)54例を対象とした。年齢は60〜88歳(平均78歳)だった。術前側面前屈、後屈、仰臥位側面X線像、ロールバック、術後仰臥位側面X線像における局所後弯角を比較検討した。

【結果】局所後弯角は術前前屈が平均33°、後屈が28°、仰臥位側面が15°、ロールバックが6°、術後側面が6°であった。術後の局所後弯角と比較し術前の後弯角が11°以上差があったものが前屈49例(91%)、後屈45例(83%)、仰臥位側面19例(35%)、ロールバック4例(7%)であったのに対し、6°以上10°以下が前屈2例(4%)、後屈5例(9%)、仰臥位側面19例(35%)、ロールバック17例(31%)で、5°以下が前屈3例(6%)、後屈4例(7%)、仰臥位側面16例(30%)、ロールバック33例(61%)で、ロールバック、仰臥位側面、後屈、前屈の順に術後側面との差がなかった。

10.骨粗鬆症性椎体骨折後歩行悪化因子の検討

 

鹿児島大学 整形外科、出水郡医師会立広域医療センター

 

冨永 博之(とみなが ひろゆき)、河村 一郎、泉 俊彦、米 和徳、谷口 昇

 

【目的】我が国の平均寿命は年々伸びているが健康寿命との差は縮まっていない。骨粗鬆症性椎体骨折は介護要因だが、椎体骨折後の歩行悪化因子を検討した報告は少ない。我々は骨粗鬆症性椎体骨折後に受傷前より歩行能力が低下した症例に関して危険因子を検討した。

【方法】対象は骨粗鬆症性新鮮椎体骨折に対して受診後体幹ギプスを用いて早期離床を図り保存加療を行った症例82名。腰椎、大腿骨骨密度、握力、歩行速度、立位脊椎骨盤パラメーター(PI: pelvic incidence, LL: lumbar lordosis)、骨代謝マーカー、栄養指標である GNRI(Geriatric Nutritional Risk Index)を測定。退院時に受傷前より歩行状態が悪化した群(悪化群)と不変群の二群間比較を行った。

【結果】女性53名、年齢中央値80歳であり受傷後歩行能力が低下した症例は34名であった。悪化群では握力、BMI、LL、GNRIが低かった。多変量解析ではGNRIが危険因子であった。

【考察】骨粗鬆性椎体骨折後歩行能力を保つ上でも腰椎前弯を保つことが重要であることが示唆された。また骨粗鬆症とサルコペニアだけでなく栄養管理も骨粗鬆症性椎体骨折治療において重要である。

11.骨粗鬆症性椎体骨折に伴う神経根症の検討

 

明野中央病院 こつ・かんせつ・リウマチセンター

 

吉岩 豊三(よしいわ とよみ)、中村 英次郎、原 克利、藤川 陽祐

 

【はじめに】骨粗鬆症性椎体骨折に伴う神経根症についての病態把握に対する報告は少ない。今回われわれは、責任神経根と骨粗鬆症性椎体骨折の関係を検討したので報告する。

【対象と方法】骨粗鬆症関連で手術を施行し、神経根症を呈していた9例を対象とした。平均年齢は79.4歳であり、男性1例、女性8例であった。椎体骨折部位は、L2は1例、L3が3例、L4が5例、L5は1例であった。責任病巣を同定し、骨折形態との関係を調べた。頭側終板椎体骨折(頭側型)、尾側終板骨折(尾側型)、両側終板骨折(両側型)に分類し、後壁損傷、偽関節、椎弓根骨折の有無も含めて検討を行った。

【結果】7例が椎間孔狭窄を呈し、いずれも当該椎体と同じ神経根症を呈していた。4例が尾側型であり、1例は頭側型に椎弓根骨折を伴っており、2例は両側型であり、偽関節を伴う高度圧潰を呈していた。

【考察】過去の報告と同様に椎間孔狭窄に伴う神経根症が尾側型の骨折に多く見られた。椎間孔を形成する椎体後壁の膨隆などにより椎間孔が狭窄されるが、尾側型でなくとも、椎弓根骨折や偽関節等の不安定性による動的因子の関与も示唆された。

12.術後早期に椎体骨折を起こした2例

 

大分整形外科病院

 

眞田 京一(さなだ きょういち)、大田 秀樹、松本 佳之、井口 洋平、巽 政人、塩川 晃章、木田 浩隆、竹光 義治

 

【目的】術後早期に腰痛が悪化し、椎体骨折が原因と思われた2例を報告する。

【症例】

症例1:75歳、男性。脊柱後弯に対してL1から腸骨まで矯正固定術を行った。術後1週間頃から誘因なく腰痛が悪化し、精査したが原因不明。さらに腰痛が増強し再度CT撮像すると、L1がpedicle screwレベルで骨折していた。固定をT8まで延長し症状は改善した。

症例2:86歳、女性。L3からS1固定術後の隣接椎間障害に対しL1からL4までの固定とL2/3のTLIFを行った。術後2日目に誘因なく激しい腰痛が出現。精査にて異常なかったが症状は悪化した。再度のCTにてL4椎体骨折が判明した。遠位の固定をS1まで延長し症状は改善した。

【考察】転倒など原因なく術後早期に腰痛.下肢痛が出現した場合、血腫やpedicle screw誤刺入などが疑われる。骨折の誘因として骨粗鬆症、後弯などのalignment異常も挙げられるが、pedicle screw刺入による骨折も考えられた。

【結語】術後早期に症状が悪化した場合は血腫やpedicle screw誤刺入だけでなく、椎体骨折も念頭に入れるべきである。骨粗鬆、脊椎alignment異常がある場合、固定端のinstrumentationには注意を要する。

13.脆弱性仙骨骨折の検討

 

岡山労災病院 整形外科

 

山内 太郎(やまうち たろう)、田中 雅人、魚谷 弘二、藤原 吉宏

 

【目的】仙骨骨折は単純レントゲンではその診断が困難なことも多く見逃されやすい。我々の施設では腰椎CT撮影時に骨盤を含めたCTを撮影することで見逃さない工夫をしている。

【対象】2017年4月より2018年10月までに当院外来で、軽微な外傷もしくは明らかな外傷のない脆弱性仙骨骨折を生じた症例は全34例、男性6例、女性28例であった。年齢は50歳から97歳までであるが、そのうち90歳以上の超高齢者は9例であった。

【結果】仙骨骨折の診断が単純レントゲンのみで可能であったのは4例のみで、他はCTが26例、MRIが4例であった。仙骨骨折のみの単独骨折は26例、脊椎骨折の合併が4例、恥坐骨骨折の合併が3例、大腿骨骨折の合併が1例であった。整形外科での診断が33例で、1例のみ内科で診断されていた。

【考察】仙骨骨折は全骨折中1%程度の比較的まれな骨折といわれているが、超高齢化社会に伴い、仙骨骨折を生じる可能性は実際に考えられているより多いものと推察される。診断には、脊椎から骨盤を含めたCT撮影が望ましく、それにより仙骨骨折の診断を見逃さないことが可能であると考えられた。

14.骨粗鬆症性椎体骨折に伴う脊柱矢状面アライメント変化

 

高知大学 整形外科

 

喜安 克仁(きやす かつひと)、葛西 雄介、青山 直樹、武政 龍一、池内 昌彦

 

【目的】骨粗鬆症性椎体骨折後の局所後弯は、バランスの破綻となる症例も散見する。今回骨折レベルによる骨粗鬆症性椎体骨折症例の矢状面アライメントの状態、病態を調査した。

【方法】手術加療を要した骨粗鬆症性椎体骨折症例を対象とした。症例は75症例、内わけは胸腰椎移行部(Th10〜L2)の骨折57症例、中下位腰椎(L3〜5)の骨折18症例で調査した。調査項目は、術前X線荷重位側面像で椎体楔状角、矢状面パラメーターを計測した。

【結果】胸腰椎移行部の骨折は、椎体楔状角-27.4度、SVA79.3mm、TK39.9度、TL-38.7度、LL30.0度、PI53.1度、SS22.1度、PT30.9度であった。一方で、中下位腰椎の骨折は椎体楔状角-17.1度、SVA129.6mm、TK24.3度、TL-9.1度、LL12.8度、PI52.4度、SS20.8度、PT31.7度であった。

【結論】胸腰椎移行部の骨折は、腰椎を前弯化させることで代償していたが、中下位腰椎の骨折は腰椎で代償できず、後弯が強くなりバランス異常となっている症例が多かった。