第91回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題5)

37.骨粗鬆症性椎体骨折により隣接する病変に対し治療法に工夫を要した2症例

 

久留米大学 整形外科1、永田整形外科病院2

 

吉田 龍弘(よしだ たつひろ)1、佐藤 公昭1、山田 圭1、横須賀 公章1、中江 一朗1、枦元 佑大郎1、岩橋 頌二2、島ア 孝裕1、猿渡 力也1、永田 見生1、志波 直人1

 

骨粗鬆症性椎体骨折は、病変そのものに対する治療に難渋するのみならず、隣接する病変に対しても影響を及ぼし、治療法を複雑にせざるを得ない場合がある。

症例1。95 歳男性。L1/2 間の化膿性椎間板炎およびL2の椎体炎にて抗生剤にて保存的に加療を行っていた。炎症反応の再燃、腰痛増悪、硬膜外膿瘍による神経症状が出現し観血的加療を検討中に、T12の椎体骨折を発症し麻痺が増悪。T11からL2の除圧とL1/2間の病巣掻爬、L1-3のPPSによる固定を行い、T12に対しては自家骨を用いた椎体形成を施行した。

症例2。78 歳女性。元々腰痛あり、徐々に下肢筋力の低下をきたした。T12の破裂骨折とL2圧迫骨折を認めた。L2にはBKP、T12は除圧後に椎体形成とT11-L1のPLFを行った。

今回の2症例では、固定術が必要と判断したが、その上端および下端に骨粗鬆症性椎体骨折を呈していた。骨折部位に後方固定術を追加すると固定範囲が多椎間に渡り、それに伴う弊害も考慮し、椎体形成、BKPを併用することにより固定範囲を最小限にとどめた。幸い2例とも術後は症状改善傾向にあり経過観察中である。

38.胸腰椎移行部偽関節に対する椎体形成を併用した後方固定術

 

県立広島病院 整形外科

 

西田 幸司(にしだ こうじ)、吉岡 紘輝、櫻井 悟、亀井 豪器、松尾 俊宏、井上 博幸、望月 由

 

【目的】我々は以前より骨粗鬆性胸腰椎骨折偽関節症例に対して,椎体形成を併用した後方固定術を施行してきたが,近年ほとんどの症例が経皮的固定術である。

本研究の目的は当院における胸腰椎移行部偽関節手術について検討することである。

【症例】骨粗鬆性椎体骨折に対して後方固定術を施行した22名のうち,胸腰椎移行部骨折偽関節症例にHAブロックによる椎体形成術を併用した11名(男性3名,女性8名),平均年齢79歳を対象とした。開創にて固定した症例を従来群,経皮的手術症例を経皮群とし,年齢,性別,手術時間,出血量について調査した。

【結果】従来群は平均年齢76歳,男性2名,女性4名,経皮群は年齢81歳,男性1名,女性4名であった。従来群,経皮群で手術時間はそれぞれ平均180分,83分,出血量は平均224ml,31mlであり,いずれも有意差を認めた(p<0.01)。

【考察】経皮的後方固定術では当然ながら従来法より有意に手術時間は短く,出血量も少なかった。放射線被曝の増加はあるものの,低侵襲であるため全身状態の良くない患者さんにも対応しやすい手術である。

39.CPCを用いて連続する2椎体の骨折を一塊に置換し、前方支持を得た症例

 

高知大学 整形外科

 

葛西 雄介(かさい ゆうすけ)、武政 龍一、青山 直樹、田所 伸朗、喜安 克仁、池内 昌彦

 

【背景】高齢者の骨粗鬆症性椎体骨折では、まれに連続する2椎体骨折が骨癒合不全となり、著明な局所後弯と不安定性から遅発性神経麻痺を発症する場合があり、その術式選択には苦慮する。今回椎体骨折をきたした2 椎体を一塊に椎体形成する術式を試みたので報告する。

【症例】本術式は経椎弓根的に各骨折椎体内およびその間に位置する椎間板を掻爬して上位椎体―椎間板―下位椎体に一塊の空隙を作成し、そこにCPCの注入を行って前方支持とする。最後に後方からinstrumentationを行って、後方固定を行う。これまで2例に本術式を行った。1例目は75歳男性、T12・L1椎体は偽関節化し、明らかなT12/L1椎体間不安定性を認めた。2例目は74歳女性、T10/11椎体はともに圧潰が強く、T10/11椎間板の損傷も認めた。2症例とも神経障害を合併していたが、術後には局所後弯は良好に矯正され、それ以後も矯正損失や破綻なく、神経機能も改善した。

【考察】高齢化により多椎体骨折をきたす症例は今後増加すると思われるが、その対処法については意見が一致していない。本術式はより低侵襲に骨折椎体の矯正と固定が可能な術式であると考える。

40.X-coreを用いた脊椎前方後方固定術の術後成績の検討

 

長崎大学病院 整形外科1、重工記念病院 整形外科2

 

山田 周太(やまだ しゅうた)1、田上 敦士1、安達 信二1、津田 圭一1、横田 和明1、矢部 嘉浩2

 

【方法】当院および関連施設でXcoreを用いた脊椎前方後方固定術を施行し1年以上経過した38例を後ろ向きに以下の項目を検討した。検査項目:適応疾患、手術時年齢、手術時間、出血量、術前,術直後,最終観察時の後弯角、術後合併症の有無、新規椎体骨折の有無、再手術の有無。

【結果】適応疾患は骨粗鬆性椎体骨折が24例で最も多かった。手術時年齢は平均73歳で手術時間は平均314分、出血量は平均290gであった。後弯角は術前29度、術直後10度、最終13度であった。術後感染症はなく、運動麻痺などの神経合併症はなかった。新規椎体骨折は3例に発生していた。新規骨折をおこした3例に再手術が行われていた。

【考察】高度の椎体変形・圧壊をともなった脊椎疾患・外傷に対し、前方後方固定術は有用であるが、術後経過が不良な例も散見されている。術後不良例について考察し報告する。

41.腰椎椎体骨折を伴った腰部脊柱管狭窄症に対するOLIF(側方腰椎椎体間固定術)の経験

 

シムラ病院 整形外科

 

村田 英明(むらた ひであき)、池尻 好聡、小林 知宏、浅野 圭、吉岡 徹、沖本 信和

 

【目的】骨粗鬆性椎体骨折(OVF)を来した後、不安定性、椎体変形あるいはアライメント異常を来した腰部脊柱管狭窄症(LCS)に対する治療には難渋する。今回OVFを伴ったLCS症例に対するOLIFの治療経験を報告する。

【症例】71歳男性。2.3年前より腰部脊柱管狭窄症診断。平成29年9月の中旬頃米俵を上げた際、腰部痛出現。徐々に痛みの為歩行困難・体動困難となった。他院に1ヶ月間入院するも歩行困難続き、11月当院紹介となる。初診時L4破裂骨折にL4/5棘間靭帯断裂を認め、Chance骨折の亜型でAO分類はType-B2。L3/4およびL4/5には重度狭窄を認めた。腰椎BMDはYAM67%、JOA17点。手術はまずL4にBKPを行った。スクリュー挿入の邪魔にならない様に必要最小限のセメント量7ccを用いた。次いでL3/4・L4/5のOLIFを行った。使用ケージ高はL4/5に14mm12°、L3/4に12mm12°のケージを使用した。 術後間接的除圧は達成され、神経症状は消失した。

42.骨粗鬆症性椎体骨折に対するmini open anterior approachを用いた前方・後方脊柱再建術

 

JA広島総合病院 整形外科 脊椎・脊髄センター

 

福井 博喜(ふくい ひろき)、田中 信弘、山田 清貴、橋本 貴士、平松 武、丸山 俊明、藤本 吉範

 

【目的】経皮的椎体形成術(PV)は,骨粗鬆性椎体骨折に対する有効な治療法である。しかしながら,高度な椎体変形例にPVは応用しがたく,脊柱再建が必要である。本発表の目的は,PV困難例に対するmini-open anterior approachを用いた前方・後方脊柱再建術の治療成績を検討することである。

【方法】本法の適応は,骨粗鬆症性椎体骨折のなかで椎体が前後に離断した症例とした。評価項目を,腰痛(VAS),活動性(ODI),局所後弯角,周術期合併症,固定隣接椎体骨折として,治療成績を前向きに検討した。

【結果】2012年4月〜2018年3月の6年間に,本法を14例(平均73歳)に施行,術後経過観察期間は平均15か月であった。平均VAS,ODIは,術前69mm,69%が, 術後32mm,52%に改善した(P<0.05)。平均局所後弯角は術前38°が術後12°,矯正損失は平均10°,周術期合併症はなかったが,術後隣接椎体骨折2例,インプラントの緩み4例に後方固定を延長した。

【結論】Mini-open anterior approachを用いた前方・後方再建術は有用な術式である。

43.高度圧潰を呈する骨粗鬆症性椎体骨折に対する同種骨を用いた手術治療の検討

 

明野中央病院 こつ・かんせつ・リウマチセンター

 

吉岩 豊三(よしいわ とよみ)、中村 英次郎、原 克利、藤川 陽祐

 

【はじめに】中下位腰椎の骨粗鬆症性椎体骨折による手術的治療は、しばしば難渋することがある。今回われわれは、高度の骨粗鬆症性椎体圧潰を伴った症例に対して、同種骨を用いた脊椎固定術の治療成績を検討した。

【対象と方法】椎体前方高が40%以上の圧潰したものを高度圧潰とし、同種骨を用いて手術を受けた5例を対象とした。平均年齢83歳、全例女性であった。手術方法は、椎体間のスペースがcageに不適合な場合に同種骨を充填した。手術時間、術中出血量、JOA score、術後矯正角度、矯正損失、screwのゆるみ、新規椎体骨折を調査した。

【結果】平均手術時間は179分、平均出血量は139mlであった。JOA scoreは術前平均6点が、術後20.2点に改善した。術後矯正角度は4.4°であり、矯正損失は8.4°、4例にゆるみを認めたが、JOA scoreとの関連はなかった。新規椎体骨折は2例にみられた。

【考察】骨粗鬆症性椎体骨折は、骨の脆弱性に加え、高度の圧潰により椎体間が拡大している際に、前方での支持性の低下が危惧される。同種骨を可及的に椎体間に充填することで、前方支柱を再建する本術式は、高齢者に対する侵襲を考慮すると有用であると思われた。