第91回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題6)

44.超高齢者に対し施行した腰椎後方固定術(facet fusion)の成績

 

徳島県立中央病院 整形外科

 

小坂 浩史(こさか ひろふみ)、岩瀬 穣志、濱口 隼人、宮城 亮、江川 洋史

 

【はじめに】当院にて80歳以上に施行した2椎間までの腰椎後方固定術(facet fusion)の成績を報告する。

【対象】2015年以降、上記手術を行い術後1年以上フォローし得た8例(男性3例女性5例)11椎間、平均年齢83(80〜87)才、経過観察期間21.5(12〜42)ケ月を対象とした。

【方法】臨床成績として術前、最終調査時のJOA scoreおよび改善率。画像評価としてインプラント破損及び隣接椎間障害の有無、骨癒合率を用いた。

【結果】JOA scoreは術前9.5点が最終調査時18.2点、改善率は43.6% であった。内固定材破損は無し、隣接椎間障害は3/15(20%)椎間に認めた。骨癒合は9/11(81.8%)椎間であった。

【考察】80歳以上に対する腰椎手術の成績はJOA score改善率は50〜60%との報告が多く、我々も同様であった。隣接椎間障害はPLIFが20〜30%との報告が多い中PLF,facet fusionが10%程度と報告されており少し高い結果となった。骨癒合率は81.8%と良好であった。

【まとめ】80歳以上に施行した腰椎後方固定術(facet fusion)の臨床、画像成績ともおおむね良好であり固定術の適応があり、手術に同意を得られた場合は積極的に手術を考慮してもよいことが示唆された。

45.骨粗鬆症性椎体骨折手術における棘突起プレートの有用性

 

兵庫医科大学 整形外科

 

有住 文博(ありずみ ふみひろ)、橘 俊哉、楠山 一樹、圓尾 圭史

 

【はじめに】骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)手術の問題点として、骨脆弱性に起因するスクリューの緩みやバックアウト、矯正損失があげられる。また高齢者に対する手術であり低侵襲手術が望まれる。

【目的】当院ではOVFの後方固定術に棘突起プレートを併用しており、その有用性を評価した。

【対象と方法】2015年10月から2018年12月までにOVF手術に棘突起プレートを使用した9例(男性4例, 女性5例, 平均年齢77歳)を対象とした。検討項目は、手術方法、術前後局所後弯角、矯正損失、周術期合併症である。

【結果】手術方法はBKPが1例、前後方固定術が2例、椎体形成+ 後方固定術が5例、後方固定術が1例であった。平均局所後弯角は術前23.1度、術直後2度、最終経過観察時は7.7度、矯正損失は平均5.7°であった。合併症は固定最上位椎体の骨折を3例、創部感染を1例認めた。

【考察及び結論】棘突起プレートは手技が簡便であり比較的低侵襲に行える。椎体は脆弱であるが棘突起の骨質は保たれている場合が多く、後方固定術の補強材料の一つとして有用と考える。

46.陳旧性骨粗鬆症性椎体骨折を伴う椎間孔狭窄に対する全内視鏡下椎間孔形成術の有用性

 

徳島大学 整形外科

 

石濱 嘉紘(いしはま よしひろ)、眞鍋 裕昭、手束 文威、山下 一太、高田 洋一郎、酒井 紀典、西良 浩一

 

Transforaminal approach による全内視鏡下ヘルニア摘出術(FED)は小皮切で背筋群のダメージも少ない局所麻酔下で行うことができる最小侵襲のヘルニア手術である。我々は同手法を応用し, 椎間孔狭窄への全内視鏡下椎間孔形成術(FELF), 外側陥凹狭窄への全内視鏡下腹側椎間関節切除術(FEVF)と発展させ, これらの手術は合併症を多く有する高齢者においても有用である。今回, 陳旧性骨粗鬆症性椎体骨折に伴う椎間孔狭窄に対するFELFの有用性について報告する。骨折に伴うKambin's Triangleの狭小化を認め, exiting nerve root(ENR)の刺激症状に注意を要するが, outside-in法での内視鏡視下に上関節突起外側・腹側を掘削することで椎間孔拡大は可能である。局所麻酔下に手術を行い, 手術を完遂できなかった症例は認めなかった。術後ENR損傷を含む合併症なく, 術前の下肢神経症状は全例改善した。

47.椎体骨折における遅発性麻痺の治療成績に影響する因子

 

鳥取大学 整形外科

 

小川 慎也(おがわ しんや)、谷島 伸二、谷田 敦、武田 知加子、三原 徳満、永島 英樹

 

【目的】椎体骨折における遅発性麻痺患者の治療成績に影響を与える因子について検討を行った。

【対象】2008年4月から2018年4月までに当院で脊椎後方固定術を行った椎体骨折における遅発性麻痺症例15例を対象とした。これらを術前後のAmerican Spinal Injury Association(ASIA)scoreで改善があった群(A 群)となかった群(B 群)に分け,年齢,性別,骨折椎体,肝機障害・腎機能障害,びまん性特発性骨増殖症(DISH), 糖尿病,低栄養状態,貧血,骨粗鬆症治療の既往について検討を行った。

【結果】A群は7例,B群は8例であった。骨折椎体はA群でL1が4例,B群ではT12が5例で最多となった。上記項目の検討では両群で有意な差は認めなかった。

【考察】糖尿病やDISH,低栄養などは椎体骨折による遅発性麻痺の治療成績に悪影響を与えない結果となった。上記リスクを有した遅発性麻痺症例でも入念な術前計画によりリスクを有さない症例と同等の治療成績が期待できると考えられる。

48.骨粗鬆症性椎体骨折後偽関節による遅発性神経障害に対する手術法の検討

 

広島大学大学院 整形外科

 

原田 崇弘(はらだ たかひろ)、中西 一義、亀井 直輔、中前 稔生、森迫 泰貴、土川 雄司、安達 伸生

 

【はじめに】骨粗鬆症性椎体骨折は,偽関節となり遅発性神経麻痺を呈する例が見受けられる。

【目的】このような症例に対し,当科では主にvertebral column resection(VCR)または椎体形成と後方固定を併用した手術(vertebroplasty, pedicle screw;VP)を施行している。これらを比較検討したので報告する。

【対象と方法】2011年3月から2018年2月の間,VCRまたはVPを施行した12例(VCR群5例,VP群7例)を対象とした。年齢,性別,手術時間,出血量,術後輸血量,術前後のJOA score,術直後の矯正角・術後1年の矯正損失について両群で比較検討した。

【結果】VCR群とVP群において,平均年齢は72.8歳と74.1歳,手術時間は288分と146分,出血量は705mlと300ml,輸血量は2.8単位と0.3単位,JOA score は15.5(術後23.5)点と12(術後15)点,骨折椎体矯正角は22.6°と6.8°,固定椎間矯正角は28.4°と6.5°,骨折椎体矯正損失は0.8°と7.3°,固定椎間矯正損失は4.4°と7.5°であった。

【考察】VCRは矯正損失が少なく後弯矯正に適しているが,VPは低侵襲で術後の歩行機能回復は良好であり有用な治療法と考えられた。

49.骨粗鬆性椎体骨折後の椎体圧壊に伴う遅発性神経障害に対する手術 〜腰椎骨折後の進行性椎体圧壊、後壁突出、頭尾側終板・椎間板損傷〜

 

徳島県鳴門病院 整形外科

 

千川 隆志(ちかわ たかし)、百田 佳織、山ア 悠平、竹内 誠、高橋 芳徳、日比野 直人、邉見 達彦

 

【目的】骨粗鬆性椎体骨折後遅発性神経障害の症状は、骨折高位や脊柱管内・外障害部位、不安定性の有無に起因して極めて多様である。それにより術式も固定方法や固定範囲、除圧の有無など議論がある。今回腰椎例の骨粗鬆性椎体骨折後の椎体圧壊に伴う遅発性神経障害に対する手術方法を報告する。

【対象と方法】昨年当科で手術を行った2例女性で、年齢は71歳と74歳である。共に保存治療中に椎体圧壊(L5とL3)が進行し遅発性神経障害が出現した。手術は、罹患椎体の頭尾側椎体間の不安定な椎体終板と椎間板を郭清し局所自家骨に加え同種骨を使用し充分な骨移植とExpandable cageによる2椎間前方再建を行い、後方は1 above - 1 blowのshort fusionでHA stick、ネスプロンテープで補強し、同種骨でPosterolateral fusionを行なった。術前よりテリパラチド投与し、術後3ヶ月ギプスから硬性コルセット装着した。

【結果及び考察】短期成績であるが2例とも骨癒合が得られ、神経学的にも改善した。今回腰椎レベルの骨粗鬆性椎体骨折の陳旧例で椎体圧壊、後弯変形症例に対して最小の固定範囲で良好な結果が得られた。

50.骨粗鬆症性椎体骨折後の遅発性脊髄麻痺に対して経皮的椎体固定術を行った症例の検討

 

JR広島病院 整形外科

 

藤岡 悠樹(ふじおか ゆうき)、佐々木 正修、土井 一義、須賀 紀文、中村 精吾、村尾 保、木戸 佑基

 

椎体骨折後遅発性脊髄麻痺に対して経皮的椎弓根スクリュー(PPS)を用いて後方固定術を行った11例(男性3例、女性8例、69〜88歳、平均81.2歳)を調査した。骨折椎体高位は、第11胸椎が2例、第12胸椎が8例、第1腰椎が1例で、いずれも脊髄円錐上部または円錐部を圧迫していた。全例で下肢筋力低下を認め、下垂足を8例に認めた。受傷から手術までの期間は平均5.3ヵ月であった。併存症として認知症を5例に、糖尿病を4例、虚血性心疾患を3例に認めた。手術はin situで固定を行い、骨移植は2例で椎弓後面に、3例で棘突起間に行い、7例で骨移植を行わなかった。2例で除圧を行い、7例で除圧を行わなかった。術後経過観察期間は平均1年6ヵ月で、全例で骨癒合が得られた。周術期以降に6例でテリパラチドを、3例でビスホスホネートを使用した。神経症状は、2例でFrankel CからEに改善し、8例でCからDに改善した。