第92回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題1)

1.術中 3D C アームナビゲーションと 顕微鏡ナビリンクシステム を用いた外側開窓術

 

広島市立安佐市民病院  整形外科・顕微鏡脊椎脊髄センター

 

藤原 靖 (ふじわら やすし)、大田 亮、古高慎司、角西 寛、泉 聡太朗、谷本佳弘菜、橋口直史、西森 誠、真鍋英喜

 

【はじめに】 腰椎外側開窓術は椎間孔狭窄に対し広く用いられているが、術中オリエンテーション把握が難しいのが問題である.我々は3D C アームを用いた術中 CT ナビゲーションと顕微鏡ナビリンクシステムを組み合わせて工夫したので報告する。

【方法】 患者を腹臥位としてベッド柵、腸骨翼あるいは棘突起にリファレンスガイドを装着し、シーメンス社フラットパネル型 3D C アーム Cios Spin を用いて術中 CT を撮影し、ブレインラボ社製ナビゲーションシステムに転送しナビゲーションを行った。

さらに顕微鏡本体にもリファレンスガイドを設置し、ブレインラボ社製顕微鏡ナビリンクシステムを用いて顕微鏡の焦点位置を顕微鏡視野内に表示しながら手術を行った。

【結果】 小切開でも解剖学的構造を正確に把握でき、安全確実に手術を行うことが可能であった。

【考察】 フラットパネル型3D C アームの発展により、術中 CT ガイド下ナビゲーションは急速に普及しつつある。従来ナビゲーションはスクリュー挿入で主に用いられてきたが、外側開窓術にも有用と考えられた。

2.腰椎変性すべり症に伴う脊柱管狭窄615例に対する顕微鏡視下後方除圧術の X 線学的検討

 

広島市立安佐市民病院  整形外科・顕微鏡脊椎脊髄センター

 

古高慎司(こたか しんじ)、藤原 靖、Hu Yawei、大田 亮、橋口直史、真鍋英喜

 

【目的】当科では腰椎変性すべりに伴う脊柱管狭窄症に対し、顕微鏡視下後方除圧術のみを行ってきた。今回、腰椎変性すべり症に伴う脊柱管狭窄症に対して固定を行わず顕微鏡視下後方除圧術のみを施行した症例の術前後の X 線変化を検討したので報告する。

【対象】腰腰椎変性すべり症に伴う脊柱管狭窄に対し、顕微鏡視下後方除圧術を施行した 615 例を対象とした。検討項目は,術前後のすべり率と椎間板高、側方開大角とそれぞれの術前後での変化量とした。また、術前のすべり率が 15% 以上の症例を H 群(307例)、15% 未満の症例を L 群(220例)の 2群に分け、比較検討した。

【結果】全症例について、すべり率と椎間板高、側方開大角に術前後で有意差を認めなかった。

H 群と L 群の 2 群間で比較検討すると、すべり率の変化量は H 群が有意に小さかった。椎間板高と側方開大の変化量にそれぞれ有意差を認めなかった。

【考察】研究の結果、顕微鏡視下後方除圧術による有意な画像的変化は認めなかった。また、すべり率の大きい症例ではむしろ術後すべり率の変化量は有意に少なかった。

3.成人脊柱変形患者における腰椎 CT ハンスフィールド値の検討

 

岡山大学 整形外科

 

山根健太郎(やまね けんたろう)、瀧川朋 亨、三澤治夫、鉄永倫子、村岡聡介、辻 寛謙、高尾真一郎、尾ア敏文

 

【目的】CT ハンスフィールド値(CT 値)は骨密度と高い相関性を示し、骨強度の推定が可能である。本研究の目的は、側弯を有する成人脊柱変形患者の腰椎 CT 値を非側弯症例と比較検討することである。

【方法】当院で2008 年6 月以降に転移性脊椎腫瘍に対する手術加療を行い、術後6ヶ月以上経過観察可能(6ヶ月未満で死亡した症例は死亡時点まで)であった70例を後ろ向きに検討した。原発巣、徳橋スコア、手術方法、手術時間、出血量、合併症、術後生存率を検討した。

【方法】胸腰椎または腰椎側弯を有する成人脊柱変形患者(ASD 群)で手術を施行された 22例を対象とした。何らかの腰椎手術を施行され側弯を有さない患者 20例を対照群とした。平均年齢は ASD 群 70歳、対照群 76歳であった。立位単純 X 線で Cobb 角、L1-L5 前弯角を、術前 CT で L1 から L5 の椎体別の冠状断面左右、矢状断面前後の CT 値を計測した。

【結果】平均 Cobb 角は ASD 群:43°、対照群:6°で平均前弯角は ASD 群:− 2°、対照群:24°であった。ASD群凹側の平均冠状断面CT値と平均矢状断面CT値は、各椎体において対照群の平均CT値と比べ有意に大きかった。

【考察】側弯を有する成人脊柱変形患者では凹側と矢状断面の CT 値は対照群よりも大きく、同患者の椎体強度は側弯を有さない患者より高いことが示唆された。

4.高齢腰痛患者に対する体幹装具療法 −CT 画像を活用した 3D デジタル技術応用体幹装具製作−

 

総合せき損センター 整形外科 1、株式会社 有薗製作所 2、九州大学 大学院システム情報科学研究院 3、総合せき損センター 中央放射線部 4、総合せき損センター 医用工学研究部 5

 

久保田健介(くぼた けんすけ)1、千々和直樹 2、諸岡健一 3、宮内翔子 3、安部浩一 4、近藤啓剛 4、 山本賢治 4、矢野良治 4、吉田 徹 4、 江原喜人5、河野 修1,4,5、前田 健1,4,5

 

 超高齢社会となった本邦では、高齢(70歳以上)の腰椎疾患患者が増加しており、手術療法とともに、保存療法の重要性が増している。保存療法の一役を担う体幹装具(コルセット)は、義肢装具士の採型・採寸を経て作成されるため、その技量により品質にバラつきが生じる。そこで、我々はこれまでに CT 画像から抽出した患者の体表形状データに基づいて設計した体幹装具を 3D プリンターで造形し、従来の軟性コルセットより良好な装着感を得ることに成功した。

 本研究では、腰痛を主訴とする 70 歳以上の腰椎変性疾患患者4例に、3D プリンター装具を作成した。そして、従来の方法で作成された軟性コルセットと、痛みや装着感、快適性の違いについてヒアリングを実施した。その結果、4例中3例で3D プリンター装具の方がフィット感が高く快適であり、腰痛の出現頻度も低いとの回答を得た。

 今後、症例を蓄積し、本技術に改良を重ねていくことで、品質にバラつきのない体幹装具を安定的に供給するシステムが構築できるかもしれない。

5.高齢者に対する経椎間孔的腰椎椎体間固定術(TLIF) における矢状面アライメントの検討

 

大分大学 整形外科

 

石原俊信(いしはら としのぶ)、宮崎正志、阿部徹太郎、津村 弘

 

【目的】TLIF において、年齢の違いが術後の矢状面アライメントに与える影響について検討した。

【方法】 2011年11月より当院において、単椎間(L4-5)の TLIF を施行した 38 例を対象とした。これらの症例を、若年群(75歳未満)と高齢群(75歳以上)に分け、術前、術後1年時の腰椎前弯角(total LL)、局所前弯角(L1-2 から L5-S1)を計測した。また術前後での変化量( Δ )をそれぞれ算出した。

【結果】若年群は 21例(男性 7例、女性 14例、平均64.9歳)、高齢群は 17例(男性 6例、女性 11例、平均 79.0歳)であった。術前は 2群間で有意な差を認めなかったが、術後は隣接椎間である L3-4 において若年群で大きい値(10.8°vs 7.8°)であった。また、若年群においてΔ L4-5 と術後 L3-4、ΔL3-4 の間で、それぞれ負の相関(r =-0.51、r =-0.59)を認めたが、高齢群では有意な相関はなかった。

【考察】若年群においては L4-5 の前弯角獲得が不十分であった際、隣接椎間である L3-4 が代償し、局所前弯角が増大するが、高齢群においては、隣接椎間での代償が働かないことが示唆された。