第92回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題3)

11.高齢者臨床的脊椎椎体骨折が手術に至る割合 〜広島県呉市におけるレセプトデータを利用した 解析(第2報)〜

 

中国労災病院1、呉市地域保健対策協議会骨粗しょう症地域包括医療体制検討小委員会2、沖本クリニック3、マッターホルンリハビリテーション病院4、呉共済病院5、呉中通病院6、済生会呉病院7、呉医療センター・中国がんセンター8、呉市福祉保健課9

 

中国労災病院 1、呉市地域保健対策協議会骨粗しょう症地域包括医療体制検討小委員会 2、沖本クリニック 3、マッターホルンリハビリテーション病院 4、呉共済病院 5、呉中通病院 6、済生会呉病院 7、呉医療センター・中国がんセンター 8、呉市福祉保健課 9

 

【目的】 前回の本学会で広島県呉市における臨床的椎体骨折の発生率を行政との連携によるレセプトデータから解析し報告した。今回われわれは前回報告したデータから手術に至った症例を抽出して、発症した椎体骨折が手術に至る割合を解析したので報告する。

【方法】対象は 2015年に当市で国保・後期高齢者被保険者のレセプトデータから傷病名に椎体骨折があり、かつ処置/手術/入院のいずれかがあるものを臨床的椎体骨折とみなし検討した。さらに上記条件内で手術施行したものを 2015-2016年の 2年間のレセプトで抽出し解析した。

【結果/考察】2015年における65歳以上の臨床的椎体骨折の100,000人あたりの発生率は1,558( 男性729、女性2,117) であった。国保データでは椎体骨折発生数121例中、経皮的椎体形成術7例(5.8%)、脊椎固定術6例(5.0%)、後期高齢者データでは椎体骨折発生数933例、経皮的椎体形成術34例(3.6%)、脊椎固定術19例(2.0%)だった。そもそも臨床的椎体骨折の発生率についての報告は少ないが、手術に至る割合についての報告は渉猟し得ず、本邦初の報告と思われる。

12.腰椎椎体骨折を伴う腰部脊柱管狭窄症の治療成績

 

総合せき損センター 整形外科

 

小早川 和(こばやかわ かず)、河野  修、久保田健介、林  哲生、森下雄一郎、益田宗彰、坂井宏旭、高尾恒彰、森  英治、前田  健

 

【背景と目的】腰椎椎体骨折と腰部脊柱管狭窄症は共に高齢者に頻度の高い疾患であり、両者を合併する患者も少なくない。骨折椎体に隣接する椎間に脊柱管狭窄がある症例に対して、我々は部分椎弓切除による除圧や、PLF による椎体間固定を行ってきた。今回これら除圧および固定術の治療成績を比較検討する。

【方法】2007年から 2019年に腰椎椎体骨折の隣接椎間での脊柱管狭窄症に対して除圧もしくは除圧固定術を施行した 70歳以上の患者 23名について術前後の腰痛・下肢痛の経過、レントゲン等画像所見を検討した。

【結果】除圧、除圧固定どちらの術後にも腰痛・下肢痛は軽快した。経過中に除圧群で 10例中 1例の新規椎体骨折が生じたが、除圧固定群では 13例中 7例の新規腰椎椎体骨折を発症し、腰痛が再燃した (P < 0.05, Fisher’s exact test)。

【結語】粗鬆症性椎体骨折の隣接椎間における腰部脊柱管狭窄症は除圧術のみでも経過良好であり、固定術は新規骨折発症等の可能性に留意して慎重に適応を判断する必要があると思われた。

13.70歳以上の骨粗鬆症性腰椎骨折に対する後方固定術

 

県立広島病院 整形外科

 

西田幸司(にしだ こうじ)、櫻井 悟、松村脩平、松下亮介、松尾俊宏、井上博幸、望月 由

 

【目的】高齢化社会が進み,腰椎圧迫骨折の症例数は増加傾向である。それに伴い、保存的治療が困難で手術対象となる患者さんも増加している。本研究の目的は、当科における 70歳以上の骨粗鬆症性腰椎骨折に対する後方固定術について調査することである。

【対象と結果】2008年 4月より 2019年 3月までに DISH を除く骨粗鬆症性腰椎骨折に対して、後方固定術を施行した15名のうち,70歳以上の12名を対象とした。男子4名、女性8名、平均年齢は 77歳(70-86)であった。

 骨折高位は、L1 10例、L2 3例、L4 1例(L1,2 合併 2例)、固定椎体数は 3椎体 2例,5椎体 7例、6椎体 3例であった。手術時、cleft の存在 した9例には HAブロックを使用した椎体形成を、 1例には前方固定を併用していた。9例が遅発性麻痺後であり、3例が疼痛に対して手術を施行していた。

 手術症例は 70歳以上が 80%(12/15)と高率であり、骨も脆く、個々の症例に応じた対応が必要であった。

14.70歳以上の高齢者に生じた骨粗鬆症性椎体骨折後遅発性神経障害に対する手術治療成績と問題点

 

松山市民病院 整形外科

 

住吉範彦(すみよし のりひこ)

 

【目的】高齢者における骨粗鬆症性椎体骨折後に生じた遅発性神経障害 (DND) に対する手術治療成績と問題点を明らかにすること。

【対象・方法】骨粗鬆症性椎体骨折後 DND と診断され、手術を施行した 70歳以上の高齢患者 19例を対象とした。手術は経皮的椎体形成術を 17例に行い、14例に後方除圧術、7例に後方固定術を追加した。後方除圧固定術のみを1例、椎体置換術および後方除圧固定術を1例に行った。治療開始時および最終経過観察時の modified Frankel 分類、下肢痛・しびれの程度、治療経過中の問題点について調査した。

【結果】18例は modified Frankel 分類で 1段階以上の改善を認めたが、認知症が進行し改善が得られなかった例が 1例存在した。腰痛および下肢痛は全例で改善を認めた。周術期に誤嚥性肺炎を繰り返し 3ヶ月後に死亡した例が 1例、椎弓根スクリューの緩みを 6例に認め、1例は抜釘術を要した。

【結語】高齢者に生じた DND に対し手術治療が有効な例が多かった。ただし誤嚥性肺炎や認知症の進行が問題となり、スクリューの緩みを来す症例も多く、注意を要する。

15.当院での 70歳以上の下位腰椎骨折に対する後方固定術の成績

 

産業医科大学 整形外科

 

吉田周平(よしだ しゅうへい)、邑本哲平、山根宏敏、中村英一郎、酒井昭典

 

【目的】当院での下位腰椎椎体骨折の手術成績を報告すること

【対象】2008年から 2018年に当院で下位腰椎骨折に対して手術を行った 70歳以上の3例(男性 1例、女性 2例)。平均年齢は 79.7歳(72 . 84歳)。フォロー期間は平均 44ヶ月。

検討項目は 1) 罹患椎体 2) 術式 3) 術前椎体圧壊率 4) 固定椎体前弯角、LL の変化(術前、術後、最終観察時) 5)screw loosening 6) 骨癒合率で検討した。

【結果】罹患椎体はすべて L 4。術式は PLF 単独が 1例、+ L4椎体形成が 1例、+椎体内骨移植が 1例であった。術前椎体圧壊率は平均 77%、固定椎体前弯角は術前平均 -10.1度、術後平均 21.4度、最終観察時平均 -13.6度。LL は術前平均 11.2度、術後平均 15.5度、最終観察時平均 -29度と全例で矯正損失を認めた。screw loosening は全例で認めた。骨癒合は全例で得られなかった。

【考察】前弯位が必要となる下位腰椎骨折に対して後方固定のみでは矯正損失が生じるため、前方支柱再 建の必要性は高い。

16.当院における Expandable cage の治療成績

 

独立行政法人労働者健康安全機構 岡山労災病院

 

藤原吉宏(ふじわら よしひろ)、田中雅人、山内太郎、魚谷弘二

 

【目的】 当院で腰椎圧迫骨折及び破裂骨折に行った Expandable cage を用いた前方後方固定術の手術成績を報告することである。

【対象と方法】2012 〜 2015年の間に、シンケージ Ex を用いて椎体置換術を施行した S群 3例(男 2 女 1 平均年齢 80歳 平均観察期間 5年)と、2018年より使用している X-core2 を用いた X群 3例(男 2 女 1 平均年齢 84歳 平均観察期間 半年)を比較検討した。

いずれの症例も 1 椎体の椎体置換術後に上下 1椎体の椎弓根スクリューを用いて固定を施行した。検討項目として手術時間、出血量、手術直後と最終観察時の局所後弯角を調査した。

【結果】手術時間はS群で平均392分、X群で平均212分、出血量は S 群で平均 995ml、X 群で平均 830ml であった。局所後弯角は S 群で術直後平均 8°、最終観察時平均 27°、X 群で術直後平均 -11°、最終観察時平均 -3°であった。

【考察】 シンケージ群に対して X-core 群の局所後弯角の変化は明らかに少なかった。フットプリント型の cage は椎体との接触面積が大きく矯正損失に有利と考えられるが、X-core 群での経過観察期間が短いこともあり更なる経過観察を必要とする。