第92回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題4)

17.当科における高齢者の慢性腰痛関連疾患の治療の特徴

 

医療法人 相生会 福岡みらい病院 整形外科・脊椎脊髄病センター

 

裄V義和(やなぎさわ よしかず)、大賀正義

 

【はじめに】平成22年国民生活調査で腰痛の有訴率は男性で1位、女性で2位である。今回、当科における高齢者の慢性腰痛関連疾患の治療内容と経過を検討したので報告する。

【方法】2018.4月から 2019.3月まで受診した外来患者 132例(男 : 女 =58:74、平均年齢 : 62.3歳)を、70歳以上の高齢者群 58例(男 : 女 =20:38、平均年齢 : 78.0歳)と 70歳以下の若年者群 74例(男 : 女 =38:36、平均年齢 : 50.0歳)にわけて治療内容と治療結果などを検討した。

【結果】治療内容で薬物治療単独群は高齢者群に多かった(高齢者群 : 若年者群 =54%:33%)が、運動療法単独もしくは併用群は若年者群に多かった ( 高齢者群 : 若年者群 =65%:33%)。また手術は高齢者群に多かった ( 高齢者群 : 若年者群 =13%:2%)。経過良好であったのは高齢者群に多かった ( 高齢者群 : 若年者群 =48%:27%)。

【考察】下肢症状のない腰痛単独群が若年者群に多かったことが治療法選択に差が出たと考えられた。経過に関しては若年者群に再来なしの割合が多く、非再来者の経過は追跡調査する必要性あるが、再来し治療継続して頂く工夫をすることで、治療成績がさらに改善できた可能性も示唆された。

18.高齢者腰椎変性側弯症における腰痛と骨髄浮腫の関連性

 

広島大学大学院 整形外科学 1、JA 広島総合病院 整形外科 2

 

中前稔生(なかまえ としお)1、藤本吉範2、山田清貴2、 中西一義1、亀井直輔1、土川雄司1、森迫泰貴1、原田崇弘1、安達伸生1

 

【目的】高齢者の腰椎変性側弯症(DLS)における腰痛の病態については明らかになっていない。本研究の目的は腰痛と椎体終板の骨髄浮腫(BME)の関連および腰痛の関連因子について検討することである。

【対象と方法】Cobb 角 10 度以上の de novo DLS 患者を対象とした。腰痛のある患者とない患者を比較し、腰痛と MRI における BME の関連性、さらに腰痛関連因子について検討した。

【結果】腰痛群は 64例、対照群は 56例であり両群間で年齢、性別、BMI、Cobb 角に関して有意差を認めなかった。椎間板腔バキューム、椎体終板骨硬化、BME は側弯凹側部に有意に認めた。BME 陽性率は、腰痛群 96.9%、対照群 37.5%であり腰痛群で有意に高かった。ロジスティック回帰分析では、腰痛に関与する因子として BME が挙げられた。

【結論】BME が高齢者 DLS 患者の腰痛と強い関連を認めた。高齢者 DLS の腰痛は、側弯凹側の椎体終板に負荷される生体力学的ストレスである可能性がある。

19.腰椎椎体終板障害における腰痛の病態解明

 

広島大学 大学院医系科学研究科 整形外科学1、広島大学病院 診療支援部 画像診断部門2

 

森迫泰貴(もりさこ たいき)1、中前稔生1、亀井直輔1、中西一義1、土川雄司1、原田崇弘1、田村隆行2、安達伸生1

 

【目的】高齢者の腰痛変性疾患を有する患者は腰痛を呈することが多い。近年、腰痛と椎体終板障害との関連が報告されているが、その病態については解明されていないことが多い。われわれは基礎研究としてラットの腰椎椎体終板障害モデルを作成し、画像および疼痛関連行動について評価を行なったので報告する。

【方法】SD ラットを用い経腹膜的に前方から L4/5 椎間板を掻爬し、Injury 群とした。また前方から L4/5 椎間板の露出のみを行なった Sham 群を作成した。Injury 群と Sham 群に対し、処置後 1、4、8、12週で MRI による画像評価を施行し、さらに処置後 1、4、8、12週で疼痛関連行動の評価を行った。

【結果】MRI では Injury 群で処置後4週より椎体終板の不整を認め、処置後8週では T1 強調像と T2 強調脂肪抑制像において椎体終板に低信号領域を認めた。行動学的評価では Injury 群が Sham 群より起立時間が少なかった。

【考察】ラットの椎間板を掻爬することで腰椎椎体終板障害モデルを作成することに成功した。今回の検討で基礎研究においても腰痛と椎体終板障害が関与している可能性がある。高齢者の腰痛の病態を把握する上で、本モデルを用いての研究は有用である。

20.高齢者腰椎変性側弯症の腰痛に対するターゲット療法の中長期成績

 

JA 広島総合病院 整形外科 脊椎・脊髄センター

 

山田清貴(やまだ きよたか)、田中信弘、平松 武、橋本貴士、丸山俊明、福井博喜、藤本吉範

 

【目的】高齢者腰椎変性側弯症(DLS)に伴う腰痛に対し、MRI にて骨髄浮腫を認める椎間に経皮・経椎弓根的 に PMMA を 椎 間 バ キ ュ ー ム 内 に 注 入 す る Percutaneous Intervertebral-vacuum PMMA Injection (PIPI) の中長期成績を報告する。

【方法】2004 〜 2011年に PIPI を施行した Cobb 角 10度以上の de novo DLS 101例のうち、70歳以上で術後 2年以上経過観察し得た 69例(男性 15例、 女性 54例、平均 77歳。術後経過観察期間 59か月)に対し VAS、ODI の推移と腰痛再燃の有無を調査した。

【結果】平均 VAS、ODI は術後 1 か月から有意に改善し、43例は腰痛の再燃はなかった。腰痛再燃(術後平 均33か月)は隣接椎間での再燃が 11例、遠隔椎間 6例、PIPI 施行椎間 9例であり、腰痛が高度であった 18例は再度 PIPI を施行し腰痛が改善した。

【結論】PIPI は高齢者 DLS の腰痛に対し中長期的にも良好な成績が得られた.PIPI は BME 再燃例に対しても再度施行でき、高齢者 DLS の腰痛に対し有効な低侵襲手術である。

21.高齢者腰椎変性側弯症における椎間孔狭窄に対する低侵襲治療

 

JA 広島総合病院 整形外科

 

平松 武(ひらまつ たけし)、田中信弘、山田清貴、橋本貴士、 丸山俊明、福井博喜

 

【目的】高齢者腰椎変性側弯症(DLS) に伴う椎体終板障害による腰痛と椎間孔狭窄に伴う下肢痛に対して、経皮的に椎間腔バキューム内に PMMA を注入する percutaneous intervertebral-vacuum PMMA injection (PIPI) の治療成績を報告すること。

【方法】2012 〜 2016年に PIPI を施行した、70歳以上で visual analogue scale(VAS):50mm 以上の腰痛と下肢痛を認めた de novo DLS 症例 21例を対象とした。男性 11例、女性 10例、平均年齢 79.7歳、術後経過観察期間 25か月であり、腰痛と下肢痛の VAS、CT で計測した椎間孔の高さを調査した。

【結果】術前、腰痛の VAS は平均 65.2mm、下肢痛の VAS は平均 71.5mm、椎間孔の高さは平均 10.5mmで、PIPI 後に腰痛の VAS は平均 31.3mm (p<.001)、下肢痛の VAS は平均 27.5mm (p<.001)、椎間孔の高さは平均 12.5mm (p <.05) と有意に改善した。

【考察・結論】PIPIは腰痛のみならず、椎間孔を拡大することで、神経根の間接的除圧により下肢痛も改善可能な低侵襲な術式である。

22.びまん性特発性骨増殖症(DISH)を伴う胸腰椎骨折に対する椎体終板を貫通させる新しいスクリュー挿入法(transdiscal screw for DISH : TSD)と従来法の比較検討

 

香川県立中央病院 整形外科

 

生熊久敬(いくま ひさのり)、廣瀬友彦

 

【目的】高齢の DISH を伴う胸腰椎骨折に対するスクリュー挿入の工夫として 2 枚の椎体終板を貫通する TSD を考案し、椎弓根スクリュー(PPS)と併用し臨床応用してきた。今回、従来法で治療した症例と臨床成績を比較検討したので報告する。

【対象と方法】対象は TSD 併用群 13例(80.3 歳)、PPS を用い 3above3below 以上で固定した 12例(PPS 群 :78.8歳)、open 法で PS を用い 3above3below 以上で固定した 8例(PS 群 :82.5歳)とした。これらの、固定椎間数、スクリュー使用本数、手術時間、術中出血量、インプラントの緩み、骨癒合について比較検討した。

【結果】結果を TSD、PPS、PS の順に示す。固定椎間数は 4.6、5.4、6.2、スクリュー本数は 8.1、12.1、12.6、手術時間(min)は 158.1、151.6、219.7、術中出血量 (ml) は 76、115.4、453.7、インプラントの緩みは PPS 群1例、PS 群 1例に認め骨癒合は最終的に全例に認められていた。

【考察】TSD 併用群は従来法と比較して固定範囲、スクリュー本数、出血量を低減できており経過中にスクリューの緩みは認めず全例に骨癒合が得られていた。TSDは高齢の脆弱なDISH椎体の強いアンカーになり得る。

23.高齢者腰椎疾患に対する硬膜癒着剥離術の有用性

 

川崎医科大学 整形外科

 

渡辺聖也(わたなべ せいや)、中西一夫、内野和也、三崎孝昌、林 範人、射場英明、長谷川 徹

 

【目的】高齢者に対して手術の低侵襲化が求められている。脊柱管内治療として近年我々が行っている経仙骨的硬膜癒着剥離術の有用性を検討する。

【方法】当院で本手技を行った 70歳以上の高齢者 13例である。腰痛 VAS /下肢痛 VAS 値 ( 術直後、1、3か月後 ) よりその有用性を検討する。

【結果】平均年齢 76.2歳、男性 2例、女性 11例。症例は全例、腰部脊柱管狭窄症であった。腰痛 VAS 値は術前 61.0、術直後 27.7、術後1か月は 30.2、術後 3か月は 32.1 であり、下肢痛 VAS 値は術前 72.0、術直後 34.4、術後1か月 37.1、術後 3か月 44.0 であった。周術期合併症は認めなかった。

【考察】本手技の短期成績は比較的良好であるが、術後 1か月以降は徐々に再燃する傾向にあった。また、効例と無効例と二分化する傾向にあるが、手技上で疼痛の強い症例に関しては十分な癒着剥離ができないことが原因の一つと考える。

【結論】本手技は、根治的治療とは言えないものの、とく に 従 来 で は 手 術 導 入 が 困 難 な 高 齢 者 や compromised host には有用な治療法になり得ると考えられた。