第92回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題6) |
31.腰部脊柱管狭窄症における起床時の痛み
JR 広島病院 整形外科
藤岡悠樹(ふじおか ゆうき)、佐々木正修、須賀紀文、中村精吾、村尾 保、木戸佑基
【はじめに】腰部脊柱管狭窄症に特徴的な臨床症状は、立位や歩行で増悪する腰殿部痛、下肢痛である。一方、腰殿部・下肢痛が起床時のみにみられ、日中に間欠跛行を訴えない症例を経験することがある。 【対象および方法】腰部脊柱管狭窄症および腰椎変性すべり症に対して後方除圧術を行った 50例 ( 男性 32例、女性 18例、57 〜 87歳、平均 76.2歳 ) を対象として後向き調査を行った。検討項目は症状による分類、間欠跛行、起床時の痛み、起床時痛の術後経過とした。 【結果】根型 21例、馬尾型 19例、混合型 10例。起床時の痛みは 6例にみられ、根型 1例、馬尾型 2例、混合型 3例であった。全例で起床時の殿部痛を呈し、5例で起床時の下肢症状を伴っていた。 6例中 3例では間欠跛行がみられず、むしろ歩行により症状が改善した。術後は全例で起床時の痛みが軽快した。 【考察】起床時の腰痛は、椎間板性腰痛の症状として報告されているが、腰部脊柱管狭窄症における報告はない。除圧術で改善したため、椎間板性腰痛とは違う病態が考えられる。起床時の症状が強く、日中に間欠跛行がなく、むしろ歩行で症状改善する腰部脊柱管狭窄症として非典型的な臨床像を呈する症例があった。 |
32.腰椎他椎間再手術が必要となる危険因子 −硬膜管面積の比較について−
広島市立安佐市民病院 整形外科・顕微鏡脊椎脊髄センター
大田 亮(おおた りょう)、藤原 靖、古高慎司、真鍋英喜
【はじめに】腰部脊柱管狭窄症に対し他椎間再手術を行った症例に対し、硬膜管面積を測定し比較検討した。 【対象・方法】対象は2002年から2007年に腰部脊柱管狭窄に対し当科独自の除圧術であるSemicircumferential decompression;SCDを行い、2017年までに他椎間SCDを行った80例で、初回手術時年齢は平均 70.1歳であった。初回手術時の手術椎間 (A)、初回手術時の再手術椎間(B)、再手術時の手術椎間(C)の面積を測定し,また同時期に初回SCDを行いその後頚胸椎手術を行った23例の手術椎間の隣接椎間(D)、頚胸椎手術時の隣接椎間(E)の面積を測定し比較検討した。 【結果】AとB、BとCの間には有意差を認めた。AとC、DとEの間には有意差は認めなかった。また、再手術までの期間を 2年未満と 2年以上に分けると、Bで2年未満が有意に小さかった。 【考察】術前に高度の脊柱管狭窄を複数椎間に認める症例では複数椎間除圧を行うことで他椎間再手術の頻度を減らせる可能性があると考える。 |
33.BKP 後も遺残した腰痛に、椎間孔除圧が有効であった2例
広島赤十字・原爆病院 整形外科
小田琢也(おだ たくや)、土井俊郎、有馬準一
【はじめに】骨粗鬆症性椎体骨折(以下 OVF)後に発症した腰臀部痛が BKP で改善せず、椎間孔除圧術追加により疼痛軽快した症例を経験した。 【症例1】88才女性。L1骨折後右腰痛発症。7ヶ月後 BKP。右腰痛改善しないため L1/2 顕微鏡下椎間孔除圧術で疼痛軽減。 【症例2】90才女性。L4骨折後右臀部痛発症。2ヶ月後 BKP。直後は右腰臀部痛改善したが数週後に再燃。 L3/4 顕微鏡下椎間孔拡大術で疼痛軽減。 【考察】経験症例では、骨折とともに生じた片側の腰痛もしくは臀部痛に対し BKP を施行したが疼痛が遺残した。骨折の下位もしくは上位椎間孔除圧術にて症状軽快した。術中所見では 2症例とも椎間孔部で上関節突起腹側黄色靱帯による後根神経節の圧迫を認めた。高齢者では潜在的に椎間孔狭窄が存在することがあり、OVF で神経障害が顕在化した可能性があると考えた。 【結語】胸腰椎移行部の OVF においては椎間孔狭窄顕在化でも下肢症状を伴わない片側の腰痛の場合があり注意を要する。また、その治療には椎間孔除圧術が有効であった。 |
34.腰椎変性疾患による術前足底部のしびれに関連する因子について検討
山口大学大学院医学系研究科 整形外科
今城靖明(いまじょう やすあき)、鈴木秀典、西田周泰、舩場真裕、坂井孝司
【目的】術前に足底部のしびれの有無に関連する因子を検討した。 【対象】腰椎変性疾患による馬尾障害で除圧術を施行され術後 1年以上経過観察可能であった症例のうち、糖尿病(HbA1c6.1未満)がない 47例(男 29、女 18)を対象とした。足底部しびれあり群:33例、なし群:14例で検討項目は年齢、間欠性跛行距離、手術椎間数、手術椎間高位の硬膜管面積、MRIT2 矢 状 断 で の redundant nerve roots (RNR)の有無、横断像での sedimentation sign(SS)の有無、CECT-AH とした。 【結果】あ り 群・ な し 群 で 年 齢:76.5歳、75.22歳 (p=0.33)、跛行距離:215.2m,314.2m(p=0.11)、CECT:5.7ms,5.1ms(P=0.07)、 硬 膜 管 面 積: 45.6,47.7mm2(P=0.69) で、すべての項目で有意差はなかった。 【考察】AH は 主 に S2 支 配 筋 で あ り、CECT-AH は S2 前根の脱髄を反映している。足底部は主に S2 以下の後根支配と考えており、CECT-AH は S2 前根近くを走行する S2 後根の機能障害を反映するのに適していると考えられた。 |