山口大学大学院器官病態外科(第一外科)
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トップページ > 消化器・一般外科【臨床】

消化器・一般外科
現在の診療の概要と目標
 消化器・一般外科グループでは、消化腫瘍・乳腺疾患を主体とした各種疾患に対し病態にふさわしい外科療法の開発に努めるとともに、各種分子マーカーの発現からみたより有効な制癌化学療法を施行し、患者さんのquality of life (QOL)を維持することを目標としています。




診療グループ
 守備範囲は消化器外科・乳腺外科ならびに一般外科で、多彩な疾患が対象になります。特に、上部・下部消化管と肝・胆道・膵を中心に、広く癌治療に取り組んでいます。不必要な拡大手術や不十分な縮小手術を避け、それぞれの患者さんに最適な手術術式を選択するよう心がけています。また、患者さんの病気に対する抵抗力の指標である細胞性免疫能の測定結果から、抵抗力を低下させないような工夫を行っています。

 消化器癌の治療の主体は手術療法ですが、近年各種の分子標的治療や抗癌作用を有する新規の代謝拮抗剤の開発・臨床応用により、薬を用いた癌治療の発展には目覚しいものがあります。当科では大腸癌などの悪性腫瘍に対し、癌細胞での細胞増殖に関わる各種の分子マーカーの発現からみたより有効な制癌化学療法を、山口県内をはじめとした多くの病院と協力して実施しています。

 近年、人口の高齢化の進展とともに、外科治療を必要とする患者さんに多くの合併症が併存していることが多くなってきました。当科では、心臓外科グループや呼吸器外科グループなどの各専門医と密接な連携をとることで、他施設では治療困難とされた重症疾患に対し総合的に取り組み、治療成績を向上させています。
 


乳腺外科
【乳癌とは】
乳癌は日本人女性のがんで最も多い疾患です。アメリカでは8人に1人、日本でも20人に1人が乳癌になると言われており、全国で毎年約3万人もの人が乳癌にかかっています。乳癌は、40歳から50歳代に最も多く起こります。この年代の方は特に注意が必要です。

乳癌になりやすい人として
・初潮が早かった(12歳未満)、または閉経が遅かった(55歳以上)
・授乳期間が短い
・血縁に乳癌患者の人がいる
・肥満気味
・出産経験がない、または子供の数が少ない
・40歳〜50歳
・コレステロール値が高い
・アルコール常習
などが考えられます。

乳癌が恐ろしいのは、乳房にしこりができるだけでなく、リンパ節、骨、肺、肝臓、脳など様々な臓器に転移してしまうことです。

私たちはこういった乳癌の患者さんに対し、正確な診断、最適な治療をするように心がけています。

【乳癌の診断】
ほとんどの乳癌の患者さんが、自分で乳房のしこりに気付いて来院されます。自分で乳房を触る習慣をつけることが非常に大切です。ただ"しこり"といっても良性腫瘤もあるので正確に"癌"と診断しなければなりません。

私たちが行っている専門的な検査方法として
・マンモグラフィ
・超音波(エコー)検査
・MRI
・病理(顕微鏡)検査
などがあり、これらを組み合わせることでほぼ100%の診断が得られます。

マンモグラフィ
マンモグラフィとは乳房のレントゲン撮影検査のことです。
図のように乳房を挟んで撮影を行います。乳癌に限らず腫瘤(しこり)があると白い影として見えますし、乳癌に多い石灰化もみつけることができます。

  乳癌の場合では、
  ・視触診よりも小さいガンを見つけることが可能
  ・複数の医師でのチェックが可能
  というメリットがあります。
  当科でもマンモグラフィ検診中央精度管理委員会認定の資格を持った複数の医師が読影します。

   
マンモグラフィの実際の撮影方法
石灰化(細かい粒)を伴った腫瘤像(白い影)。
典型的な乳癌のマンモグラフィ画像です。



 
マンモグラフィで腫瘤像や石灰化を指摘されたが、触っても腫瘤が分からない場合
マンモトーム生検法という方法が用いられます。マンモグラフィの撮影装置に専用の機械をとりつけ、石灰化のある場所の乳腺組織を採取し病理(顕微鏡)診断いたします。皮膚の切開も4−5mmで検査時間も約30分で入院の必要はありません。

   
  マンモトーム生検を行っているところ














   
超音波(エコー)検査
超音波(エコー)検査とは、体に無害な超音波を当てることで、体内を映し出す検査方法です。痛みもなく、体への負担もほとんどありません。画像の特徴から良性腫瘤か悪性腫瘤(乳癌)の鑑別も可能です。

  
境界が明瞭で腫瘤の内部も比較的
均一なエコー像。
良性腫瘍(線維腫瘍)です。

境界もはっきりせず、形もいびつ
な腫瘤。乳癌のエコー像です。



MRI
乳腺のMRIは、Gd-DTPAという造影剤を用いることにより、癌周囲の (1)新生血管の多寡、(2)透過性の亢進、(3)血流の増加という生物学的悪性度を反映した画像を得ることができる点が、マンモグラフィや超音波検査とは異なります。さらに、三次元画像として観察することができるため、病変の広がり、特に乳管内進展をより正確に把握できます。したがって、乳房温存療法の適応を検討したり、切除範囲を決定したりする上で有用な検査法です。

 
   
MRI検査による乳癌の描出
造形剤効果の経時的変化をグラフ化。
乳癌では、図のように急速に立ち上がり、ゆっくり下がっていくパターンを示します。



病理(顕微鏡)検査
しこりに細い針を刺し細胞を採取し診断をつけます。マンモグラフィ、エコー、MRIでほぼ間違いなく悪性と思われる症例には、手術中にしこりの一部を摘出、術中に顕微鏡の検査に提出し悪性の確定診断を得てその後の手術を続けるといった方法を行います。術中病理診断にかかる時間はおよそ10-20分です。

 腫瘤に針を刺し、採取された乳癌細胞

















【乳癌の治療】
乳癌の治療は多岐にわたっており、それらを組み合わせて行います。主な治療法には以下のようなものがあります。
・手術
・抗癌剤
・放射線
・ホルモン療法

 
手術
乳房切除と乳房温存手術があります。基本的に腫瘤の大きさが3cm以下の患者さんには乳房温存手術を行っています。腫瘤の大きさが3cmを越える患者さんでも、手術の前に抗癌剤治療を行い、腫瘤を小さくできれば乳房温存手術も可能です。
 
当科で温存手術をした患者さんの残存乳房
腫瘤の大きさ、位置、乳房の大きさによって個人差がありますが、乳房切除に比べると美容的には明らかに優れています。









センチネルリンパ節
センチネルリンパ節は"見張りリンパ節"とも呼ばれています。すなわち『癌細胞がリンパ流に乗って最初に到達するリンパ節』のことです。したがって、癌のリンパ節転移はまず最初にセンチネルリンパ節におこることになります。つまり乳癌の手術においてセンチネルリンパ節を同定し、そのリンパ節に乳がんの転移がなければ無意味な腋窩リンパ節郭清を省略できるという考え方です。腋窩リンパ節郭清に伴う合併症として上肢のむくみ、リンパ液の貯留、運動障害、知覚異常や疼痛を特徴とする神経障害などがあります。腋窩リンパ節郭清を省略できることによりこれらの合併症を防ぐことが出来ます。

センチネルリンパ節生検の最大の目的は、従来では乳がん手術において全員にしていた腋窩(腋の下)リンパ節郭清術を省略できる患者さんを見分けることにより、不必要な腋窩リンパ節郭清術による合併症を減らすことです。


センチネルリンパ節を同定する方法として、色素法、放射性同位元素を用いる方法などがあります。色素法は簡便なのですが、それのみではなかなかリンパ節の同定が困難なことがあります。放射性同位元素を用いる方法は検査の精度は高く、ほとんど人体には影響はないとは言われていますが、それでもやはり、被爆の問題があったり、費用がかかる、行える施設が限られている、などの問題点があります。我々は患者さんにもほとんど害のない蛍光色素を用いることで放射線を用いないセンチネルリンパ節の同定を行っています。


   
蛍光を発するリンパ流(矢印)
摘出されたセンチネルリンパ節


抗癌剤治療
乳癌は抗癌剤が非常に効きやすい癌の一つです。用いる薬剤も多種類あります。
抗癌剤治療の目的は
(1) 乳癌術後の再発予防(術後補助療法)
(2) 乳癌発見時に肺、骨、肝などに転移がある場合や、手術後の再発に対する治療
の2つがあります。
用いる薬剤は5FU、シクロフォスファミド(エンドキサン)、エピリビシン(ファルモルビシン)、タキサン系(タキソール、タキソテール)などがあります。
外来腫瘍治療部
専用の部屋で抗癌剤治療を行います。











ホルモン療法
乳癌は女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の刺激によって増殖することが分かっています。そのためこの女性ホルモンの刺激を抑えて癌の増殖を阻害してしまうというのが、このホルモン療法です。

閉経前と閉経後で用いる薬剤が異なります。閉経前の方は卵巣からエストロゲンが多量に分泌されているので、このエストロゲンに拮抗する薬剤(タモキシフェン)や、卵巣からのエストロゲン分泌を抑える薬剤(LH-RHアゴニスト)を用います。閉経後の方には、脂肪組織の中のエストロゲンに変換する酵素を抑える薬剤(アロマターゼ阻害剤)を使用します。

しかし、全ての患者さんにこのホルモン療法が行われるわけではありません。ホルモン療法に効果がある人、ない人があるからです。ホルモン療法に感受性(効果が)あるかどうかは、摘出した乳癌組織を病理検査に提出することによって判断します。

   
  エストロゲン受容体陽性の乳癌
顕微鏡の検査でホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の受容体が陽性か陰性かを診断します。このように乳癌細胞の核が染色されれば陽性と診断しホルモン治療に効果あると判定します。







放射線療法
乳癌は放射線治療もよく効きます。手術療法で、乳房温存治療を受けた患者さんは、術後、残存乳房(手術した方の乳房)の再発を予防するために放射線を照射します。
その他骨やリンパ節に再発した場合にも放射線を照射することがあります。

以上、乳癌に対する私たちの取り組みを記載いたしました。
何か不明な点、疑問点があればいつでも下記までご連絡下さい。

電話:0836-22-2510
FAX :0836-22-2423
E-mail:surg-1@yamaguchi-u.ac.jp

担当者:准教授 榎 忠彦

診療状況
 1年間の手術症例数は(2007年実数)、食道癌7例、胃癌45例、結腸・直腸癌44例、肝臓癌9例、胆嚢・胆管癌6例、膵癌2例、乳癌20例などの悪性腫瘍手術のほか、胆石症やヘルニアなどの良性疾患手術が41例など約200例の手術を行っています。当科における治療方針の根幹は、患者さんのQOL(生活の質)を維持できるように各患者さんの病態に応じた治療法を組み立てることです。悪性腫瘍の治療では、転移・再発の危険性の少ない早期の症例に対しては、機能温存を目指した手術法を積極的に適応しています。一方、十分なリンパ節郭清を必要とする進行癌症例に対しては、根治度を低下させない限り、内視鏡を活用するほか、切開創を小さくすることでより低侵襲なものとするように努めています。
 外来部門では、初診症例は月・火・水・木・金曜日に、再診症例は月・水・木曜日に診療を行っています。当院では、化学療法を目的とした外来化学療法室が設置されており、コンピュータ管理された処方内容を外来点滴室に併設された製剤室において担当薬剤師によって調剤されます。従来は入院で施行していた化学療法も、高い精度を保ったまま外来通院で施行可能となっています。

【手術症例数】
00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年
食道癌 6 7 1 7 4 6 5 7
胃癌 38 27 37 41 47 46 34 45
結腸・直腸癌 35 24 27 31 38 51 66 44
肝癌 11 13 14 15 11 15 9 9
胆道癌 1 6 13 21 13 9 8 6
膵癌 11 4 9 6 10 13 9 2
乳癌 15 9 7 17 9 12 11 20
胆石症 19 11 6 16 28 22 27 26
ヘルニア 4 10 9 15 18 17 15