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胆道・膵臓

当科における胆・膵疾患への取り組み

癌の手術は『根治性』と『機能温存』という相反する2つの命題のバランスで成り立ちます。『根治性』とは手術により肉眼的に癌を根絶することを意味し、切除範囲を拡げれば拡げるほど『根治性』は高くなるかもしれませんが、それを追求するあまり、無駄な臓器や組織の切除が行われることがあり得ます。“過ぎたるは及ばざるが如し”で無用な合併症が発生する危険性も高くなります。一方、『機能温存』とは、手術という大きな生体侵襲を乗り切るためできるだけ不要な臓器切除を避け、機能を温存させ、術後障害を低減させることを意味します。しかし『機能温存』に固執し過ぎれば、今度は『根治性』を損ねる可能性があります。

胆・膵領域、特に膵臓はからだの深部に位置しているため、周囲に重要な臓器や組織が取り囲んでいます。したがって、この領域の手術は往々にして大手術となるため、さきに述べた『根治性』と『機能温存』の絶妙なバランスを保つためには、専門知識に習熟した医師に相談することをお勧めします。

当科では、腹腔鏡下胆嚢摘出術以外の胆・膵疾患は、日本肝胆膵外科学会に所属し日本消化器外科学会指導医もしくは専門医の資格を有する医師が担当しています。

また、内科および放射線科の胆・膵疾患グループともそれぞれ週1回、カンファレンスを行なっており、統合的医療の提供を目指しています。

  1. 膵癌に対する外科手術と免疫療法による取り組み
  2. 切除不能膵癌に対する取り組み
  3. 機能温存手術
  4. 年度別手術数
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1.膵癌に対する外科手術と免疫療法による取り組み

>> 高度先進医療 細胞療法 MUC1-CTL療法

外科手術に肝転移を予防する免疫療法の併用

膵臓癌で根治手術を受けた患者様の5年生存率の全国平均が10%前後であることからわかるように、この領域の悪性疾患は根治手術を行っても予後が悪いのが現状です。5年生存率を悪くしている要因の一つとして肝転移再発が術後一年以内に、しかも高頻度におこるためです。当科ではこの肝転移を予防する治療法として、独自に開発した『細胞療法』を高度先進医療として提供しています。

『細胞療法』とは、簡単にいえば、「成分献血」を行うような方法で、手術前に自己のリンパ球を体外に取り出し、不活化した癌細胞を標的として、リンパ球に癌細胞と戦うための専門的訓練を施した後、手術後、その教育されたリンパ球をからだに戻し細胞レベルで遺残している癌細胞を治療しようというものです。実際、当科において根治手術を受けられた患者様は肝転移を来すことが極めて少なく(20例中1例)、平均生存期間約1年半、5年生存率は約20%という成績となりました。

膵癌治療切除例の生存曲線
免疫療法を併用することで、従来の手術+抗癌剤治療に比べ、副作用もなく、良好な生存率が得られました。

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2.切除不能膵癌に対する取り組み

2-1 MUC1-DC療法  >> 最先端医療 細胞療法 MUC1-CTL療法

切除不能膵癌、再発膵癌に対しては主に樹状細胞(DC)を用いた細胞療法を行っております。DCは強力な抗原提示細胞であり、我々は患者様から遠心回路を用いて採血を行い、その血液からDCを分離・誘導します。このDCに膵癌の腫瘍抗原ペプチドであるMUC1ペプチドを取り込ませて細胞表面にMUC1を提示したDC(MUC1-DC)を完成させます。採血から10日後に患者様の鼡径部にこのDCを皮内投与することにより、体内に存在するリンパ球が刺激・活性化され、MUC1-CTLとして膵癌を特異的に攻撃するという機序です。

現在までの臨床成績ですが、全12例のうち、膵癌術後の肺転移の完全消失を1例、切除不能膵癌の一時的な腫瘍増大の抑制を2例に認めております。

これらの治療の適応は膵癌、胆道癌(肝内胆管癌は除く)に限定されます。通常、2〜3回程度の治療を行います。高度先進医療のために通常の保険診療費以外に1回あたり12万6000円かかります。また症例によっては本細胞療法と抗癌剤(ゲムシタビン)を併用する場合もあります。

2-2 ゲムシタビンを用いた化学療法

切除不能膵癌、再発膵癌に対してはゲムシタビンという抗癌剤を用いた化学療法を行う場合もあります。本薬剤は点滴注射薬であり、生理食塩水に溶かして30分以内に静注します。毎週1回投与を3週間続けて行い、1週間休む、という方法でこれを継続して行います。副作用は骨髄抑制・皮疹・間質性肺炎などがあるようですが、患者様に対してそれぞれ量を調節することにより外来で長期継続治療を行うことも可能です。

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3.機能温存膵手術

良性疾患には膵臓の機能を損なわない高度な手術

『機能温存』に関していえば、胆・膵疾患の手術として全国的によく行なわれるようになった「幽門輪温存膵頭十二指腸切除術」は当科の先代教授が本邦1例目を行ったこととも相俟って、その手術に関する論文数は国内有数であり、患者例数・専門知識を蓄積しています。また、『根治性』と『機能温存』の絶妙なバランスを保つため当科で生み出された「上腸間膜動脈の周囲のリンパ節・神経叢の切除法」も日本での標準手技になりつつあります。また腹腔鏡下膵切除術においても当科は先駆的な役割を果たしてきました。

「幽門輪温存膵頭十二指腸切除術後の再建終了図」
岡 正朗、上野富雄;全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術.消化器外科28:1-13,2005.より引用
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4.年度別手術数

下のグラフは過去5年間の胆・膵疾患における手術症例数の年度別推移を示しています。胆・膵領域において、腹腔鏡下胆嚢摘除術を除いた、特に専門性を有すると思われる手術治療例は年20例前後で推移しています。一見すると少ないようにも見えますが、進行してから診断がつくことが多く、手術不可能な症例も少なくないため、この領域では年10例以上の根治手術を行っている施設が一般的に専門施設といわれています。

手術症例数の推移

 

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