4.機械構造体の実験モード解析
4.1 振動実験について
”機械力学”で学んだように,殆んどの機械構造体は,悪さをする可能性のある”固有振動数”を有しているので,その設計に際しては,”固有振動数”や”固有モード”を把握して置く必要がある.本学生実験では,”固有振動数”や”固有モード”を測定する際に用いられる”実験モード解析”という手法を使って,簡単な構造体の”固有振動数”と”固有モード”を実験から求め,理論結果と比較する,という実験を行う.
物体を打撃する(たたく)と振動する,という現象はよく見かけるが,本実験もまた”打撃”入力を与えて,振動する現象を定量的に観察するということを行う.実際に物体を打撃した際の応答加速度を時間に対してプロットすると図4.1のようになる.横軸は単位を秒とした時間軸を表しており,縦軸はその時間の加速度を表している.

図4-1 打撃加振後の加速度の時刻歴応答
この波形は,今回実験する対象物体に対する”加速度応答”であるが,一般の機械構造体に打撃入力を加えた場合もこれと同様の加速度応答になる.それを確かめるために,打撃入力を加えた応答を(機械力学Tで学んだ)1自由度系でモデル化すると,”減衰自由振動”することがわかる(はずである)が,一般の機械構造体は,自由度が1ではないので,このような”減衰自由振動”となる.打撃入力をインパルス入力と仮定すると,この入出力関係は,”基礎制御工学”で学んだ,”2次振動性要素の周波数伝達関数”となるので,同じように考え,入力出力関係をフーリエ変換して周波数応答関数を計算すると図4.2のような結果が得られる.この場合は,横軸は,単位をHzとした周波数(振動数)を表しており,縦軸は力と加速度をそれぞれフーリエ変換したものの比をとっている.このような入力に対する加速度の周波数応答関数は,”アクセレランス”と呼ばれる.

図4-2 入力に対する加速度の周波数応答(アクセレランス)
1自由度系で求めた”2次振動性要素の周波数伝達関数”では,極端に値が大きくなる”共振特性”,即ち共振ピークが1個観察されるのに対し,一般機械構造体では,図4-2に示すように,複数の共振ピークが現れる.そのため,各共振ピークに対して振動モードを観察し,どんな振動しているかも同時に調べる必要がある.本実験では,構造体の曲げ振動に対応する共振ピークを観察する.
4.2 実験説明ビデオ
実験に関する簡単な説明ビデオを用意した.
4.3 実験データサンプル
実験では,定めた打撃入力位置に対する周波数応答関数(アクセレランス)で観察される共振ピークのうち,曲げ(撓み)振動に対応する(と思われる)ものを低次から3つ見つけ出し,データとして取得している.打撃入力位置は,長さ方向に5点取っているので,データとしては,15組のデータが得られる.各共振ピークにおけるデータは,共振ピークが観察される振動数,その時のアクセレランスの大きさ,位相とその共振ピークが観察される直前と直後のアクセレランスの大きさと位相の組である.
※3通りの境界条件(両端固定,両端自由,片持ち梁)毎にデータシートに結果をまとめている.
※打撃点1〜5に対してアクセレランスで観察される共振点のうち固有振動数に対応すると考えられる3つの共振振動数を見つけ出し,それを固有振動数の1次〜3次に対応するとしてデータを取っている.
※各打撃点毎に各次数の共振振動数,その高さ,位相とその前後の同様の組(振動数,大きさ,位相)を取っているので,各打撃点の各次数毎に3組のデータを取得している.位相に関しては,計測器の関係で”度”で取得しているので,”radian"に変換したデータも記載している.
※各境界条件に対して用いた実験対象の寸法は,表4-1に示す通り.
※実験に用いた供試体の材料はアルミニウム.:追加情報
表4-1 実験結果サンプルに用いた各境界条件における梁の寸法

【作業】テキストに記載のように,これらの”共振振動数”が”固有振動数”に対応すると仮定して,各次数に対する”固有振動数”の測定データを定めなさい.また,テキスト記載の”アクセレランス”の式を参考に,各次数毎の”固有モード”(この場合は打撃点毎の値となる)を計算し,”固有モード”の測定データを定めなさい.
4.4 レポート課題
実験テキストの記載に沿って,目的,方法,実験方法などをまとめ記載しなさい.実験結果(課題)に関しては,以下の4項目について回答しなさい.
(1) 実験結果サンプルデータを使って,固有振動数と固有モードを計算せよ.また,同じ材質,形状に対して,梁理論により定まる固有振動数と固有モードを計算し,両者を比較,考察せよ.また,等価質量と等価ばねを用いて固有振動数を計算し,得られた結果との比較を行い,それらの間に存在する誤差について考察せよ.
(2) 打撃加振法により,共振特性が得られることを1自由度振動系を用いて説明し,実験と対応させながら測定原理について説明せよ.
(3) 他の振動実験方法として,「周期加振法」がある.これは,1自由度振動系の強制振動で観察される現象を利用している.共振特性をどのようにして測定するのかを1自由度振動系を用いて説明せよ.
(4) フーリエ級数を用いると,時間的に変化する信号について,そこで定義される振動数に対する振幅と位相を定めることができることを示しなさい.
最後に課題レポート記載に当たって使用した書籍等あれば,参考文献として記載し,レポートにまとめた後,moodleを通して,提出する事.
以上.