■ 第2回 デカルト『方法序説』読書会
『理性を正しく導き、学問において真理を 探究するた めの方法序説』      平成17626

第一部 学問にかんするさまざまな考察

◇良識(le bon sens)あるいは理性(la raison)を導く方法(la méthode)について(第1段落〜第5段落)
・良識あるいは理性とは?
 ・この世でもっとも公平に分け 与えられている
 ・すべての人に生まれつき平等 に具わっている
 ・正しく判断し、真と偽とを区 別する能力
 ・わたしたちを人間たらしめ、 動物から区別する唯一のもの[1]
わたしたちは、思考を異なる道筋 で導くから、様々に意見が分かれる。けれども、「よい精神を持っているだけでは十分でなく、大切なのはそれを良く用いること」(p.8)なのである。
・方法とは?
 デカルトは、精神をよく用いる ために、ある考察と格率から一つの方法を作り上げた。その方法とは「自分の知識をだんだんに増やし、わたしの人並みの精神と短い生の達しうる最高点にまで 少しずつ知識を高める手立て」(pp.9-10)だといわれる。デカルトはこの序説の中で、「自分がどういう道をたどってきたか」(p.10)、「どのように自分の 理性を導こうと努力したか」(p.11)を、いわば一つの見本として示す。つまり、ここで示されるのは、自分の理性を正しく導 くための一つの方法なのである。
 
◇学院時代の回想――諸々の学問について ――(第6 段落〜第13段落)
では、どうやって「方法」を求め るに至ったか、その経緯が学院時代の回想を通して語られる。当時デカルトは、「人生に有益なすべてのことについて明晰で確実な知識」(p.11)の獲得を願っていた。 しかし、
「多くの疑いと誤りに悩まされて いる自分に気がつき、勉学に努めながらもますます自分の無知を知らされたという以外、何も得ることがなかったように思えた。」(pp.11-12
と、デカルトは告白している。彼 は、手に入った本はすべて読破したが、それでも満足は得られなかった。そうして、ついにこう考えるに至った。
「他のだれについてもわたしを基 にして判断する自由、先に人びとがわたしに期待させたような学説はこの世に一つもないのだと考える自由を、わたしは選び取ったのである。」(p.12
 だが、学校で勉強する教科を尊 重しなかったわけではない。学院では、語学、寓話、歴史、雄弁術、詩、数学、習俗、哲学などを習った。これらの学問の意義を、デカルトはこう語っている。
「すべて良書を読むことは、著者 である過去の世紀の一流の人々と親しく語り合うようなもので、しかもその会話は、かれらの思想の最上のものだけを見せてくれる、入念な準備のなされたもの だ。」(p.13
「これらの学問を……ことごとく 調べあげたことは、その正しい価値を知り、欺かれないよう気をつけるためによいことである。」(同上)
 このように学校で習った教科の よさを認めつつも、それらの学問への批判を行う。曰く、
 ・雄弁術や詩は、勉学の成果で あるより天賦の才である
 ・数学は、論拠の確実性と明証 性をもつが、機械技術にしか役立っていない
 ・習俗は、砂上の楼閣のような ものであり、美徳をどう認識するかは十分に教えない
 ・神学には敬意を抱いていた が、その真理はわれわれの理解力を越えている
 ・哲学は、さまざまな主張が あって、疑わしくないものは一つもない
 ・他の諸学問も、脆弱な基盤 (哲学)の上に建てられている
 どの学問も「明晰で確実な知 識」すなわち「真理」と見做すことはできない。ただ数学だけは、確実性と明証性をもつが、まだ、その本当の用途に気づいていなかった。
 
◇学院で習った学問を放棄して旅へ(第 14段落〜第 15段落)
 諸学問への失望を味わったデカ ルトは、「これからは、わたし自身のうちに、あるいは世界という大きな書物のうちに見つかるかもしれない学問だけを探究しようと決心し」(p.17)、旅に出た。そうし て、さまざまな人との出会いや見聞を通して、書斎にこもって考えるよりも、はるかに多くの真理を見つけ出そうとしたのである。デカルトは、旅をしながら 「自分の行為をはっきりと見、確信をもってこの人生を歩むために、真と偽を区別することを学びたいという、何よりも強い願望をたえず抱いていた。」(p.18)のである。
 では、デカルトは、旅から何を 学んだのだろうか。彼は、習俗の考察から引き出した最大の利点を次のように述べる。
「つまり、われわれにはきわめて 突飛でこっけいに見えても、それでもほかの国々のおおぜいの人に受け入れられ是認されている多くのことがあるのを見て、ただ前例と習慣だけで納得してきた ことを、あまり堅く信じてはいけないと学んだことだ。」(p.18
数年を費やして、世界という書物 のなかで研究した後、今度は、「わたし自身のうちでも研究し、とるべき道を選ぶために自分の精神の全力を傾けようと決心した。」(pp.18-19)のである。


[1] この点に関しては、第五部の後半で詳しく論じられる。