■ スピノザ『神・人間および人間の幸福に関する短論文』読書会
   第7回 2005.06.08 参加者ーχ、脇、文照

◇第1部第2章 神とは何か
2.8 二つの対話
2.8.0 対話編について
 対話形式で書かれた哲学の著作といえば、もちろん多くの方がプラトンを思い浮かべるでしょう。しかし、この偉大な哲学者のフォロワーは、実は結構いま す。
 まず、もっとも有名なのがアリストテレスです。現在の全集として残っているのは彼の講義録といわれており、対話篇の著作を発表したといわれています。も ちろん、現存しておらず、大変面白かったという逸話だけが残されています。
 その他、渡井の知る限りでは、キケロ『弁論家について』、聖アンセルムス『クール・デウス・ホモ』、ホッブズ『哲学者と法学者の対話』、ライプニッツ 『人間地精神論』、シェリング『ブルーノ』などがあります。他にもきっとあると思います。
 さて、現存する対話篇の中で、最もよく知られているのはもちろんプラトンのものです。その理由は、パイオニアであるということはもちろん、内容の面白さ もあると思います。また、アリストテレスの論証形式の著作と比べて圧倒的に読意という利点もあります(これは、多くの対話篇に言えると思います)。『ティ マイオス』などの一人がマシンガントークをする作品を除いて、哲学入門には多くの点で優れているわけである。
 さて、スピノザが残した(おそらく)たった二つの対話篇はどうだろうか。まず、これはスピノザらしい点なのだが、短くコンパクトである。プラトンの対話 篇が、オープニングやエンディングをしっかりと記述しているのに対して、スピノザはまさに無駄なものを徹底的に排除して議論の根幹部分のみで対話を構成し ている。『知性改善論』がそうであるように、無駄なものが一切排除されているため、スピノザの考えを把握することは難しくない。一方で、そのコンパクトさ は対話篇の魅力の一つであるドラマ性を失っている。スピノザとプラトンの対話篇の大きな相違はまさにこの点にあるといえよう。
 しかし、だからといってもちろん軽視はできない。先に述べたように、このコンパクトな対話篇にはスピノザの考えが凝縮されている。第一対話篇は第2章、 第二対話篇は第2章と第2部に関わる内容が述べられている。もちろん、これらの対話篇はプラトンへのオマージュであろうがが、スピノザは真剣に取り組んで いると見るべきだろう。

2.8.1 知性と愛と理性と欲望との間に交わされたる 第一対話
 超ハンディキャップマッチ「愛 知性 理性Vs欲望」である。タッグマッチの形式にすれば対話がさらに盛り上がったというχ君の指摘は、おおむね正しい と思う。
 内容の多くは第2章に出ているため個々で特に言及する必要はないが、「全知」という神の属性の一つ(と考えられるもの)が欲望の台詞の中で初出する。第 2章では、この全知という神の属性は見落とされていたが、ここでフォローされたと見るべきだろう。とはいえ、これはおそらく外的名称であることになるだろ うが。
 ちなみに、この対話篇は、愛と知性−χくん、理性−Waki君、欲望−文照という、至極まっとうな配役で読まれた。

2.8.2 エラスムスとテオルフィスの間に交わされたる 第二対話
 対話の登場人物であるエラスムスは『痴愚神礼讃』の作者で知られる哲学者であり、テオフィルスも実在の実物である。ライプニッツの対話篇『人間知性新 論』にもテオフィルスという人物が登場するが、可能性といしては、スピノザのこの対話からインスピレーションをえたのかもしれない。
 時間がなくあまり検討できなかったということもあるのだが、第2部に関係するということで、いずれ戻ってくることになると思うので、内容については保留 させていただきます。相すみません。
 ちなみに、この対話は、エラスムス−Waki君、テオフィルス−文照という、これまた至極まっとうな配役で読まれた。

8.2005.06.22 第8回