山口大学 DX人材育成推進室 DX人材育成推進室

本学への寄付

DXってなんだろう?

学生の皆さん、DXという言葉、最近、よく耳にするかと思います。

このページでは、DX人材育成推進室の湯浅 修一 准教授に、DXのこと、色々インタビューさせていただきました。

3回に分けて連載しますので、皆さん、DXについて、少しでも何か学んでいただけたらと思います。ぜひ最後までご覧ください。

 

                   DX人材育成推進室 湯浅 修一 准教授(特命)

インタビュアー(以下 イ):そもそも、DXっていったい何のことでしょうか?

湯浅先生:(以下 湯)

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称なんですね。一言でいうと、デジタルを使ってトランスフォームするっていう意味です。企業だったら、デジタルを使ってビジネスのやり方を大きく変えるっていうことになりますね。  

トランスフォーメーションという言葉がわかりにくいですが、イメージとしては例えば、いもむしが、葉っぱをたくさん食べて大きくなる、これはサイズがchangeして、大きないもむしになるということなんですが、やがて、いもむしから蝶々になるとtransformation、同じ生命体なんだけど、大きく変わったとうことになるわけですね。 

 

いもむしに例えてみると・・・

CHANGE

→ → → → → →

 

Transformation

→ → → → → →

 

イ):トランスフォームってつまり形自体が変わるということですか?映画のトランスフォーマーで車がロボットになるみたいに・・・?

湯):そうですね。形が大きく変わるということですね。DXって言うと、デジタルを使うということがまず頭に浮かんで、デジタルを使ったらDXという発想をしがちなんですが、そのデジタルでトランスフォームするからDXなんです。そして企業の場合、デジタルを使ったりトランスフォームしたりすること自体が目的ではなく、そのことによって他の企業にはできないような新しい価値をお客様や社会に提供することで、競争上優位な立場を築くこと、これが最終的な目的なんです。企業なので、一生懸命にデジタルを使ってトランスフォームしたけれども、売上高や利益は減ってしまいましたっていうのでは意味がなくて、やっぱり持続的に成長していく必要があるんですね。 

このことは、自治体でも同じで、デジタルを使ったり、トランスフォームするだけではだめで、それによって、これまでできなかった行政サービスができるようになるといったことが最終的な目的になってないとDXはうまくいかないと思います。

今、マイナンバーカードのことがよく新聞やニュースで取り上げられていますが、あれは行政のDXのわかりやすい例だと思います。マイナンバーカードを使うこと自体が目的ではなくて、それを使うことで、これまでにはできなかった住民サービスができるようになったり、病院で保険証の代わりに使えるといった新しい価値が生み出されることを狙っているのですが、今はまだデータの紐づけうまくいかないといった問題が起こっていますね。生みの苦しみだと思いますけど、こういう取り組みが行政のDXのわかりやすい例ですね。 

イ):マイナンバーカードは、今は、いろいろ問題もあるので、安心して利用できるのは、もう少し先の話になりそうですが、早く解決して便利なものになるといいですね。

―ちなみに、このDXという言葉、日本では盛んに使われていますが、海外ではどうでしょうか?

湯浅先生のお話しでは、たとえばアメリカではビジネス変革(Business Transformation)という用語も広く使われていて、DXはその一部と考えられているケースが多いようです。でも日本のように「Business Transformation」 =「BX」と略すことはないようです。

言葉を略す、特にIT(Information Technology:情報技術)の分野で略語を使うことは、昔から多く見られる習慣のようです。もうかなり前ですが、たとえば、「Business Process Reengineering」を「BPR」と3文字で、また「Business Intelligence」のことを「BI」と2文字で表したりしています。 

日本の方はいろいろな略語を使いますね。例えば、就職活動→就活、結婚活動→婚活とか、さらには人の名前まで略してしまいますね、木村拓哉→キムタクみたいに、不思議ですね。

 

イ):それでは、なぜ最近、DXがこんなに注目されているのでしょうか?

湯):一番大きな理由は、デジタル技術が、民主化されてきた、つまり私たちの身近になってきたということだと思いますね。実は私が会社に入った30数年前にも、デジタル技術を使って企業の戦略を大きく変えましょうという考えはあったんです。当時はこれを情報システムの戦略的活用ということで、SISStrategic Information System)―これも略称ですね―と呼んでいました。その時は、今みたいにインターネットとかはないんですけど、例えば工場で作っている製品の数や種類の情報、営業所で注文を受けている売れ筋の製品の情報などをすべて本社に集めて、それをもとに、次はどこの工場でどんな製品を作って、それをどこの営業所で売ったら一番効果的かといったことをコンピュータに計算して示してもらうようなしくみ作りに多くの企業が取り組んでいました。   

DXとよく似ていますね。情報技術を使って、今までのビジネスのやり方を大きく変えましょうといったところは同じなんですけど、その時と今とで大きく違うのは、やはり、情報技術、デジタル技術が私たちの身近になってきたことです。今は大学生の皆さんの多くがスマホを持っていますが、今のスマホと同じくらいの性能、機能を持っているコンピュータをSISの時代にもし手に入れようとしたら、たぶんすごいお金がかかってしまうと思いますし、そもそも無理だったかもしれません。しかも、当時の情報技術は、コンピュータの専門家じゃないと、それを扱えなかったんですね。今みたいにインターネットもない時代なので、ネットワークの分野にも専門家がいて、その人がいないとネットに繋げられない世の中だったんです。今だったら皆さんの多くがWi-Fiにつないで、インターネットを使うことができますよね。

こういう時代だと、一般の人(専門家ではない人)が情報技術、デジタル技術を使おうとしてもハードルが高くて、普段、営業やモノづくりといった分野で働いている人たちにとっては、デジタル技術を使って自分たちの会社を大きく変える、トランスフォームするということを発想するのはとても難しかったわけです。でも、スマホやパソコンが身近にあって、しかもそれを簡単にネットに繋いで使うことができるといった現代の社会で暮らしている私たちにとっては、デジタル技術で大きなトランスフォーメーションをすることを構想しやすくなっているのではないでしょうか。今、DXが注目されているのは、この点が一番大きいと思います。

このことは、今すごく話題になっているChatGPTのようなAIの世界でも同じだと思います。私の知っている限りでは、AIが今みたいなブームになっているのは、この340年で3回ほどありました。ただ昔のAIは、コンピュータの性能も今ほどではないですし、それこそ専門家でないと、とてもじゃないけど、使えないようなものだったんですが、今、ブームになっているAIは、ディープラーニング(深層学習)という手法で大量のデータを自分で学習するように進化してきました。こうした技術的な進歩がAIを私たちにとって身近なものに変えてきていると言ってよいのではないでしょうか。 

イ):技術が進歩して、デジタル技術が私たちの身近になってきたということですね。 

これからどんどん進化していったらDXはどういう将来というか、どういう風になっていくと思いますか?

湯):そうですね、DXという言葉自体は私がさっきお話ししたSISとかと同じで、あと何年かすると使われなくなってしまうかもしれませんね。でも、インターネットやデジタル技術などを使って、企業や自治体が自らを大きく変えることで、これまでにはできなかった新しい価値を提供するっていう発想は、たぶんこれからも残っていくし、場合によっては今以上に必要とされることになると思います。 

それから、もうひとつ、これからちょっと変わってくるだろうなって思っているのは、これまでのDXは企業や自治体が単独で取り組んでいることが多いのですが、これからは周りの関係者をつないで取り組むDXの事例がたくさん出てくるのではないでしょうか。

たとえば、製造業の企業だったら、原料や材料を取引先から仕入れて、それをもとに自分の会社の工場で製品を作って、営業部門がお客様に販売する、そのために製品をお客様のところまで輸送するといった流れがあります。こうした流れをサプライチェーンと呼びますが、原料や材料を作っている企業、自分たちの企業、お客様の企業、お客様に製品をお届けする企業など一連の関係者(企業)がデジタル技術でつながれば、今よりも良い製品をお客様の希望するタイミングで効率的に運ぶといったことができるようになるかもしれません。このようなサプライチェーン全体で競争優位性を確立していく取り組みは、いくつかの企業ではすでに始まっているのですが、デジタル技術はこうした企業間の連携を強める上でも重要な役割を果たすようになるのではないでしょうか。 

 

インタビュー第2回目は10月中旬掲載予定です。

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