教授挨拶

教授挨拶

教授 佐野 元昭

「循環器・腎臓・膠原病の3つの領域を網羅する」という第2内科の特色を活かして「全身を診ることができる内科医」の育成を目指します

医学生・研修医の皆さん、ご存じの通り、循環器(心臓と血管)は生命維持(バイタル)の要です。循環器内科は内科の中でも外科に準ずる急性期治療手段を多く有しています。例えば急性心筋梗塞は突然命を奪う非常に危険な病気です。脈の速さやリズムが乱れる心房細動という不整脈や大動脈弁狭窄症などの弁膜症も高齢化に伴い増加の一途をたどっています。 心房細動がおこると動悸の症状で悩まされるだけでなく脳梗塞や心不全が起こりやすくなります。大動脈弁狭窄症は重症化すると突然死などのリスクが高まるため、硬くなった弁を人工弁に取り換える必要があります。これらの疾患に対して、低侵襲カテーテル治療(心筋梗塞→経皮的冠動脈形成術、心房細動→カテーテルアブレーション、大動脈弁狭窄症→経カテーテル的大動脈弁植え込み術)を積極的に行っております。 また、体外式膜型人工肺(ECMO)や補助循環用ポンプカテーテル(Impella)などの機械的循環補助の登場によって、これまで救命できなかった心臓と肺の機能が低下した患者様も助けることもできるようになりました。急性期を乗り越えた後は、症状や身体所見、バイタルサイン、心臓超音波検査、運動負荷試験などから患者様の状態を把握し、心保護薬の調整や高血圧、糖尿病、脂質異常症などのリスクファクターの管理、心臓リハビリテーションなど、いわゆる「全人的なケア」を進めて退院を目指します。 また両心室ペースメーカーや植込み型除細動器など先進的な心臓植込みデバイスにより心不全による再入院や突然死を予防します。退院後も外来で長期にわたって患者様に寄り添います。非常に守備範囲の広い診療科であり、急性期から回復期、慢性期まで一貫した医療を提供しております。
腎臓は水・電解質や酸塩基平衡の調整、尿毒素物質の排泄だけでなく、レニン、エリスロポエチン、活性型vitamin Dに代表される各種ホルモンを産生する内分泌臓器として全身の恒常性維持に欠かせない臓器です。腎臓の働きが低下したり、タンパク尿が出るといった腎臓の異常が続く状態である慢性腎臓病は成人の8人に1人はいると言われている国民病で、高血圧、糖尿病、腎炎、膠原病といった様々な病気によって引き起こされます。 慢性腎臓病が進行すると腎不全となり、透析や移植などの腎代替療法が必要になります。また、慢性腎臓病になると脳卒中や心筋梗塞、心不全などの循環器病の発症リスクが高まります。腎臓内科の診療は、高血圧、糖尿病などの生活習慣病の管理から急速進行性糸球体腎炎を代表とする重症の腎疾患に対する全身管理まで多岐に渡ります。近年、腎臓の中で起きている現象が明らかになり、正確な病態評価と適切な薬物選択によって、腎機能の低下を積極的に予防・治療できるようになりました。 今後も新しい薬物や治療法が次々と開発されてくることから益々の発展が見込まれます。腎臓の異常は、単に腎臓だけにとどまらず、全身の様々な臓器にも影響を与えます。その代表が腎臓と心臓の臓器間相互作用であり、腎機能が悪化すると心臓に悪影響を及ぼし、心機能が悪化すると腎臓に悪影響を及ぼすことから心腎連関あるいは心腎症候群(cardio-renal syndrome)と呼ばれています。循環器内科医は腎臓を、腎臓内科医は循環器を強く意識した治療が求められており、第2内科はまさに理想的な研修の場であると言えます。
膠原病は、免疫の誤作動により、全身の複数の臓器に炎症が起こり、臓器の機能障害をもたらす様々な疾患の総称です。その代表的疾患である関節リウマチの有病率は約1%であり、決して稀な疾患ではありません。かつては、関節リウマチと診断されても有効な治療がなく、患者様の関節破壊の進行を防ぐことができませんでした。近年、多くの分子標的薬が開発され治療のパラダイムシフトがおこり、臨床的寛解・健康寿命の延伸などの高い治療目標が実現可能となりました。 これは、関節リウマチ以外の膠原病でも同様であり、多くの患者様が病気と上手く付き合っていくことができるようになっています。膠原病では全身の臓器に障害を生じます。そのため、膠原病診療のトレーニングの過程で「全身を診る」ための高い診断スキルを身に着けることができます。同じ膠原病であっても患者様ごとに症状は異なっており、目の前の患者様の体の内で何が起こっているのかを問診・診察・検査を行うことで適切に評価し、診断・治療を行うということは内科診療の醍醐味と言えます。 近年の治療法の発展に伴い、適切な診断・治療を行うことができた膠原病患者様の予後は従来では想像できなかったほどに向上しており、「免疫学のspecialist」と「全身を診るgeneralist」という2つの側面をもつ膠原病内科はやりがいのある魅力的な領域となっています。
第2内科は、伝統的に循環器、腎臓、膠原病の専門医をめざす医師が有機的につながり、気軽に相談しやすい環境ができあがっており、専門分野の枠を超えて横断的に学ぶことができる器官病態内科学講座です。

女性医師の比率の高さは、全国の循環器内科でトップクラスです

第2内科はワークライフバランスに対する意識が高く、長時間労働是正・多様な働き方を実現するために、従来の主治医制(担当医と指導医が担当患者様を毎日診療)を改め、チーム医療制(指導医を含めた3人の担当医が担当患者様を日替わりで診療)を導入しております。また、コメディカルへのタスクシフト・タスクシェアを進めており、一人一人の業務負担を積極的に軽減させております。 さらに、ITツールを積極的に活用して業務効率化・見える化や情報共有の円滑化を実現させております。出産・育児、病気療養などからの復職、専門医資格取得•スキルアップなど、全力でサポートします。

大学病院と関連病院にしっかりとした教育システムがあり、やる気のある人が成長できる診療科です

チーム内では、指導医、上級医と一緒に患者様を診ることで臨床的な実践力を身に着けることができます。病棟カンファレンスでは、入院中の循環器病、腎臓病、膠原病患者様の情報を共有して、どのように治療を進めていけば良いかを、他のチームの意見や専門医の意見を聞いてみんなで検討しております。多職種カンファレンスでは、医師だけでなく看護師、理学療法士、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなど加わって、心不全患者様の再入院予防について話し合われます。
循環器領域においては、虚血性心疾患、弁膜症、不整脈、心筋症、肺高血圧症などを幅広く勉強していただきます。心肺停止、心筋梗塞、心不全、大動脈解離など循環器救急疾患に対する救命救急を学んでいただきます。カテーテルによる治療、ペースメーカーの埋め込み、心臓超音波検査、心臓核医学検査、CT検査、MRI検査、心臓リハビリテーションのトレーニングを進めていきます。そのうえで、希望する各サブスペシャリティーの道を究めてもらいます。
腎臓領域については積極的に経皮的腎生検を行い、画一的な治療ではなく正確な診断や腎炎の疾患活動性に基づいた適切な治療を学んでいただきます。また、シャント作成術(人工血管移植、バイパス含め)、狭窄した内シャントや人工血管を拡張させる「経皮的血管形成術(PTA)、腹膜透析関連手術全般など魅力的な手技も学んでいただきます。
関節リウマチは早期に診断し、速やかに治療を始めることが非常に大切です。触診や関節エコー(超音波)による検査によって、滑膜の炎症や腫れ方の特徴をみることで早期診断・早期治療につなげる診察手技を学んでいただきます。

基礎研究は研究論文を書いて終わりではなく、創薬・医療機器開発などにより、人々の健康と福祉の向上に貢献する大事なツールです

2000年以降、モノクローナル抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド/ small interfering RNAs(siRNAs)、iPS細胞、遺伝子編集、キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor, CAR)-T細胞療法、mRNAワクチンなど治療を念頭においた技術が次々と開発されてきました。欧米では、Basic science(基礎研究)を究めて、独自のシーズを見つけて、ビジネス展開する流れが推奨され、アカデミア発ベンチャーの設立が進み、今や創薬の大半がアカデミア発となっています。 第2内科では、循環器病、腎臓病、膠原病の克服のために、病態解明とそれに立脚した治療法の開発を見据えた研究を進めていきます。

医局員、関連病院の一人一人まで目を行き渡らせ、皆の幸せを追求したきめ細かいサポートをしていきます。是非、第2内科の一員になってください。心から歓迎します。