熱ショック転写因子ファミリーの多様化による熱ストレス適応
Adaptation to heat stress by diversification of the vertebrate heat shock transcription factor family
Ryosuke Takii, Mitsuaki Fujimoto and Akira Nakai.
Phil. Trans. R. Soc. B 381, 20250274, 2026. https://doi.org/10.1098/rstb.2025.0274
Review
細胞は、高温への急性あるいは慢性的な曝露、または温度変動に対処することによって、生存し、増殖する。こうした性質は主要な進化的選択圧の一つであり、熱ショック応答と関連している。熱ショック応答は、熱ショックタンパク質(heat-shock proteins:HSPs)の誘導を特徴とし、脊椎動物では主に熱ショック転写因子(heat shock transcription factors:HSFs)によって制御されている。
酵母、線虫やショウジョウバエなどの無脊椎動物では、単一のHSFが存在するのに対し、脊椎動物では進化の過程で複数のHSFが備えられている。脊椎動物HSF群がHSP発現を誘導する能力は、変動する温度環境における恒温性の能力と関係しており、転写活性化を担うドメインや領域のアミノ酸配列の保存を伴う。
HSF群は、タンパク質のフォールディングを促進し、タンパク質のミスフォールディングや凝集を抑制するHSPの発現を制御するだけでなく、タンパク質の除去、代謝、細胞周期、DNA損傷応答、アポトーシス、細胞老化、細胞骨格、細胞外マトリックス、炎症などに関連する遺伝子の発現も制御することによって、細胞や個体を熱ストレスから保護する。HSF遺伝子の多様化は、脊椎動物における温度変化への細胞の適応能力を拡大させた可能性がある。
本論文はTheo Murphy meeting issue『ProteostaSys: a systems view of proteostasis』の特集号の一部です。