1.90年代アジア・ブーム回顧
  1-2. ブームの始まりと山場

1-2-1.ブームの始まり

アジア現代美術への注目は90年代から本格化

 谷新『北上する南風』(1993年)「あとがき」より

"私にとってアジアの現代美術を考えるようになったのはそう昔のことではない。韓国の作家については多少解説したこともあったが、他のアジア諸国の作家、現代美術の事情について触れることは一九八〇年代までは皆無だったと言ってよい。これをもって一般論にはできないが、このことはほぼ日本の現代美術の事情と同様である。欧米の美術状況についてはへたな欧米の美術関係者より詳しい。しかし、足元の地域、各国の美術については、韓国など日本の美術の進展と緊密な関係にある一部を除き、ほとんどその輪郭すらつかめないし、またつかむ必要すら急には感じなかった時代が戦後一貫して続いてきたことは言をまたない。"(237頁)

1-2-2.ブームの山場

アジア現代美術ブームの顕在化は1994年

 "アジア現代美術ブーム"―『朝日新聞』1994年10月5日

 黒田雷児「『ブーム』の表と裏」、『アジアの美術』(1999年)より

"「アジア現代美術ブーム」―今年(一九九四)、福岡市美術館の「第四回アジア美術展」(九-十月)および広島市現代美術館(九-十一月)ほかでの「アジアの創造力」展を中心に、日本各地で開催されたアジアの現代美術展についてある新聞はこのような見出しをつけて論じた。…(中略)…私たち福岡市美術館の者はこれらの全国メディアによって十五年間の不遇の後にようやく全国デビューしたという喜びを素直に味わっているが、…(後略)。"(106頁)

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