北九州市立美術館 連続美術講座
講座 現代美術史
シェリー・レヴィン《無題(エドワード・ウェストンによる)》
作品にまつわる略年譜
1925年
エドワード・ウェストンは自分の息子ネイルを題材に写真シリーズを制作。このとき、ウェストンは、古代ギリシアの彫刻家プラクシテレス作の男性裸像を作品イメージのベースとした。これはある意味で既に他の芸術からの流用(アプロプリエーション)である。
1977年
ニューヨークのウィトキン・ギャラリーは同写真シリーズのオリジナル・ネガを購入し、そのネガをもとにジョージ・A・ティースに新しいプリントの作成を依頼した。ティースが新に作成したプリントは、ウィトキン・ギャラリー刊行によるウェストン作品集のための広報用ポスターに使用された。
1981年
シェリー・レヴィンは、このポスターをさらに写真撮影する。レヴィンは、彼女の作品がコピー作品であることを公言してはばからない。コピー制作そのものがあまりにあからさまであって、結果的にそれは彼女の制作スタイルにまで高められている。レヴィンは、複製を反復するという行為によって「最初から存在していた複製性」を暴き、作品のオリジナリティに関する通念に疑問を抱かせる。