北九州市立美術館 連続美術講座
講座 現代美術史
ロザリンド・クラウス
1940-
『近代彫刻のパサージュ』(1981)
Passages in Modern Sculptures
『オリジナリティと反復』(1986)
The Originality of the Avant-Garde and Other Modernist Myths
Source: El Tunel Shop /
Rosalind Krauss
『視覚的無意識』(1994)
The Optical Unconscious
『ピカソ論』(1999)
The Picasso Papers
この本の魅力の一つは、フランスの現代のエピステーメの偉大な担い手たち(バルト、フーコー、レヴィ=ストロース、デリダ、ラカン)を味方として取り入れていることである。・・・・・・クラウスにとり新たな発見を刺激するモデルとなったこれらのディスクールは、彼女の著作において、それら自体はほとんど関心を払ってこなかった領域、すなわち現代美術の歴史と理論という領域との出会いを強いられることによって、変形される。(実際、私のようなフランス人の読者には、そこに一つのスリルが加味される。つまりレヴィ=ストロースのような現代美術の根深い敵の生み出した図式が、クラウスによってハイジャックされ、一九七〇年代の彫刻の領域をチャート化し、その多様性について語るために利用されるのを見て、一種の歓喜を味わうのである。私のようにパリの構造主義の特別な雰囲気に浸っていないアメリカの読者にとっては、この短絡がもたらしてくれるような快楽はさほど強烈でないにちがいない。)(Yve-Alain Bois, Art Journal, Winter 1985.)
(小西信之「訳者後書」、ロザリンド・E. クラウス『オリジナリティと反復 ロザリンド・クラウス美術評論集』、リブロポート、1994年11月、p.259)
書評もおしなべてよく、いや、単純に「よい」というよりは、これまでにない新しい美術史の可能性を示唆しているということで、だれもが、その「新しさ」に遅れてはならじとこぞってエールを送っているというような、少し浮き足立った気配が全体に共有されていたように思う。事実、ちょうどその頃を境として、アメリカの美術史界には、堰を切ったように、構造主義、ポスト構造主義、受容理論などの「新しい」方法論が導入され、同時に旧来の美術史を守ろうとする保守派からの反発を強め、よくも悪くも混沌とした状況の現在へと至っているのである。(林道郎「ロザリンド・クラウス モダニズムを超えて」(集中連載 美術史を読む 6人の美術史家による6つの方法 第2回 <共同執筆>林道郎、田中正之、大西廣)、『美術手帖』1996年2月号、p.127)