美術史二〇〇六


西欧美術史学の歴史(二)様式史

一六世紀 ヴァザーリ『芸術家列伝』(初版一五五〇年、改訂版六八年)

 

一八世紀 ヴィンケルマン『ギリシャ美術模倣論』(一七五五年)

 

一九世紀 リーグル『美術様式論』(一八九三年)

二〇世紀 ヴェルフリン『美術史の基礎概念』(一九一五年)


アロイス・リーグル(Riegl, Alois 1858-1905)

「芸術意思」――芸術作品とは、使用目的、素材および技術との戦いを通して目的を遂げようとする芸術意思の成果である。

芸術意思による「規範的美学」の克服

『美術様式論』―エジプト、メソポタミアからギリシャ、ローマ、ビザンティン、アラビアまでの広範な地域を対象に、数千年にわたる装飾文様のモティーフ変遷を観察することによって、その構成原理を分析、内的な発展の連関を究明しようとした。

『後期ローマの工芸』――「触覚的」、「視覚的」という基礎概念を提出

参考:ウード・クルターマン『芸術論の歴史』(勁草書房、一九九三年)、一八八頁。
  神林恒道ほか編『芸術学ハンドブック』(勁草書房、一九八九年)、二五頁。


美術史二〇〇四:リーグル

装飾文様の比較


ハインリヒ・ヴェルフリン(Wölfflin, Heinrich 1864-1945)

人名なき美術史=芸術作品の形式分析=フォーマリズム

“芸術には、形式の内的な展開というものがある。諸形式の絶えることのない変化を、周囲の世界の変動する諸条件に関係づけようとする努力がどれほど価値があろうとも、また芸術家の人となりや時代の社会的精神的構造が芸術作品の相貌を捉えるためにいかに不可欠なことであろうとも、それと同様に次のことも忘れてはならない。すなわち、そのきわめて一般的な可能性に従いつつも、芸術、というよりむしろ、諸形式を創造する想像力は、自分に固有の生命と進化とをもっている、ということを。”

出典:グザヴィエ・バラル・イ・アルテ『美術史入門』(白水社、一九九九年)、一三四頁。
H.Wölfflin, Réflexions sur l'Histoire de l'art, Paris, 1982, p.35, 48.


用語対照表

一四〇〇年代 クワトロチェント 15世紀 初期ルネサンス
一五〇〇年代 チンクエチェント 16世紀 盛期ルネサンス
一六〇〇年代 セイチェント 17世紀 バロック

基礎セミナー二〇〇六

ヴェルフリンの五対概念


参考図書

◆ヴィンケルマン

ヨハン・ヨアヒム・ヴィンケルマン『古代美術史』、中山典夫訳(中央公論美術出版、二〇〇一年)

ヴィンケルマン『ギリシア美術模倣論』 、澤柳大五郎訳(座右宝刊行会、一九七六年)

H. B. Nisbet (ed. and intro. by), German aesthetic and literary criticism : Winckelmann, Lessing, Hamann, Herder, Schiller, Goethe, (New York: Cambridge UP, 1985).

◆リーグル

アロイス・リーグル『美術様式論 装飾史の基本問題』、長広敏雄訳(岩崎美術社、一九七〇年)

ユーリウス・フォン・シュロッサー『美術史「ウィーン学派」』、細井雄介訳(中央公論美術出版、二〇〇〇年)

◆ヴェルフリン

ハインリヒ・ヴェルフリン『美術史の基礎概念 近世美術における様式発展の問題』、海津忠雄訳(慶應義塾大学出版会、二〇〇〇年)

ヴェルフリン『美術史の基礎概念 近世美術における様式発展の問題』、守屋謙二訳(岩波書店、一九三六年)

H・ヴェルフリン『古典美術』、守屋謙二訳(美術出版社、一九六二年)