山口大学医学部医学科の教育研究講座をご紹介します。
令和3年5月1日作成
病理学は,基礎医学と臨床医学の架け橋となる学問と言われます。基礎医学としての病理学本来の目標は,疾病の本態を究明する学問です。したがって,疾病に対する正しい理解と真摯な興味を引き出すこと,確固たるエビデンスに基づいた医療の必要性を認識させることを教育目標としています。その上で,生体内で実際に観察される現象を対象とし,臨床応用を常に考慮した研究,および分子生物学の重要性を理解したうえで病理形態学に重点を置いた研究を目指しています。そのためには,形態学的変化を見逃さない確かな眼を養うこと,病理形態学に差がないが表現形に差があるときは分子生物学的なアプローチを行なうことが重要です。臨床医学としての病理学はまさに日常業務として病院で行われている,病理診断,病理解剖(剖検)であり,常に患者さんのことを考えながら迅速で正確な病理診断を行い,病理解剖では臨床医のさまざまな疑問に答えられなければなりません。
このように,病理学の範囲は基礎医学から臨床医学まで多岐に渡っており,いずれもレベルの高さを追求されています。当教室では,その意味でも橋渡し研究(Translational Research)を重視し,基礎的であると同時に臨床応用可能な研究を行なっており,特に遺伝子レベルでの分子生物学的な手法を用いた新しい病理診断技術の開発に力を入れています。日々の病理診断,病理解剖は新たな発見の連続であり,さまざまな疾病の原因解明の糸口になり,新たな診断法,治療法開発につながると考えて研究を行なっています。
当教室では,研究を続けながら病理医として臨床に携わりたい方,逆に病理医として臨床に携わりながら少し研究もやってみたい方,いずれの方々も歓迎します。病理学の良い点は,研究職,医療職等の将来の選択肢が多く,また自由度が高い点であり,結婚,出産等を経ながらでも仕事を継続できます。病理医の絶対数は大きく不足しており(全国で約2,000名),多くの病院で医療の質の評価の面からも病理医が求められています。学生さんの一部には,患者さんに向かい合えないと言って病理医を敬遠する傾向がありますが,最近では患者さんと向かい合う病理医も求められています。病理医は臓器横断的な幅広い知識を持っているので,いわゆる病理外来とともに遺伝相談等,将来的にはあらゆる病気のことを何でも相談できる病理医が求められるのではないでしょうか?