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講座について

教授あいさつ

「人に優しく、山口に生き、世界に羽ばたく」

白澤教授

 山口大学医学部医学科は、80年超の歴史を有する伝統ある学部です。その中で私たち医学教育学講座のミッションは、「人間力を重視し、基礎的な研究マインドの涵養と、基本的診療能力を確実に習得させる」ことにあります。この目標のもと、医学教育センターとも緊密に連携し、6年間を俯瞰したカリキュラム設計のもと、基礎から臨床に至るまで、特に境界領域や分野横断的な教育に力を注いでいます。そして、「日本で受験生に最も選ばれ、愛される医学部」を目指し、日々の教育改善に取り組んでいます。
 本学のカリキュラムは、急速に変化する医療ニーズを的確に捉えて構成されています。医療の高度化が進む一方で、人生100年時代を迎え、複数の疾患を抱える高齢者も増加しています。そのため、診療科を超えた包括的な視点と、先端医療を支える高度な専門性の双方が求められています。学生にはこの「両輪」をバランスよく身につけてほしいと願っています。
 現在第6波にあるコロナ禍は社会や経済に大きな影響を与え続けており、医学教育にも多大な影響を及ぼしています。この状態がまだしばらく続くと思いますが、コロナ禍だからこのくらいの教育で仕方ないで済ませずに、遠隔講義では対面講義と同程度の学修項目を修得できているのか、患者さんをコロナ禍以前の様に診ず(診させられず)に済ませて良いのか(全国共通の悩みでしょうが)、学生さん達の縦や横の繋がりの希薄化をいかに我々がアシストするのか、ということも私たちに課せられている重要な課題だと思っています。
 1年次には山口市の吉田キャンパスで共通教育を学び、その後、宇部市の小串キャンパスに移って専門教育を学びます。2年次は基礎医学、3年次は社会医学や研究室配属、4年次は臨床医学や臨床倫理を中心に学び、4年次3学期からは6年次1学期まで診療参加型臨床実習を行います。
 近年、医学教育においては、臨床推論や手技といったテクニカルスキルに加え、プロフェッショナリズム、倫理、コミュニケーション、多職種連携、行動医学などのノンテクニカルスキルの重要性がますます高まっています。医師としての道を歩む上で、いかなる進路を選んでも、高いコミュニケーション能力と豊かな人間性は欠かせません。学生時代には、学外活動や部活動なども通じて、多くの人と接し、人間力を育んでいただきたいと願っています。
 新型コロナウイルス感染症の流行は社会全体に大きな影響を及ぼし、医学教育も例外ではありませんでした。幸いにも現在は一定の収束を見せ、教育現場も以前の活気を取り戻しつつあります。しかし、コロナ禍を通して得た学びも大切にしなければなりません。対面・遠隔の教育手法の質的保証、患者さんとの関わりの在り方、学生同士の縦横のつながりの再構築など、私たち教育者には今後も柔軟かつ持続的な対応が求められています。
 最後に、私自身が医学教育に携わる上で大切にしていることをお伝えしたいと思います。それは、単に医学の知識や技術を伝えるのではなく、すべての学生が「人間として成長できる場」を提供したいという想いです。そして、「前へ、前へ」という姿勢で、常に医学教育の革新に挑戦し続けたいと考えています。
 なお、「人生のキャリアの8割は偶然の産物である」というキャリア論もあります。私自身も外科医としての経験を基盤に、予期せぬ出会いや経験を積み重ねて、今この医学教育の場に立っています。この経験を活かし、今後とも「良き医師」として社会に貢献できる人材の育成に尽力してまいります。

令和七年七月
山口大学大学院医学系研究科 医学専攻 医学教育学講座 教授
白澤 文吾

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