口腔腫瘍外来

口腔腫瘍外来について

口腔がんをはじめとする,口腔腫瘍治療後の患者様の経過観察を行っております.本外来は,予約制です.新規に当科を受診される口腔腫瘍の患者様は,当科の初診(受付:平日 11時00分まで)にて随時,受付しております.

口腔がんについて

口腔がんは全がんのうち約1-2%を占めます.その発生率は,10万人に対して6人程度です.いわゆるがん年齢と言われる40歳以降に多くの口腔がんが発生します.しかしながら,若年者と女性の口腔がんが増える傾向にあるため,口腔がん全体の発生も増える傾向にあります.2015年には,約7800人の日本人に口腔がんが発生したと推定されています.

口腔がんの原因と発生

口腔がんの発生原因は,たばこやアルコールの過剰な摂取,むし歯や不適切な入れ歯による刺激,お口のなかの衛生不良などが原因として考えられています.多くの口腔がんは,白板症や紅板症と呼ばれる前癌病変より発生します.したがい,前癌病変を発見し治療や経過観察を行うことは,口腔がんの予防や早期発見を行うために非常に重要です. 口腔がんは口腔の臓器の中で,舌や歯肉に発生することが多く,次いで,口底や頬の粘膜に多くが発生します.

 

口腔がんの症状

口腔がんの初期は自覚症状に乏しく,刺激物がしみる程度です.見た目には,治らないただれやしこりができます.口腔がんが大きくなるとともに,痛みやしびれ,出血,歯のぐらつき,入れ歯の不適合などが起きます.さらに,口腔がんが進行すると,口が開けにくい,飲み込みが困難,発音が不明瞭などの症状が生じます.

 

口腔がんの診断

口腔がんの診断は,病変部を一部採取して標本を作製し顕微鏡下で観察する組織検査と,CT,MRI,FDG-PET,超音波検査などの画像検査を組み合わせて行います.腫瘍の大きさ,頚部リンパ節転移,肺や肝臓などの他の臓器への転移を検査し,臨床病期を決定します.臨床病期は治療方針を決定するうえで非常に重要な指標になります.

口腔がんの治療

口腔がんの治療は手術が主体となります.病気の進展度合に応じて,放射線治療や抗がん剤治療が併用されます.早期癌では手術に伴う合併症は限られており,日常生活に大きな支障が生じることは稀です.進行癌の場合は,手術後に,食べ物を咬むことや飲み込むことに困難が生じる可能性があります.また,発音が不明瞭になることもあります.手術が困難な患者さんには,放射線治療と抗がん剤治療を併用した治療が行われます.手術に比べて合併症は少ないですが,治療効果は病気の感受性(効きやすさ)に依存するところが大きいです.

当科の診療実績

2004年から2016年の間の当科の診療実績を示します。1年に平均44.8例の口腔癌の患者様が当科で治療を受けられました。また、男性と女性の比率は約3:2であり、初診時の平均年齢は69.5歳と全国的な統計の平均年齢より約5歳高齢となるのが特徴的です。部位別では、舌癌と歯肉癌の症例が全体の約70%を占めます。さらに、早期癌症例(臨床病期I期およびII期の症例)と進行癌症例(臨床病期III期およびIV期の症例)の割合が、それぞれ54%と46%とほぼ同じ割合です。手術施行例の5年生存期間に関しては、臨床病期I期からIII期に属する症例は比較的良好ですが,IV期まで進行した症例の5年生存率は54%と低下しています.したがって,早期発見することが口腔がんの患者さんの予後を改善するうえで最も重要です.