口唇口蓋裂外来

口唇口蓋裂外来

診察日時:水曜日 午後
診察場所:歯科口腔外科 外来

口唇口蓋裂はどんな病気?

 赤ちゃんがお腹の中で成長する初期段階(胎生4週から12週)に、顔面は左右から伸びるいくつかの突起が癒合することによって形作られます。しかし、この癒合がうまくいかないと、その部位に割れ目が残ってしまいます。その結果として、唇が割れた口唇裂(こうしんれつ)や、うわあご(口蓋)が割れて口と鼻がつながっている口蓋裂(こうがいれつ)が発生します。また、顎の骨が割れている場合は顎裂(がくれつ)といい、口唇裂の一部として発生します。原因として、遺伝要因と母体内環境要因が組み合わされて一定の閾値を越えると裂が発生すると考えられています(多因子しきい説)。
 日本人では出生児約500〜600人に1人の頻度で口唇裂、口蓋裂が発生するとされており、他の人種より発生頻度が高いとされています。山口県内の出生数は1年間に約1万人であり、毎年20人弱の口唇口蓋裂児が出生していると考えられます。

口唇口蓋裂にみられる障害は?

 生まれてすぐの問題はうまくミルクを飲めないことです。そして鼻や唇の形態の問題に加えて、成長に伴い、言葉の問題、噛み合わせや歯の欠損から起こる咀嚼の問題が生じてきます。また、口の中の環境が悪くなるため、虫歯や歯周病にかかりやすく、さらに口と鼻の間に裂があることと、鼻から耳へ通じる管(耳管)の開閉機能がうまく機能しないことから、中耳炎にかかるリスクが高くなります。

口唇口蓋裂の治療について

当科では、成人するまでの間に形態的にも機能的にも口唇口蓋裂がなかったかのように治すことを目標に治療を行っております。山口大学では全身の管理は小児科が行い、口唇口蓋裂の治療は当科が中心となって行っております。
口唇口蓋裂の治療は、多職種が連携し、適切な時期に適切な治療を行い、患者個々の発育に応じて治療順序を組み立てる一貫治療が重要であると考え、以下の流れで治療を進めて行きます。

出生前

出生前エコー検査診断の進歩に伴い、出生前に診断を得ることが多くなってきております。当科では、出生前より口唇口蓋裂に対する正確な知識を得ることは重要と考え、御希望があればご両親に対して病気についてと、出生後の治療の流れなどの説明を行っています。

出生直後

出生直後の問題として哺乳障害と呼吸障害があります。呼吸障害の多くは下顎が小さいことに起因していますが、発育とともに改善する傾向にあります。哺乳障害に対しては哺乳床(ホッツ床)と口蓋裂児用乳首の使用、哺乳指導を行うことで改善を図ります。また、哺乳床の装着により、舌が前方に押し出されることによって呼吸障害の改善も期待できます。

口唇形成術

当科では全身麻酔手術に耐えうる体力がつく生後3か月(体重5〜6kg)頃に口唇形成術を行います。手術法はミラード法に小三角弁法の技法を加えて行い、口輪筋の正確な再建を行っています。不完全裂の場合、フィッシャー法を適応することもあります。人中の形成、鼻の形成も同時に行います。両側性唇裂では原則的に左右2回に分けて手術を行います。1回目の手術後約3か月で反対側の手術を行います。

口蓋形成術

口蓋裂の治療の目的は正常な言語機能の獲得です。このためには軟口蓋を後上方に持ち上げて、鼻腔と口腔を遮断する機能(*鼻咽腔閉鎖機能)を獲得することが必須です。口蓋形成術では、軟口蓋を持ち上げる筋肉の再建と軟口蓋の延長を行います。発音の面からは言葉をしゃべりだす前に手術をするのが良いのですが、一方で早期の手術により顎発育に悪影響を及ぼします。私たちは、1歳3〜6か月、体重10kgを目安にしています。口唇形成術と同様に、全身麻酔下で行います。手術方法は言語成績を第一に考え、プッシュバック法という技法を用いて行います。

*鼻咽腔閉鎖機能とは・・・
軟口蓋を左右に繋ぐ筋肉(主に口蓋帆挙筋)の働きにより、咽頭部において軟口蓋と咽頭後壁、側壁との間で呼気が鼻腔へ行かないように閉鎖(遮断)することです。これにより口腔内圧を十分に高めることができ(鼻へ息が漏れない)、明瞭なことばを作ること(構音)が可能となります。従って、筋肉の正確な再建と運動性の良い長い軟口蓋を創ることが大切です。

言語治療

正常な言語を獲得するためには、まず手術により鼻咽腔閉鎖が行いやすい構造をつくり、そしてその後のトレーニングにより鼻咽腔閉鎖機能を確実に獲得することが重要です。口腔内を陰圧(ストローで吸うような運動)にしたり、陽圧(ラッパを吹くような運動)にしたりがトレーニングになります。鼻咽腔閉鎖機能が良好な場合は、一つ一つの音の作り方(構音機能といいます)の学習へと進みます。鼻咽腔閉鎖機能が不十分な場合は、発音補正装置(スピーチエイドと呼ばれています)を作製し、これを装着することで鼻咽腔の閉鎖が可能となり、口腔内圧を高めることができるようになるため、構音訓練へと進みます。
従って、鼻咽腔閉鎖機能を正しく評価することが、言語治療を効果的に行うためには重要となります。この方法には、聴覚法(耳で聞いて判断する)、吹き戻しと鼻息鏡などが簡便にできる検査ですが、レントゲンやナゾメータ、内視鏡などを用いて的確に評価します。    

口唇修正術

就学前に口唇・外鼻の形態を評価し、必要に応じて修正手術を行います。

矯正治療(噛み合わせの治療)

口蓋裂の手術の影響で、様々な程度で上顎の発育障害が起こります。このため、上顎の横方向と前方への発育が悪く、小さな上顎になる傾向があります。咬み合わせで見ると、受け口(反対咬合、下顎の歯が前、あるいは外に位置する状態)になりやすいです。この状態を改善し、正常な咬み合わせを創るためには矯正治療が欠かせません。
 矯正治療では、まず、装置を用いて上顎を横方向に拡大し、拡大が済むと*顎裂部骨移植術を行い、歯槽骨を創ります。その後、全部の歯に装置を付けて咬み合わせを仕上げていきます。
 上顎の前方への発育不全に対しては、額と下顎を支点にした前方牽引装置(フェースマスク)を用いて前方への発育を促していきます。この効果が十分でない場合は、上顎骨に対して骨延長術を行ったりすることもあります。

顎裂部骨移植術・・・
 顎裂がある症例では、顎裂部に骨がないため埋まっている犬歯が萌出できず、また、側切歯が歪んで萌出してしまいます。そこで、犬歯萌出の時期に合わせて、9〜11歳頃に顎裂部に骨移植を行い(多くは腸骨の骨髄を移植します)、歯槽骨を創ります。歯槽骨ができると、埋まっていた犬歯が自然に萌出し、歪んでいる歯も矯正治療にて真直ぐにできます。

顎矯正手術

口唇口蓋裂の患者さんは、上顎の発育が悪く、反対咬合など上下顎にアンバランスが認められるような場合があります。その場合、顎矯正手術により咬合の回復を行います。

口唇・外鼻二次修正手術(成長終了後)

成長終了後に口唇・外鼻に気になる変形が残存する場合には仕上げの手術を行います。

口唇・外鼻形態

初回手術を行った後、修正手術を行わず経過した症例

言語

4歳時の評価で、90%超の口蓋裂患児は正常な鼻咽腔閉鎖機能を獲得できています。残りの10%弱に対しては、発音補正装置を用いて訓練することで、その後正常な構音を獲得し、訓練が進むにしたがってその半数は発音補正装置を外すことができるようになっています。

咬合

以前は入れ歯などを適応していましたが、下記のような治療を行うことにより、自分の歯の如く、きれいに咬み合わせを創ることができます。きれいに歯が並びますと、口元に対する他人の意識を減らす(視線を集中させない)ことができます。

❇口唇口蓋裂は、出生前から成人に至るまで、長期にわたり様々な治療を必要とします。当科では患者個々の発育、病態に応じた一貫治療を行うよう努めてまいります。御不明な点や御相談等ありましたら、遠慮なくご相談ください。

なお、18歳の誕生日前日まで、本院における口唇口蓋裂の外科的治療は自立支援医療(育成医療)が適用されます。