SAGES 2019 報告 – 原田 栄二郎
2019年4月3日~6日にアメリカ・ボルティモアで開催された米国消化管内視鏡外科学会(Society of American Gastrointestinal and Endoscopic Surgeons: SAGES)に参加しました。SAGESは消化器一般外科を対象領域としていますが、各領域を専門学的に造詣を深めるというよりも、一般外科医を対象に総論的な知識を共有するといった意味合いが強い学会です。勿論、上部・下部消化管の良性・悪性疾患の演題もありますが、腹腔鏡での胆嚢摘出術、ヘルニア手術や肥満手術といったいわゆるgeneral surgery関連の演題が多い学会です。留学していた2015年に参加して以来、2度目の参加となりました。
2018年9月下旬が演題締め切りで、poster presentation、video presentation、oral presentationの登録カテゴリーがありますが、実はoral presentationはほぼ要望演題であり、一般からの採択はほぼ不可能ですので、video presentation を選びました。「Tips for SingleIncision Laparoscopic Cholecystectomy」と題して、単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術における鉗子の干渉を回避する工夫について演題登録を行うこととしました。提出方法はナレーション付きのビデオ提出なので、映像編集は容易でしたがナレーションは苦労しました。2019年1月上旬に採択通知が届いてから、子供達が通っている英会話教室の先生に御願いし、3月下旬まで毎週土曜日に発表原稿・スライド・発表態度を指導して貰いました。原稿は暗記できたのですが、先生からは、「もっと感情を込めろ。発言に抑揚がない。」などと日本人が指摘されがちな点を見事に指摘されながら本番に臨みました。
抄録アプリをダウンロードして確認すると、video presentation の解説には、「The presentations were peer-reviewed by members of various SAGES committees and represent the highest-scoring abstracts submitted under this topic. 」と記載されており、提出したビデオがある程度評価されたと理解し、非常に嬉しく思いました。本番は、4日早朝のセッションで、何故か周りは肝胆膵ロボット手術の演題ばかりで単孔式腹腔鏡手術は私だけだったのでいささか拍子抜けしました。会場からの質問はなく、司会者から臍を切開した後の腹壁瘢痕ヘルニアが米国では10%あり、大きな問題だと思うのだがと質問され、その質問を日本人の私にされても困るよと思いつつ、私の施設では1%未満であるが患者の体格・肥満度が大きく違うので米国でのその数値は問題ですねと回答し、発表は終了しました。
5日には、Hans-on-Lab で、cadaver を用いた腹腔鏡下結腸体内吻合術に参加しました。事前登録制で約13万円の出費でしたが、前半1時間が講義で、後半2時間が実技と内容は濃いものでした。また、参加者が少なかったようで、1献体に指導者1人・参加者1人の構成で、自分が試したいプランを存分にさせて頂くことができました。ここでの経験をもとに現在当科でも腹腔鏡下結腸体内吻合術を導入しております。
留学中にお世話になったDr. Horacio Asbunは、このSAGESの理事を務めており、学会に参加していることが分かっていたので、とあるセッションで出待ちし、挨拶をしました。彼はMayo Clinic FloridaからMiami Cancer Instituteへ移っており、相変わらず多忙のようです。
学会を堪能しつつ、観光も堪能させて頂きました。5日にはMLBのボルティモア・オリオールズがニューヨーク・ヤンキースを迎える開幕日でしたので、事前にチケットを購入し、観覧しました。田中将大投手は3日前のオープン戦で登板していたのでこの日観ることはできませんでしたが、史上最速169km/hの球速を誇るアロルディス・チャップマンを観ることができたので満足しました。
帰国前日は、60km離れたワシントンへ移動し、スミソニアン博物館、ホワイトハウス、記念塔、リンカーン記念堂を駆け足で巡りました。ちょうど桜祭りの時期であり、日本人としては感慨深く感じました。留学から帰国し、4年ぶりの米国かつ海外出張でしたが、様々な影響を受けるこの上ない機会だと改めて感じました。このような貴重な機会を頂き、濱野教授ならびに諸先生方に心より感謝申し上げます。