山口大学 大学院医学系研究科 器官病態外科学講座 (第一外科)

国際学会・留学

  1. ホーム
  2. 国際学会・留学
  3. The 25th Asian Society for Vascular Surgery – 溝口高弘

海外学会参加報告

The 25th Asian Society for Vascular Surgery – 溝口高弘

2024年12月3日から6日までタイのバンコクで開催されたThe 25th Asian Society for Vascular Surgeryに参加致しました。

私は4日のFree paper oral sessionで発表を行いました。発表内容は腹部大動脈瘤破裂に対するステントグラフト内挿術(EVAR)を用いた治療戦略の中長期成績についてです。腹部大動脈瘤に対する治療は開腹人工血管置換術とEVARがあり、年齢や解剖学的条件などから適応が判断されます。しかし、腹部大動脈瘤破裂に対してはその迅速性と低侵襲性から解剖学的条件が適合すれば緊急EVARが各国のガイドラインで推奨されています。当科では予定手術でも低侵襲であるEVARを積極的に行っており、解剖学的条件に関わらずほとんどの症例で緊急EVARが施行可能であり、EVARを基本とした治療戦略を行ってきました。しかしながら、EVARには、内挿術後に残存する瘤内への血液漏出であるエンドリークという特有の合併症などの問題点があり、それが致命傷となることもあります。それらへの対策なども示しながら当科の治療成績を報告しました。EVARの成績を、EVARを基本軸とする以前の開腹人工血管置換術と比較したところ、周術期死亡に有意差は認めませんでしたが、EVAR施行群では入院期間は有意に短縮し、自宅退院率も高い結果となり、低侵襲性という面でEVARのもたらす恩恵が大きいことが示されました。中長期成績に関しては、EVARで瘤関連の再治療率が多い結果となりましたが、生存率と社会復帰率に関してはEVARを施行した症例が良好であることが示され、当科のEVARを基本とした治療戦略は救命のみならず、その後も生活の質を保った生存が得られることが示されました。当科の治療戦略に関して具体的な質問があり、我々の行っている取り組みが海外からも注目される内容であることを改めて認識しました。

また、本学会は興味深い内容の演題が多く、アジア各国のみならず欧州を中心に多くの演題が登録されており、とても刺激に溢れた発表に触れることができました。特に印象に残ったのは、開窓・分枝付きのステントグラフトの破裂症例への使用やそのビッグデータ、ロボットを使用した人工血管置換術の発表、さらにAIを用いた予後の推定など、日本では限定的な発表にとどまっているものが海外ではもはや当然のように施行されている現状に驚きました。また、参加者は本当に英語力が高く、とても刺激を受けました。今後は臨床と研究のみならず、英語力も養っていきたいと強く感じました。

学会の合間には、バンコク市内の見学をしました。私が訪れたのは最も気温が低い時期であったようですが、連日最高気温が35度程度あり、非常に暑かったです。街に関してはとても近代的ですが、寺院や王宮など歴史的な建造物も綺麗に整備されており、とても調和のとれた素晴らしい街でした。

今回、濱野教授をはじめ多くの先生方からご指導頂き、無事に発表を終えることができました。誠にありがとうございました。今後の臨床・研究においてとてもいいモチベーションになりました。

学会の一幕

バンコクの象徴であるワット・プラケオの仏塔

海外学会参加報告の一覧へ戻る