Research Areas
研究概要
当研究室は,電気化学法などのクリーンな溶液プロセスを使って環境・エネルギー問題の解決に寄与する新技術の開発に取り組んでいます。令和2年3月現在,進行中の主な研究テーマは,A. マンガン酸化物の電気化学的二次元構造形成および電極触媒としての応用,B. 複合金属酸化物の合成と電極触媒としての応用,C. 水溶液中で動作可能なエネルギー貯蔵デバイスの開発,D. 高機能収着剤の開発であり,工業的な応用を目ざしつつ,合成の方法論,構造解析,物性評価・機能発現などの観点から基礎的で挑戦的な研究を行っています。課題の解決は,環境に優しく,エネルギー的に有利,かつ循環型プロセスによって達成されるべきであり,その生成物もまたクリーンエネルギー供給・貯蔵に寄与することが望ましいと考えます。こうした研究活動を通じて,現象をありのまま理解し,表現できる,一方で,研究計画全体を俯瞰でき,問題の本質を見抜く目をもった学生を養成したいと思います。
※本学科3年生以下の研究室見学はいつでも可能です。事前に電話かメールして頂けると対応し易いです。 ※学外からの研究に関するお問い合わせ,博士課程・修士課程入学希望者に対する研究室紹介は随時行っています。その他,参考文献の取り寄せなど,中山までお気軽にご連絡(Email等)下さい。
研究テーマ
A. マンガン酸化物の電気化学的二次元構造形成および電極触媒としての応用
種々のカチオン(ゲスト)を含む水溶液中でMn(II)イオンを電解酸化するとバーネサイトと呼ばれる層状マンガン酸化物(ホスト)が薄膜として電極表面に形成されることを見出しました。この方法は,ゲストを認識しながらホストが成長するので,無機/有機,大小様々なゲストイオンを層間に取り込むことができます。形成した層間は水相,有機相,どちらの反応場にもなります。さらに,マンガン酸化物シートは電極からの電子を層間のゲストイオンに受け渡しできるので,層間を利用した選択的かつ効率的な触媒反応が可能な“エレクトロナノリアクター”と見なすことができます。このようにして,従来の絶縁性多孔粉末材料(クレイ,ゼオライトなど)では実現できなかった新しいホストーゲスト化学を創造できると考えています。
参考文献をご覧ください
- M. Nakayama, K. Suzuki, K. Fujii, “Single-ion catalyst of Ni2+ anchored in the interlayer space of layered MnO2 for electro-oxidation of ethanol in alkaline electrolyte”, Electrochem. Commun., 105, 106492 (2019).
- K. Fujimoto, T. Okada, M. Nakayama, “Enhanced Oxygen Evolution Reaction Activity of Co Ions Isolated in the Interlayer Space of Buserite MnO2”, J. Phys. Chem. C,122, 8406-8413 (2018).
- M. Nakayama, K. Fujimoto, T. obayakawa, T. Okada, “A binder-free thin film anode composed of Co2+-intercalated buserite grown on carbon cloth for oxygen evolution reaction”, Electrochem. Commun., 84, 24-27 (2017).
B. 複合金属酸化物の合成と電極触媒としての応用
貴金属系触媒は高性能ですが,希少性,コスト,毒性などにより,その応用が制限されています。我々は様々な第一遷移金属(Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn, etc.)を様々な酸化物・複合酸化物の結晶構造に組み込み,安価で環境負荷が低く,かつ高性能で安定な触媒の開発に取り組んでいます。得られた触媒は,水素製造のためのアルカリ水電解や海水電解,燃料電池,金属-空気電池の電極材料として使用します。
参考文献をご覧ください
- D. Inohara, H. Maruyama, Y. Kakihara, H. Kurokawa, M. Nakayama, “Cobalt-Doped Goethite-Type Iron Oxyhydroxide (α-FeOOH) for Highly Efficient Oxygen Evolution Catalysis”, ACS Omega, 3, 7840–7845 (2018).
C. 水溶液中で動作可能なエネルギー貯蔵デバイスの開発
層状マンガン酸化物は固相と空間が連続的であり,電子・イオンの速く可逆的なレドックス応答が可能です。当研究室は,この層状マンガン酸化物を電気化学的に作製する技術をもっており,亜鉛イオン二次電池,ならびにレドックス反応によって電荷を貯める次世代型キャパシタ(=レドックスキャパシタ)へ応用する研究を行っています。フレキシブル電源への応用を目指し,導電性炭素繊維に層状マンガン酸化物を被覆する方法を確立しました。
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- M. Nakayama, S. Osae, K. Kaneshige, K. Komine, H. Abe, “Direct Growth of Birnessite-type MnO2 on Treated Carbon Cloth for a Flexible Asymmetric Supercapacitor with Excellent Cycling Stability”, J. Electrochem. Soc., 163, A2340–A2348 (2016).
- M. Nakayama, K. Komine, D. Inohara, “Nitrogen-Doped Carbon Cloth for Supercapacitors Prepared via a Hydrothermal Process”, J. Electrochem. Soc., 163, A2428-A2434 (2016).
D. 高機能収着剤の開発
カチオン性界面活性(ヘキサデシルピリジニウム)の集積層とマンガン酸化物シートの交互積層構造をもつ薄膜(オルガノマンガン酸化物と命名)がヨウ化物イオンを高選択的に捕獲できることを見出しました。膜内に取り込まれたヨウ化物イオンは電気化学酸化によりヨウ素分子として放出され,膜は元の状態に戻ります(=セルフクリーニング)。このため,何回も使用することが可能です。こうした性質は放射性ヨウ素の除去あるいは希少資源であるヨウ素の回収に応用できます。
参考文献をご覧ください
- K. Nakagawa, K. Suzuki, M. Kondo, S. Hayakawa, M. Nakayama, “Electrosynthesis of Layered Organo-Manganese Dioxide Framework-Doped with Cobalt for Iodide Sensing”, Langmuir, 33, 4647–4653 (2017).
- M. Nakayama, A. Sato, K. Nakagawa, “Selective sorption of iodide onto organo-MnO2 film and its electrochemical desorption and detection”, Anal. Chim. Acta, 877, 64-70 (2015).
- 解説記事:中川貴美子,中山雅晴,「セルフクリーニング機能を有するオルガノマンガン酸化物を用いたヨウ素回収技術」,日本海水学会誌2015年12月号.(Bull. Soc. Sea Water Sci., Jpn., 69, 357-362(2015)).