Research Areas

研究概要

当研究室は,電気化学法などのクリーンな溶液プロセスを使って環境・エネルギー問題の解決に寄与する新技術の開発に取り組んでいます。令和8年4月現在,進行中の主な研究テーマは,A. 電析二酸化マンガンに関する研究,B. (海)水電解および窒素化合物変換用の電極触媒開発,C. 次世代二次電池の開発,D. 希少元素回収プロセスの開発であり,工業的な応用を目ざしつつ,合成の方法論,構造解析,物性評価・機能発現などの観点から基礎的で挑戦的な研究を行っています。課題の解決は,環境に優しく,エネルギー的に有利,かつ循環型プロセスによって達成されるべきであり,その生成物もまたクリーンエネルギー供給・貯蔵に寄与することが望ましいと考えます。こうした研究活動を通じて,現象をありのまま理解し,表現できる,一方で,研究計画全体を俯瞰でき,問題の本質を見抜く目をもった学生を養成したいと思います。

※本学科3年生以下の研究室見学はいつでも可能です。事前に電話かメールして頂けると対応し易いです。
※学外からの研究に関するお問い合わせ,博士課程・修士課程入学希望者に対する研究室紹介は随時行っています。その他,参考文献の取り寄せなど,中山までお気軽にご連絡(Email等)下さい。

研究テーマ

A. 電析二酸化マンガンに関する研究 〜基礎から応用まで〜

電析二酸化マンガンに関する研究 〜基礎から応用まで〜

二酸化マンガンは乾電池の正極材料として広く利用されている身近な物質ですが、その結晶構造や組成を制御することで、電極触媒や二次電池、資源回収材料など、さまざまな機能を発揮することが知られています。当研究室では、水溶液中で電気を流すだけで二酸化マンガンを電極上へ直接形成する「電析法」を利用し、新しい機能性マンガン酸化物の創製に取り組んでいます。電析法では、粉末を合成して電極へ塗布する従来法とは異なり、目的の材料を電極上に直接形成できるため、シンプルかつ環境負荷の小さいプロセスで高機能電極を作製できることが大きな特徴です。特に当研究室では、金属イオンや有機イオンなどさまざまな物質を共存させながら電析を行うことで、それらを層状二酸化マンガンの層間へ取り込みながら結晶を成長させる独自の手法を開発しています。形成された層間はナノメートルサイズの反応空間となり、イオンの吸着や分子変換が起こる「反応場」として利用できます。さらに、二酸化マンガンシートは電極から電子を受け渡す役割も担うため、通常の多孔質材料では実現できない新しい電気化学反応の場として機能します。

以下の参考文献をご覧ください

B-1. (海)水電解用の電極触媒開発

(海)水電解用の電極触媒開発

水を電気分解して水素を製造する技術は、再生可能エネルギーを利用したカーボンニュートラル社会の実現に向けた重要な技術として期待されています。しかし、水の電気分解では酸素を発生させる陽極反応(OER)の反応速度が遅いため、大きなエネルギー損失が生じます。さらに、実際に利用可能な水資源の多くは海水であり、海水中には高濃度の塩化物イオンが含まれているため、酸素ではなく有害な塩素ガス発生反応(COR)が起こりやすいという課題があります。そのため、「低い電圧で効率よく酸素だけを発生させる触媒」の開発は、水素社会の実現に向けた重要な研究テーマとなっています。当研究室では、電析法やポリオール法などのシンプルな材料合成プロセスを活用し、マンガン酸化物やタングステン酸化物を中心とした貴金属を用いない高性能電極触媒の開発を進めています。特に、層状二酸化マンガンのナノ空間を利用した触媒設計では、水分子のみを選択的に活性点へ輸送し、塩化物イオンの接近を抑制することで、海水中でも酸素発生反応を優先的に進行させる新しい反応場を実現しました。

以下の参考文献をご覧ください

B-2. 窒素化合物変換用の電極触媒開発

窒素化合物変換用の電極触媒開発

アンモニアや硝酸イオンなどの窒素化合物は、肥料や化学工業を支える重要な物質である一方、排水中へ放出されると水質汚染や富栄養化の原因にもなります。そのため、窒素化合物を電気化学反応によって有用物質へ変換する技術は、環境浄化と資源循環を同時に実現できる次世代プロセスとして注目されています。アンモニア酸化反応(AOR)では、層状二酸化マンガンのナノ空間にNiやCuなどの遷移金属イオンを導入し、それらの相乗効果を利用した高活性・高選択性電極触媒の開発を進めています。反応に関与する電子状態や活性点の役割を明らかにしながら、アンモニアを低エネルギーで窒素へ変換する触媒の設計指針を構築することを目指しています。さらに、硝酸イオンをアンモニアへ変換する電気化学的硝酸還元反応(NO3RR)の研究にも取り組んでいます。材料合成、電気化学測定、構造解析、反応速度論解析を組み合わせることで、高効率な窒素変換反応を実現するための材料設計と反応メカニズムの解明を目指しています。

以下の参考文献をご覧ください

C-1. 金属空気電池用の電極開発

金属空気電池用の電極開発

金属空気電池は、空気中の酸素を正極活物質として利用するため、リチウムイオン電池を上回る高い理論エネルギー密度を有する次世代蓄電池として期待されています。一方で、充放電時に進行する酸素還元反応(ORR)は反応速度が遅く、高効率かつ長寿命な電極触媒の開発が重要な課題となっています。当研究室では、電解析出法を利用して層状二酸化マンガンを基盤とした電極材料を作製し、その層間ナノ空間へ遷移金属イオンを導入することで、酸素電極反応を高効率化する触媒の開発を進めています。また、市販の電解二酸化マンガン(EMD)を利用した低コストな二機能性酸素電極触媒の設計にも取り組み、酸素還元反応と酸素発生反応の両方を高効率で進行させる材料設計指針の構築を目指しています。

以下の参考文献をご覧ください

C-2. 水系亜鉛イオン電池の開発

水系亜鉛イオン電池の開発

水系亜鉛イオン電池は、不燃性の水系電解液を用いるため安全性が高く、亜鉛やマンガンなどの豊富な元素で構成できることから、大規模電力貯蔵用の次世代蓄電池として期待されています。特に、正極の二酸化マンガンが充放電に伴って溶解・析出を繰り返す二電子反応を利用することで、従来型よりも高いエネルギー密度を実現できる可能性があります。しかし、高容量化すると二酸化マンガンが完全に溶解せず電極上に残留するため、充放電効率やサイクル寿命が低下することが課題となっています。当研究室では、酢酸緩衝液を用いた水系亜鉛イオン電池において、微量の鉄イオンをレドックスメディエーターとして利用することで、残留したMn酸化物を効率よく溶解させる新しい電極反応機構を提案しています。充電時に鉄イオンが二酸化マンガン中へ取り込まれ、放電時には固相レドックスメディエーターとして作用することで、高容量化と高いクーロン効率を両立するとともに、自己放電を抑制できることを明らかにしました。

以下の参考文献をご覧ください

C-3. ナトリウムイオン電池用の正極材開発

ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池と同様の原理で動作しながら、資源が豊富で安価なナトリウムを利用できることから、次世代蓄電池として注目されています。特に、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、大規模な電力貯蔵システムへの応用が期待されています。当研究室では、高容量かつ長寿命な正極材料としてプルシアンブルー類似体に着目しています。元素組成や結晶構造、ナノ構造を精密に制御することで、ナトリウムイオンの高速な挿入・脱離と優れたサイクル特性を両立する材料設計を進めています。また、充放電機構やイオン拡散挙動を電気化学測定や構造解析によって明らかにし、高性能なナトリウムイオン電池の実現を目指しています。

以下の参考文献をご覧ください

D. 希少元素回収プロセスの開発

D. 希少元素回収プロセスの開発

近年、半導体や燃料電池、ディスプレイなどの先端産業では、希少金属やヨウ素などの重要資源の需要が急速に高まっています。一方で、これらの資源は産出地域が限られているため、資源の安定供給やリサイクル技術の確立が重要な課題となっています。当研究室では、溶媒抽出、吸着、イオン交換、電気化学などの分離・回収技術を組み合わせ、様々な希少元素の高効率回収プロセスを開発しています。特にヨウ素については、天然かん水や排水からの資源回収を目的とした新規吸着材料の開発や、ヨウ素化学種の分離機構の解明に取り組んでいます。また、抽出剤やイオン液体を利用した高選択的な分離技術の開発を通じて、環境負荷の低い持続可能な資源循環プロセスの実現を目指しています。

以下の参考文献をご覧ください