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2022.12.06 医療事故の公表について

 本院において、手術の際に使用する検査試薬を薄めずに使用したために皮膚炎(やけどの一種)を生じた医療事故が発生しました。
 産科婦人科に子宮膣部の手術のため入院中の患者様に、円錐切除術(えんすいせつじょじゅつ)を実施するにあたり、病変部や手術範囲の確認を行うため、通常は検査試薬として3%に薄めた酢酸液を浸した綿球を膣内に静置するところ、誤って薄めていない酢酸液を使用してしまい、綿球が置かれた膣内や膣から流れ出た試薬によって外陰部や臀部に皮膚炎を生じるという事故が発生しました。翌日、退院のための診察の際に外陰部や臀部の皮膚が変色していることを認めたため、酢酸による化学熱傷となった可能性があると疑い、直ちに調査を開始しました。
 薄めずに酢酸液を使用した可能性がある方全員に連絡を取らせていただき、謝罪および経過の説明を行うとともに、診察、治療とケアに努めてまいりました。
 このたびは当院の起こした医療事故に対してご迷惑をおかけすることになりましたこと、心よりお詫びを申し上げます。大変申し訳ございません。
 当院といたしましては、このような事故を引き起こしたことを真摯に反省し、原因の分析・再発防止対策に職員一丸となって取り組んでいるところでございます。何よりもまず職員ひとりひとりが事故防止への意識を持ち、安全な医療の提供ができるよう取り組んでまいります。


 
                                                          令和4年12月6日
                                                           山口大学医学部附属病院
                                                             病院長 杉野 法広



                                                    本件に関するお問い合わせ
                                                    山口大学医学部総務課総務係:0836-22-2111 (代表)







本事案に関する概要

本院医療安全調査委員会において、原因及び再発防止策を実施するため調査した結果は次のとおりです。

【調査結果概要】
対象者数:25名(薄めずに酢酸を使用した可能性のある患者様)
調査方法:薄めずに酢酸を使用した可能性のある患者様全員に電話連絡を行い謝罪および経過の説明を行うと共に、過去・現在における症状の有無を確認した。また、症状の有無に係わらず確認のための受診をお願いした。
有症状者数: 6名
受診者数:  6名(上記と同一)
酢酸皮膚炎: 6名
なお、19名の方々は、過去・現在に症状はなく、診察や治療、ケアの希望はない旨の回答を頂いた。

【原因についての調査結果】
《背景》
 産科婦人科の外来診察において、がんの精密検査(コルポスコピー検査)を行う際に使用する検査試薬は3%に調製した酢酸液(以後3%酢酸液)を使用する。3%酢酸液は、産科婦人科外来から薬剤部へ作製を依頼、薬剤部で酢酸原液を薄めて作製し(3%酢酸液の既製品はないため)、外来に届けられていた。
 この3%酢酸液は、外来診察に使用するほか、手術時に病変部の確認や手術範囲の確認を行う目的で使用することがあるため、外来診察室および入院病棟に配備されていた。また、入院病棟に配備する3%酢酸液は外来診察室にある3%酢酸液を小分けし、入院病棟に配備し、手術で使用する際には入院病棟の3%酢酸液を持参して使用する手順となっていた。
 上記の手順の中で3%酢酸液の調製に関する手順書は薬剤部により作成されていたが、産科婦人科での運用手順は明文化されておらず、入院病棟の職員の中にも上記手順を理解していない者がいたことが判明した。

《今回の事故の経過》
 入院病棟に配備している3%酢酸液がなくなった際に、酢酸液の補充を依頼された職員は3%酢酸液を外来診察室から補充するという手順を理解していなかった。そのため、入院病棟から直接、医療材料オーダーシステムを使って酢酸液の発注を試みたところ、酢酸が注文可能であったため発注した。しかし、発注した酢酸液は酢酸原液であった。そのため酢酸原液が入院病棟に届いてしまい、薄めないままの酢酸液を小カップに分注し、手術室へ持参し使用した。

【問題点】
1.外来診察室に配備している3%酢酸液を小分けし、入院病棟に配備するという手順が明文化されていないこと、検査では酢酸液を薄めて使用するものであるという認識が職員全員に周知されていなかったこと、による職員の認識不足があったこと。
2.使用すると危険な試薬が入院病棟から医療材料オーダーシステムで注文可能であり、入院病棟に届いてしまったシステム上の問題があったこと。

【改善策】
1.職員の認識に対する改善
 1) 3%酢酸液の依頼及び入手方法について手順書を作成した。
 2) 手順書においては、3%酢酸液の依頼は外来診察室からのみとし、作製は薬剤部で行い、容器に3%酢酸液と明記して外来に届け、配備場所は外来診察室のみとした。入院病棟には配備しないこと及び手術時に使用する際に小分けにする場合には3%酢酸液と明記したラベルを必ず貼ることを明文化した。
2.病院のシステムに対する改善
 1) 入院病棟から酢酸原液が注文できない医療材料オーダーリングシステムに改定した。
 2)病院内における酢酸液以外の他の検査試薬についても安全性と使用方法を調査する。




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