講座紹介

 法医学では、年間120-180件の遺体の検案・解剖(法医鑑定学)において自然死から内因(疾病等)・事故・事件(他殺等)・自然災害等までさまざまな死に向き合っています。さらに、生体の鑑定(臨床法医学)において児童虐待や性犯罪による損傷および事件・事故の際のアルコールの薬物動態の検証を行って、現在、社会的に注目の集まっている問題にも貢献しています。遺体鑑定では組織学的検査(法医病理学)や薬毒物分析(法医中毒学)等もふまえ、また、生体鑑定では直接の診察や写真・CT・MRI等の画像を基に、医学的根拠に基づいた中立公正な鑑定および再発防止策等の提言に努めています。
 教育では、臨床に役立つよう治療や予防策まで含めた講義を行い、裁判に出廷する法医学者の立場から医療行為に係る判例等を教材に医療安全について考える機会も提供しています。
 研究では、ストレスの指標としての胸腺の退縮に着目してその機序を解明しつつ児童虐待の早期発見へ、また、飲酒後の吸収相を中心とする呼気中アルコール動態モデルを検討してアルコール鑑定へ寄与することを目指しています。
 令和2年4月1日より死因究明等推進基本法が施行され、「死因究明等に係る医師、歯科医師等の人材の育成、資質の向上、適切な処遇の確保」「死因究明等に関する教育及び研究の拠点の整備」等が基本的施策として挙げられていますが、全国の法医学講座の4割で鑑定人が1人という現状です。当講座では、現在、2人の鑑定人がおり、令和3年4月から将来鑑定人となる大学院生が入局しています。
 暴力や犯罪がなくなることを究極の目標に微力ながら貢献を続けたいと思います。